不妊治療を行っている従業員を把握している企業は約4割 「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(厚生労働省)
厚生労働省が「女性の活躍推進企業データベース」に情報を掲載している企業を対象に実施したアンケート調査で、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度がある割合は26.5%と、約4分の1にとどまっていることが分かった。
また、半数以上の企業が不妊治療を行っている従業員の把握ができていないことも明らかになり、積極的な取り組みの難しさが浮き彫りとなった。
不妊治療を受けている、もしくは受けたことがある夫婦は4.4組に1組と言われる昨今だが、不妊に悩む労働者への支援は企業において十分とは言えない。
そのため実態やニーズを把握しようと厚生労働省の委員会が「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」を2023年夏に実施。企業と労働者、それぞれを対象にした2つのアンケートで、このほど結果をまとめた。
企業調査の対象は「女性の活躍推進企業データベース」でデータ公表を行っていて、従業員が10人以上の企業のうち無作為に抽出した6,000社。回答数は1,859社だった。
結果によると、不妊治療をしている従業員が受けられる支援制度については、「制度化して行っている」企業が10.6%、「制度化されていないが個別に対応している」が15.9%で、73.5%が何も行っていなかった。
支援をしていない理由は、「要望等が表面化していないため」が最も多く26.4%、「不妊治療を行っている従業員を把握していないため」が22.2%、「プライベートなことなので関与していないため」が15.5%だった。
一方、不妊治療を行っている従業員が利用できる制度は、「半日単位・時間単位の休暇制度」(82.9%)、「テレワーク(在宅勤務)」(52.0%)、「短時間勤務」(41.3%)の順に多かった。これらの制度は労働者からも好評だった、という結果が出ている。
しかし、そもそも不妊治療を行っている従業員を把握している企業は37.7%しかない。
不妊治療と仕事との両立に関する従業員への普及啓発については、最も多い「普及啓発資料の整備・公表」も3.0%に過ぎず、95.7%が何も実施していなかった。また、不妊治療をしている労働者に対して上司・人事部門との面談機会の提供や相談窓口の設置といった取り組みも、78.98%の企業で実施されていなかった。
従業員の不妊治療と仕事との両立を図るうえでの課題として企業が感じていることは、「不妊治療を行っている従業員の有無を把握できない」(71.2%)や「プライバシー保護の問題」(31.8%)が最多だった。センシティブな問題だけに企業側から踏み込んで対策をするのは難しい、というのが一般的な意見だった。
令和4年4月から不妊治療の保険適用がスタートしており、企業による労働者の不妊治療と仕事との両立支援の必要性は高まっている。
厚労省では、事業主や人事部門向けに「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」を制作して公開。企業が従業員の不妊治療と仕事の両立支援に取り組む意義や、すでに取り組んでいる企業の事例などをまとめている。
また職場内で不妊や不妊治療について理解を深めることも重要として、上司や同僚の人向けにサポートハンドブックも制作。不妊治療に必要な受診が頻回で、事前に計画を立てづらい点などを多くの人に知ってもらうことで、周囲のサポートを得られやすくすることを目的としている。
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