中小企業のがん対策、経営者の関心が鍵?
「がん対策推進企業アクション」最新調査が示す実態
経営者の関心が高いほど、がん検診実施率が急激に高くなる
興味深い点としては、経営者自身が、がんに関心が高い企業ほど、がん検診の実施率が急激に高くなるという結果が数値で示されたことである。
レポートでは「がん対策に大いに関心がある企業と、全く関心がない企業では、倍以上の差があり、企業体質(健康経営)を考える上での"指標"ともなる」と考察している。
さらに「従業員規模別で、大きな企業こそ実施率が高いのは、小規模企業経営者へのがん対策の啓発に力を入れる必要性が浮き彫りになった」と指摘している。
出典:がん対策推進 企業アクション「中小・小規模企業での「がん対策」調査結果報告」P.7, 2025年2月3日
また、企業全体でみると、労働安全衛生法に基づく一般健康診断に含まれない従業員のがん検診を約6割の企業が実施または推奨していると推測された。
特に、近年では従業員のがん検診受診状況を把握できている企業が増加しており、中小企業においても健康管理意識が向上している様子がうかがえる。
がん罹患と就労の現状 がん罹患者の約3割が退職
一方で、従業員のがん罹患者数は増加傾向にあるものの、その勤務継続率には大きな変化がなく、約3割の罹患者が退職していることも明らかになった。
これは、中小企業においてがん患者の就労支援や職場復帰の仕組みがまだ十分に整備されていない可能性を示唆している。
出典:がん対策推進 企業アクション「中小・小規模企業での「がん対策」調査結果報告」P.9, 2025年2月3日
中小企業のがん対策 向上と課題
今回の調査結果から、中小企業のがん対策の向上がみられる一方で、課題も多く残されていることも明らかになった。以前から推察されていたとはいえ、経営者自身の「健康に対する意識」が、従業員の健康管理に大きく影響することがあらためて数値として示された格好だ。
なお、HPVワクチンに関する認知度についても調査が行われたが、「HPVワクチンの実情を知らない」と回答した経営者は16%にとどまり、比較的認知度が高いことがわかった。女性特有のがん予防に対する、社会的な関心が高まっていることが表れているのは明るい傾向だ。
企業の健康経営がますます重要視されるなか、本レポートは今後の健康管理対策を考える上で大いに参考となるだろう。
参考資料
令和6年度(2024年度)中小・小規模企業での「がん対策」(検診・就労)の実態調査結果報告|がん対策推進企業アクション
がん対策推進企業アクション


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