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自然とのふれあいが肥満や糖尿病を改善 日本の里山の魅力を再発見 緑の豊かな環境は心身の健康を促進
2024年12月09日
自然が豊かな環境で体を積極的に動かすことが、心臓病、脳卒中、がん、うつ病などの予防・改善に有用であることが明らかになった。
10分間という短い時間でも、自然がある場所をウォーキングするだけで、心と体に良い影響があらわれ、ストレスを解消できるという。
「自然にふれることは、薬物療法やカウンセリングにも匹敵する効果をもたらします」と、研究者は述べている。
自然が豊かな環境での活動は取り組みやすい
自然が豊かな環境で体を積極的に動かすことが、心臓病、脳卒中、がん、うつ病などの予防・改善に有用であることが、英国のエクセター大学の研究で明らかになった。 研究グループは、英国の主な横断調査のデータを用いて、自然環境でのレクリエーションなどの身体活動が、2型糖尿病、虚血性心疾患、脳卒中、がん、うつ病などにどう影響するかを調べた。 その結果、自然のある環境を訪れ、運動をすることを習慣化すると、英国で2型糖尿病などの慢性疾患を年間に1万2,763件予防でき、医療費を1億870万ポンド(208億円)の節約できることが示された。 「運動が健康に良いことは理解できていても、集団で行うスポーツやフィットネスなどの活動に対して意欲をもてなかったり、アクセスを困難に感じている人は多くいます」と、同大学の環境・人間健康センタージェームス グレリエ氏は言う。 「そうした人々にとって、自然が豊かな環境で行う運動や身体活動は、より参加しやすく、はるかに幅広く活用できるものになりえます」。 「自然にふれる機会を増やし、体を活発に動かし、生活スタイルを健康的に変えていくと、健康を改善する効果を得られることは、これまでの研究でも示されています。自然にふれることは、薬物療法やカウンセリングにも匹敵する効果をもたらします」としている自然の豊かな場所はメンタルヘルスを改善するのにも効果的
自然の豊かな場所での活動は、メンタルヘルスを改善するのにも効果的という別の研究を、英国のヨーク大学が発表している。研究グループは、「自然にもとづく介入」(NBI)に関する50件の研究をメタ解析した。 自然のある場所で、運動やガーデニングなどの活動を20~90分間行うことを、8~12週間続けると、「気分の改善」「不安の軽減」「ポジティブな感情の改善」「ガティブな感情の軽減」といった効果を得られることが示された。森林浴も効果があるという。 「自然のなかにいることは、健康と幸福に良いだけでなく、体を使って活動することで、メンタルヘルスを改善する大きな効果を得られます」と、同大学健康科学部のピーター コベントリー氏は述べている。公園などの緑の豊かな環境へのアクセスを改善
公園や遊歩道、コミュニティガーデンなどの自然の多い環境を整備することは、住民の運動や身体活動を増やすのに効果的であることが知られているが、そうした環境へのアクセスのしやすさは、地域や人によって差があると、米国のテキサスA&M大学が発表した。 「公園や遊歩道などは、アクセスしやすく、広範囲に利用できることが重要ですが、地域によって大きな差があります」と、同大学健康・自然センターのジェイ マドック所長は言う。 「たとえば米国では、緑の豊かな公園から半マイル(0.8km)以内に住んでいる住民の割合は、イリノイ州では98%に上るのに対し、ミシシッピ州ではわずか29%です」としている 米国の成人の4人に3人以上が運動不足だが、公園などの自然の豊かな環境へのアクセスのしにくさも影響しているとしている。とくに子供、高齢者、基礎疾患などのある人、低所得層などは自然空間へのアクセスに課題を抱えている傾向がある。 マドック所長は対策として、都市に公園や緑地を整備するのに加え、医師などの医療従事者が公園などの自然空間を活用した「自然療法」(米国では「ParkRx」として知られている」)を積極的に処方したり、医療者が自ら参加し実践して、自然とのつながりを強める行動をモデル化することなどを提案している。日本の里山は自然との関わりを改善できる魅力的な環境
自然へのアクセスの格差を解消
日本のモンスーン地域には、農地や森林などがモザイク状に分布する里山環境があり、アクセス性が高く、快適な温熱環境を備えた魅力的な伝統的景観としてのポテンシャルがあるという研究を、神戸大学などが発表した。
自然へのアクセスの不平等は、他の社会問題や環境問題の根源のひとつになっており、自然へのアクセスの格差の問題に取り組むことは、さまざまな問題を同時に解決する有効な手段になる可能性がある。
研究グループは、住宅地、職場、商店街などの近隣環境の土地利用に着目。阪神圏と東京圏を対象にアンケート調査を実施し、3,500人の回答を得た。
その結果、「居住地周辺に農地がある」「買い物先近くに草地がある」「通勤先近くに落葉樹林がある」といった土地利用分類が、緑地や水辺を訪れる頻度に影響していることが分かった。
それらの生態系の面積だけでなく、形態の複雑さを示す周長も、自然を訪問する頻度と関連しているという。
さらに、若年層では幼少期の自然体験や、中高年層では自然との精神的なつながりなどの要素も関わっている。
とくに、複雑な形状の緑地があることが、自然訪問頻度と相関していることも分かった。農地や森林などがモザイク状に分布する里山環境は、アクセス性が高く、快適な温熱環境を備えた魅力的な伝統的景観として、自然訪問の頻度格差を是正するポテンシャルがあるとしている。
研究は、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の内山愉太助教、佐藤真行教授、丑丸敦史教授、源利文教授、清野未恵子准教授、原田和弘教授、琉球大学医学部保健学科の喜屋武亨准教授、高倉実教授(現在は名桜大学特任教授)らによるもの。研究成果は、「Journal of Environmental Management」に掲載された。
自然へのアクセスの格差を解消
Valuing the health benefits of nature-based recreational physical activity in England (Environment International 2024年5月)
Nature-based activities can improve mood and reduce anxiety, new study shows (ヨーク大学 2021年10月7日)
Nature-based outdoor activities for mental and physical health: Systematic review and meta-analysis (SSM - Population Health 2021年12月)
Does Exercise In Greenspace Boost The Individual Health Benefits Of Each? (テキサスA&M大学 2024年6月13日)
Physical Activity in Natural Settings: An Opportunity for Lifestyle Medicine (American Journal of Lifestyle Medicine 2024年5月11日) 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科
Local environment perceived in daily life and urban green and blue space visits: Uncovering key factors for different age groups to access ecosystem services (Journal of Environmental Management 2024年10月3日)
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