ニュース
健診で高血圧がみつかっても受診するのは8%未満 職場に健康管理の担当者がいると改善 中小規模事業所を調査
2024年12月02日
健康診断で新たに高血圧が発見された人が、その後に医療機関を受診する割合は低いことが、琉球大学が全国健康保険協会(協会けんぽ)の所管する2,906人のデータを解析した研究で明らかになった。
しかし、健康管理の担当者のいる事業者では、高血圧の従業員の受診率は改善することも分かった。血圧が高めの人ほど、健康管理担当者がいることの効果は高いことも示された。
「人的資源が限られている中小規模事業所では、産業医や保健師などの有資格者に限定せずに、健康管理担当者を配置することが、健康診断から医療的管理への移行を促進させる現実的かつ効果的な戦略になります」と、研究者は述べている。
職域健診で高血圧を指摘されて医療機関を受診するのは半年後でもわずか7.5%
心疾患や脳卒中など循環器疾患は、日本で死亡や要介護状態になる原因の上位を占めており、高血圧が重要な危険因子になっている。 そのため地域や職域の健康診断で、高血圧などの危険因子のあるハイリスク者をみつけて、医療的管理につなげることが重要となる。 とくに職域は、労働安全衛生法にもとづく従業員への定期的な健康診断とからめて、若・中年層の健康増進と疾患予防を推し進めるのに適した場となる。 「大規模事業所では、産業医や保健師などのフルタイムの健康管理担当者が、従業員に保健指導や受診勧奨を行っており、健康診断後に医療機関を受診しやすいという報告があります」と、研究者は指摘する。 「日本の全民間事業所の99.7%を占め、全従業員の68.5%を雇用する中小規模事業所でも、健康管理体制や、健康診断後の医療機関受診などを高める必要があります」としている。 関連情報中小規模事業所でも健康管理の担当者がいると従業員の受診率は改善
研究グループは今回、全国健康保険協会(協会けんぽ)沖縄支部から委託され、同支部が所管する民間中小規模事業所およびその従業員(35~59歳)の、2019年度の基礎登録・健康診断・診療情報明細書、および事業所の健康管理体制などの調査結果を突合させたデータを解析した。 とくに高血圧は健診で所見がある割合が高く、循環器系疾患の主要な危険因子になることから、高血圧に注目した。 対象となったのは、前年度の健康診断で高血圧がなく、対象年度の健診で新たに高血圧が発見された2,906人。 その結果、健診の翌1~6ヵ月の各月末までの医療機関受診率は、翌1ヵ月末までで2.72%、翌2ヵ月末までで4.03%、翌6ヵ月末まででも7.50%と低いことが明らかになった。 しかし、保健医療系の資格の有無を問わず、健康管理の担当者のいる事業所では、新規の高血圧者の健診の翌1ヵ月末までの医療機関受診率は2.97%に改善することが分かった。担当者のいない事業所では2.00%と低かった。 健康管理担当者のいる事業所での、新規高血圧者の健診の翌1ヵ月末までの受診に関して、交絡因子を調整したオッズ比は1.74だった。保健医療系資格のない健康管理担当者でも、同様の傾向が示された。 受診控えがありえるごく軽度の高血圧を除外した、収縮期/拡張期血圧≧150/95 mmHgという高血圧でも、健康管理担当者のいる事業所では、新規高血圧者の健診の翌1ヵ月末まで受診率は4.97%となり、有しない事業所の2.29%よりも大幅に高かった。 健康管理担当者のいる事業所での、新規高血圧者の健診の翌1ヵ月末までの受診に関する調整オッズ比は3.05になった。
健康管理担当者のいる事業所では新規の高血圧者の医療機関受診率が改善
出典:琉球大学、2024年
働き盛り世代の職域での健康改善を支援
研究は、琉球大学大学院医学研究科 公衆衛生学・疫学講座の中村幸志教授らの研究グループによるもの。研究成果は、日本高血圧学会の学術誌「Hypertension Research」にオンライン掲載された。 「今回の調査は、健康診断で新たに高血圧が発見された人が、その後に医療機関を受診するかどうかを調べたもので、中小規模事業所での健康管理体制をふまえた報告としてははじめてのものです。働き盛り世代の、循環器系疾患の予防のための課題や、職域での改善策を示唆する成果と言えます」と、研究者は述べている。 「人的資源が限られている中小規模事業所では、産業医や保健師などの有資格者に限定せずに、健康管理の担当者を配置することが、健診から医療的管理への移行を促進させる現実的かつ効果的な戦略といえるでしょう」。 「そのためには、個々の事業所での努力のみならず、保健医療に関わる諸機関による健康管理担当者に対する継続的な教育やトレーニングなどの支援も望まれます」としている。 琉球大学大学院医学研究科 公衆衛生学・疫学講座 Healthcare administrators and hypertension at small-to-medium worksites in Okinawa, Japan (Hypertension Research 2024年11月8日)掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2024年12月02日
- 健診で高血圧がみつかっても受診するのは8%未満 職場に健康管理の担当者がいると改善 中小規模事業所を調査
- 2024年11月26日
-
【中間とりまとめ】健診問診票に、女性特有の健康課題の項目追加へ
「労働安全衛生法に基づく一般健康診断の検査項目等に関する検討会」より - 2024年11月18日
- インフルエンザ流行に備えて 「予防のための最善の方法はワクチン接種を受けること」と専門家は指摘
- 2024年11月18日
- 【新型コロナ】ワクチン接種を受けた人は罹患後症状の頻度が約半分に減少 ワクチンの効果は高い
- 2024年11月11日
- 「加熱式タバコ」もやはり危険 従来のタバコと同様に健康リスクが がん細胞の増殖を促進 細胞死も
- 2024年10月28日
- 大腸がん検査は40代から受けると効果が大きい 大腸がん検診は死亡リスクを大幅に減少 検査を受けることが大切
- 2024年10月28日
- 子供の肥満が世界で増加 過去30年で2倍に増えパンデミックに 子供たちと家族の健康な未来に向けた取り組みが必要
- 2024年10月28日
- 「妊娠糖尿病」が増加 食事と運動に取り組めば予防・改善できる どの女性にもリスクが
- 2024年10月21日
- 健診で脂質異常を指摘されても医療機関を受診しない人の特徴は? ふだん医療機関と接点がない人が未受診の可能性 筑波大学
- 2024年10月15日
- スマホをいじる時間を1時間減らすだけでメンタルヘルスは改善 仕事への満足度も向上 スマホ依存は孤独や不安を高める?