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「温泉療法」により⾼⾎圧が改善 ストレスによる睡眠障害を緩和 冬の温泉⼊浴では注意点も

 温泉⼊浴を健康増進に役立てる「温泉療法」が注目されている。温泉⼊浴により、⾼⾎圧の抑制効果を期待できることが、九州大学の研究で明らかになった。

 夜間に温泉に入る習慣が、慢性的なストレスによる睡眠障害の改善につながり、⾼⾎圧の発症の予防につながっている可能性がある。

 一方で、高齢者の入浴時には、事故が多いことも知られている。夜に温泉に入ると血圧が低下することが、入浴時の事故につながるおそれもあることが、九州大学の新しい研究で明らかになった。

 研究グループは、入浴を安全・効果的に行えるようにするため、温泉療法の参考になるガイドラインの作成を目指している。

注目されている温泉療法

 温泉⼊浴を健康増進に役立てる「温泉療法」が注目されている。温泉は⻑い歴史を通じて、病気の治療や保養など、さまざまな効果を期待して利⽤されてきた。

 温泉⼊浴により、⾼⾎圧の抑制効果を期待できることが、九州大学の研究で明らかになっている。夜に温泉を利⽤している人は、高血圧が少ないことが、調査により分かった。

 夜間に温泉に入る習慣が、慢性的なストレスによる睡眠障害の改善につながり、⾼⾎圧の発症の予防につながっている可能性がある。

温泉を利⽤して⾼⾎圧を改善

 「温泉には、硫化⽔素ガスなどによる科学的な直接作⽤、リフレッシュ効果による⽣物学的作⽤、温熱効果で⾎管が広がる物理学的作⽤があり、⾼⾎圧の抑制効果が期待されてきました」と、研究者は述べている。

 「⽇本では、50歳以上の男性、および60歳以上の⼥性の60%以上が、⾼⾎圧に罹患しています。温泉を有効に利⽤することで、⾼齢者の⾼⾎圧の発症を抑制できる可能性があります」としている。

 研究は、九州⼤学病院別府病院内科の堀内孝彦教授、前⽥豊樹准教授、⼭崎聡氏、得能智武氏らによるもの。研究結果は、「Scientific Reports」に掲載された。

夜の温泉利⽤は⾼⾎圧の少なさと関連

 研究グループは、2011年に65歳以上の⼤分県別府市⺠1万⼈以上に対して、温泉の利⽤状況と既往歴に関するアンケート調査を実施した。

 その結果、夜の温泉利⽤が、⾼⾎圧の既往の少なさに関連していることが判明した。

 85歳以上の高齢者では、既往歴として、不整脈、脳卒中、痛⾵、糖尿病、脂質異常症、腎機能障害が⾼⾎圧の発症リスクに関連しており、夜の温泉利⽤と慢性肝炎の既往が、⾼⾎圧の少なさに関与していることが示された。

夜間の温泉入浴により収縮期血圧と拡張期血圧の両方が大幅に減少
夜間の温泉入浴前後の収縮期と拡張期血圧

出典:九州⼤学、2024年

夜に温泉は事故につながるおそれも 安全な入浴が必要

 高齢者の入浴時には、事故が多いことも知られているが、その原因は、急な温度差による血圧の急激な変化とみられている。温泉療法では、安全な入浴法を推進することも重要となっている。

 夜に温泉に入ると血圧が低下するが、入浴時の事故につながるおそれもあることが、九州大学の新しい研究で明らかになった。

 とくに収縮期(最高)血圧が160mmHg以上、あるいは拡張期(最低)血圧が100mmHg以上の高齢者では、入浴時の事故の危険性は、正常血圧の高齢者の3~4倍に上昇することが報告されている。

 「宿泊客に対する、夜間の温泉利用と血圧変化に関する検討により、温泉施設での入浴前の血圧測定を恒常化し、収縮期血圧や拡張期血圧の高い温泉客による事故を未然に防ぐことを目指しています」と、研究者は述べている。

 研究は、九州大学病院別府病院内科の山崎聡氏(現:聖マリア病院血液内科主任医長)らの研究グループによるもの。

安全な温泉利用と高血圧の早期発見・治療を両立

 研究グループは今回、別府市内の温泉施設で1,116人を対象に、夜間の温泉入浴について調査を実施。

 その結果、65歳以上の高齢者では、夜間の温泉利用は、最高血圧および最低血圧の低下と関連することが分かった。

 血圧低下につながりやすい因子を解析したところ、年齢が65歳以上であること、薬で高血圧の治療をしていること、不整脈、うつ病、塩化物泉の利用があることが影響していることも分かった。

 研究グループは、温泉入浴できなかった血圧コントロール不良の温泉客に対しては、希望者には九州大学病院別府病院での「高血圧の温泉療法プログラム」に参加してもらい、安全な温泉利用と高血圧をはじめとする生活習慣病の早期発見と早期治療につなげることを試みた。

 「夜間の温泉入浴は、65歳以上の高齢者の血圧低下に有効である可能性がありますが、高血圧の既往がある人は、服用中の降圧薬などの影響で、事故につながる可能性があります。かかりつけ医と相談のうえ、安全な温泉入浴を心がけていただきたい」としている。

温泉療法の「見える化」を目指す

 九州大学病院別府病院では、高齢者を対象に、夜間の温泉利用と睡眠の質や心理社会的状況などとの関連を調べる臨床試験も実施されている。

 高血圧などの発症の抑制に有効な夜間の温泉利用により、睡眠の質の向上を促進する診療プログラムを目指している。

 高血圧を含む7疾患に対し、網羅的に分析・評価し、温泉療法で「温泉療法指示書」を作成するときに参考となるガイドラインを作成するなど、温泉治療の「見える化」を目指しているという。

Evening hot spring soaks lower cases of hypertension in older Japanese adults (九州大学 2022年12月21日)
Hot spring bathing is associated with a lower prevalence of hypertension among Japanese older adults: a cross-sectional study in Beppu (Scientific Reports 2022年11月14日)
夜間の温泉利用と血圧変化~夜の温泉入浴は高齢者の血圧低下に影響か?~ (九州大学 2024年11月19日)
Night-time hot spring bathing is associated with improved blood pressure control: A mobile application and paper questionnaire study (PLOS ONE 2024年11月1日)
[Terahata]
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