「孤独・孤立対策推進法」 4月から施行
実態調査でもいまだに4割近くが「孤独感」を感じる
今年4月1日に「孤独・孤立対策推進法」が施行された。それに先立ち内閣府は3月29日、全国の2万人を対象とした令和5年の「孤独・孤立の実態調査」の結果を公表した。孤独感が「しばしば・常にある」「時々ある」「たまにある」と答えた人は4割近くに上った。
調査は2021年から毎年実施され、今回で3回目。孤独感があると感じている人の割合はほぼ横ばいで推移しており、より有効で実際的な対策が求められそうだ。
人間関係の希薄化が進む
地域や職場などのつながりが薄れるなか、孤独や孤立を防ぐセーフティーネットをどのように構築するかが問われている。
人間関係の希薄化に追い打ちをかけたのが、令和2年から続いた新型コロナウイルス感染症の拡大。外出自粛が長びくなか、以前のように人と接触する機会が大幅に減った。SNSなどで簡単に「つながる」ことはできるが、強いつながりを持つことは難しいといわれる。
さらにコロナ禍では自殺や心身の不調などが問題となり、国はその背景に孤独や孤立があり、「社会全体の課題」と位置づけ、令和5年(2023年)に「孤独・孤立対策推進法」を成立。今年4月から施行された。
世代を問わず、多岐にわたる孤独・孤立問題
孤独や孤立が、社会的な課題だと認識され始めたのは、1990年代以降の最近のこと。当初は若者の引きこもりなどが話題となっていたが、現在は80歳代の親と50歳代の引きこもりの子が同居し社会的に孤立する「8050」問題や、経済的な困窮やそれに伴う孤独死、学校や職場に友達がいない「(ひとり)ぼっち」問題など、多岐にわたる。
孤独・孤立問題は、子どもから若者、働き盛り世代、高齢者まで世代を問わず、しかも抱える課題は輻輳(ふくそう)している。
世界的にも孤立・孤独は大きな社会的な課題となっている。WHO(世界保健機関)でも2023年11月に「社会的つながりを育む委員会」新設のニュースリリースを公開した。この委員会は2024年から2026年まで3年間運営されるもので、「孤独・孤立の問題は、世界的な公衆衛生の優先課題」として認識され、その解決に向けて動き出すことを目的としている。
日本では令和3年(2021年)にイギリスに次いで世界で2番目となる孤独・孤立対策担当大臣を置き、内閣官房に対策室(現在、内閣府に移管し「内閣府 孤独・孤立対策推進室」に名称変更)を設置し、支援策などを検討して推し進めてきた。
令和5年実態調査で「孤独感」がある人は4割近く
また、対策室設置と併せ、その全体像を概括的に把握するため全国で実態調査(「人々のつながりに関する基礎調査」)も開始された。今回で3回目となる調査は、令和5年12月に無作為で選んだ16歳以上の2万人を対象にオンラインと郵送で実施。有効回答は1万1,141人(55.7%)だった。
令和5年5月に、WHOが新型コロナに対する緊急事態宣言終了を発表し、日本でも新型コロナが感染症法上「5類」へ移行するなど、少しずつ人と接する機会も以前の状態へと戻りつつある状況下で調査が行われた。その結果をみてみると、孤独感が「しばしばある・常にある」の回答は4.8%、「時々ある」が14.8%、「たまにある」が19.7%で、孤独感を感じる人の割合は39.3%に上った。
3年間の状況を比較してみると、令和3年は孤独感のある人の割合は36.4%、令和4年は40.3%とほぼ横ばいで推移している。
「あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか。」に対する回答
出展:孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和5年)調査結果のポイント P.2(2024.3)より
孤独感を年齢階級別にみると、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、20歳代から50歳代で高い。男女・年齢階級別にみると、男性では30歳代及び40歳代、女性では20歳代で高く、まさに働き盛り世代が該当している。


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