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毎日の骨ケアはカルシウムとビタミンDで アルコールには注意

 骨を健康に保つためにカルシウムとビタミンDが必要だ。ビタミンDは日光を浴びることで体内に作られる。また、アルコールは骨形成を妨げる原因になるので、大量飲酒に注意した方が良いと研究者はアドバイスしている。
日光を浴びてビタミンDを体内で生成
 カルシウムが足りなくなると骨が弱くなるが、骨を健康に保つためにビタミンDも必要であることが、10月に開催された米国骨・ミネラル研究学会(American Society for Bone and Mineral Research)の年次集会で発表された。

 筋肉や神経が正常に働くためには、一定の濃度のカルシウムが血中を常に循環している必要がある。カルシウム摂取不足は、骨に悪いのは確かだ。だが、カルシウムを十分に摂取していれば、それで大丈夫というわけではない。

 「カルシウムを吸収されるためには、ビタミンDも必要です。いくらカルシウムを摂取しても、ビタミンDが足りなければ、吸収効率が悪いためカルシウムはあまり吸収されません」と、米メイン州ポートランドにあるメイン医療センターのクリフ ローゼン氏は言う。

 米国では1日に必要なカルシウムは1,000mg、ビタミンDは600単位とされているが、成人の70~80%で不足しているという。最近では、乳幼児や妊婦、若い女性、高齢者を中心にビタミンDの不足が指摘されている。そこで同学会は、今年4月に「カルシウムとビタミンDの摂取を推奨する声明」を発表した。

 ビタミンDが極端に不足すると、カルシウムだけでなく、カルシウムとともに骨の石灰化質である「ハイドロキシアパタイト」を構成するリンも足りなくなる。その結果、骨は骨軟化症という状態になってしまう。

 欧米で行われた過去の研究で、骨粗しょう症を含むさまざまな病気と生活スタイルの関係が調査されている。ビタミンDが不足すると、筋力、特に下半身の筋力が衰え、転倒しやすくなることも明らかになってきた。

 「ビタミンD不足になると、小腸からのカルシウムの吸収が悪くなります。さらに、その後の研究で、ビタミンD不足は副甲状腺ホルモンという骨のカルシウムを溶かす働きのあるホルモンの分泌を亢進させることも判明しました」(ローゼン氏)。

 「ビタミン」は、人体では合成できない微量栄養素に対して与えられた名前だ。しかし、ビタミンDをヒトは体内で作ることができる。皮膚を日光(紫外線)にあてると、ビタミンDは皮膚で作られる。

 一方で、ビタミンDを豊富に含む食品は比較的限られている。魚介類、卵、きのこ類などに含まれるが、食品だけで、ビタミンDを充足させるのはかなり困難だ。

 「日照の少ない地域に暮らす人は、1日に60分以上、日光にあたることが勧められます。日照の多い地域では、15分程度でも大丈夫です。北欧の人々が、晴れた日に戸外で日光浴をするのは、生活の知恵なのです」と、ローゼン氏は指摘する。

 十分日光に当たり、食事に気をつけても血中のビタミンDが低く、ビタミンD不足であることが判明した場合は、サプリメントとしてビタミンDを摂ることが勧められる。

 「骨を健康に保つためにビタミンKも有用です。ビタミンKは骨のタンパク質の働きを高め、骨質を改善します。葉物の緑黄色野菜はビタミンKの最良の供給源です。ホウレンソウやブロッコリーを食べることは健康的なだけではなく、骨にも良いのです」と、ローゼン氏は付け加えている。

飲み過ぎに注意 大量飲酒は骨形成を妨げる
 大量にアルコールを飲むと、骨の健康が損なわれる危険性があるという研究も発表された。

 「アルコールを飲むことで注意力が低下し、自動車事故などのトラブルを起こす人がいますが、アルコールは骨折をした後の骨の修復も妨げるので注意が必要です」と、米ロヨラ大学ストリッチ医学部のロマン ナトーリ氏は話す。

 適度な飲酒であれば、むしろ骨が丈夫になり骨粗しょう症の発症を抑えられるという研究も報告されているが、適量というのは1日に1杯未満だ。この量で飲酒をとめられない人が多いので、"飲み過ぎない"ことを肝に銘じて飲んだ方が良いという。

 骨が損傷を受けると、その部分に「カルス」と呼ばれる軟骨性の組織ができ、骨の修復がはじまる。アルコールには、このカルスが形成されるのを妨げる作用がある。アルコールによって、体内で「フリーラジカル」が増えることが原因となっている。

 フリーラジカルとは、ペアになるべき相手をもたない電子をもつ分子こと。細胞内で酸素を利用しエネルギーを生み出す過程で、大量のフリーラジカルが発生する。

 適度な量のフリーラジカルは体内で殺菌作用など「プラス」の役割を果たすが、過剰に発生すると有害なものに変わる。これが酸化ストレスで、鉄がさびるのと同じような悪影響を体に及ぼしている。

 「アルコールを飲みすぎると、アルコールの分解過程で毒性の強いアセトアルデヒドが発生し、アルコールを分解する肝臓で大量のフリーラジカルが発生します。フリーラジカルによる酸化ストレスは、老化や動脈硬化、がんなどのさまざまな疾患の原因になるだけではなく、骨形成も妨げています」(ナトーリ氏)。

 また、大量のアルコールを飲むと、骨の強度に大きな役割を果たす「オステオポンチン」と呼ばれるタンパク質が不足しやすくなるという。滑ったり、転んだりすると、オステオポンチンが骨に対する衝撃の力により変形して、ナノサイズの孔を形成する。この孔がショックをやわらげる役割をしているが、オステオポンチンが不足すると孔を形成できなくなり、骨に亀裂が入りやすくなる。

 「アルコールには利尿作用があるため、骨形成に必要なカルシウムがいったん吸収され体内に入っても、必要な分まで排泄されてしまいます。また、飲酒を続けていると、食事の栄養バランスも乱れがちになります。骨を健康に保つために、大量飲酒は勧められません」と、ナトーリ氏は強調している。

New Recommendations for Taking Calcium and Vitamin D: U.S. Preventive Services Task Force Releases Latest On Supplements and Bone Fracture in Adults(米国骨・ミネラル研究学会 2013年2月25日)
Study Shows How Binge Drinking Impairs Healing of Broken Bones(ロヨラ大学医学部 2013年10月7日)

[Terahata]
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