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高齢者の「機能的能力」を高めるために何が必要? WHOが提唱する「ヘルシーエイジング」に必要な3つの因子とは

 世界保健機関(WHO)は、高齢者の「ヘルシーエイジング」を示すための指標として「機能的能力」を提唱している。

 「高齢者の多くは、病気などの健康問題を1つ以上抱えて生きています。しかし、そうした問題を適切に管理できていれば、健康に対する深刻な影響を最小限に抑えることができます」としている。

 京都大学はこのほど、高齢者の「機能的能力」を測定するための尺度を開発したと発表した。

病気やフレイルがある高齢者も健康に年齢を重ねることは可能

 世界保健機関(WHO)は、2021〜2030年の10年間を「ヘルシーエイジングの10年間」(Decade of Healthy Ageing)に定め、その進展を示すための指標として「機能的能力」(Functional Ability)を提唱している。

 WHOはヘルシーエイジングについて、「機能的能力を高めて維持し、高齢になっても幸福な生活を続けられるようにすること」と定義している。「機能的能力」は、▼個人の心・体の複合した能力、▼環境要因の2つで構成される。

 重視しているのは、(1) 人間関係を築いて維持できる能力、(2) 基本的なニーズを満たし、自由に移動できる能力、(3) 学び・成長し・意思決定できる能力、(4) 社会に貢献できる能力を、それぞれ高めることだ。

 「高齢者の多くは、病気などの健康問題を1つ以上抱えて生きています。しかし、そうした問題を適切に管理できていれば、健康に対する深刻な影響を最小限に抑えることができます。健康に年齢を重ねるために、病気やフレイルでないことが必ず必要というわけではありません」と、WHOでは述べている。

高齢者はみな同じではない【多様性】
80歳の人のなかには、身体と精神の能力を高く維持できていて、30歳の人とあまり変らないという人もいる。一方で、食事や着替えなどの日常生活動作(ADL)が低下しており、広範なケアやサポートを必要としている同年齢の人もいる。高齢者が体力を維持できているか、介護に依存しているか、それともその中間にあるかにかかわらず、すべての高齢者の機能的能力を向上させるための政策が必要。

高齢者には格差がある【不平等】
高齢者の能力や置かれている環境には多様性がみられるが、その多く(75%)は、人生全体にわたる有利な点と不利な点が積み重なって形成されたものだ。高齢者が抱える地域社会や環境の課題だけでなく、性別、家庭、教育レベル、経済的な背景、民族などの、さまざまな因子に目を向けることも必要。

高齢者の機能的能力を測定するための尺度を開発

 京都大学は、高齢者の「機能的能力」を測定するための尺度を開発したと発表した。この尺度を、日本の65歳以上の高齢者のデータを用いて検証した結果、3つのカテゴリから成る24項目で測定できることを明らかにした。

 さらに、この尺度で測定された機能的能力により、3年後のウェルビーイング(主観的な健康感と幸福度)を予測できることも示した。

 研究グループは今回、日本老年学的評価研究(JAGES)の2013年と2016年の両方の調査に参加した3万5,093人のデータを用い、機能的能力を構成すると考えられる31の候補項目を用いて検証した。

 さらに、開発した尺度で機能的能力が高いと判定された高齢者が、実際に3年後に幸福度と主観的健康感が高いかどうかを調べた。

 その結果、対象となった高齢者の85%は主観的健康感が良好で、51%は幸福度が高いことが示された。3因子で構成される24項目の尺度により、機能的能力を測定でき、測定した機能的能力により、3年後のウェルビーイングを予測できることを明らかにした。

 その3つの因子とは、1「人間関係を築き、維持できる能力」、2「基本的なニーズを満たす能力+自由に動き回れる能力」、3「学び、成長し、意思決定できる能力+社会に貢献できる能力」。

 研究は、京都大学大学院医学研究科の近藤尚己教授、西尾麻里沙氏らの研究グループによるもの。研究成果は、老年学に関する国際トップジャーナル「Age and ageing」にオンライン掲載された。

 「これまで、機能的能力の測定方法やその妥当性については、ほとんど検討されておらず、モニタリングの実施は困難でした」と、研究グループでは述べている。

 「本研究は、WHOが提唱する機能的能力の構造や測定方法を検証した世界ではじめてのものです。今回の研究成果を受けて、ヘルシーエイジングの考え方が各国で普及し、その達成度を評価したり、国際比較していくといった、さらなる研究が進むことが期待されます」としている。

高齢者の「機能的能力」を3つのカテゴリから成る24項目で測定
3年後のウェルビーイングを予測

出典:京都大学、2024年

Healthy ageing and functional ability (世界保健機関 2020年20月26日)
国連が提唱する、健やかに年を重ねるための「機能的能力」の評価指標を開発・妥当性を確認 (京都大学大学院医学研究科 社会疫学分野 2024年2月5日)
Measuring functional ability in Healthy Ageing: testing its validity using Japanese nationwide longitudinal data (Age and Ageing 2024年1月12日)
日本老年学的評価研究 (JAGES)
[Terahata]
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