ニュース
魚を食べて脳卒中と心臓病を予防 日本人を20年以上調査
2014年02月19日

魚介類に含まれる「EPA(エイコサペンタエン酸)」や「DHA(ドコサヘキサエン酸)」などの不飽和脂肪酸を多く摂取している人ほど、脳卒中と心臓病による死亡リスクが低くなることが、日本人を対象とした24年にわたる研究で明らかになった。
日本人は世界的に魚介類をもっとも多く食べている国民であり、ユネスコの無形文化遺産に登録された「和食」は、魚系が主菜の中心となっている。魚を多く食べている日本人では、脳卒中と心臓病による死亡が少ないことが、20年以上の長期に及ぶ調査で初めて判明した。 「毎日サンマ1尾程度の魚介類から脂肪酸を摂取することで、将来の脳卒中や心臓病を予防できる可能性が示されました」と、研究者は述べている。
魚を取り入れた和食中心の食生活はメリットが多い
この研究は、厚生労働省研究班が全国で実施している長期追跡研究(コホート研究)である「NIPPON DATA(ニッポンデータ)研究」の成果のひとつ。1980年に実施された「国民栄養調査」に参加した30歳以上の成人男女のち、脳卒中や心筋梗塞などを発症したことのない9,190人(男性 4,028人、女性 5,162人、平均年齢 50.0歳)を、2004年まで24年間にわたり追跡して調査した。
魚介類に多く含まれるEPAとDHAの合計摂取量で、参加者を4群に分けた。1日の摂取量は、もっとも少ない群でサンマ4分の1尾程度に相当する0.42g、もっとも多い群でサンマ1尾弱に相当する1.72gだった。
24年の期間中に、879人が循環器疾患(脳卒中または心臓病)で死亡。EPAとDHAの摂取量のもっとも少ない群を基準としたところ、もっとも多い群で死亡率は20%低くなった(ハザード比0.80、95%信頼区間 0.66-0.96)。
魚介類から脂肪酸を多く摂取していると循環器疾患の死亡リスクが低下する傾向は、30~59歳の働き盛りの世代で特に強く示された。また、日本人は魚を多く食べており、今回の調査では、もっとも摂取量の少ない群でも米国の平均摂取量の約2倍をとっていたという。
サンマなど青背の魚に含まれるEPAやDHAは、「n-3系不飽和脂肪酸」に分類され、悪玉のLDLコレステロールを減らしたり、動脈硬化などを抑える作用があることが報告されている。
「魚介類からとる脂肪酸が多いほど脳卒中の死亡リスクが低くなることが示された。若いころから魚介類を多くとる和食中心の食生活を続けることが、脳卒中や心臓病の予防につながるのではないか」と、研究者は話している。
この研究は、NIPPON DATA班研究代表で滋賀医科大学アジア疫学研究センター長の三浦克之教授、同・宮川尚子特任助手らの研究チームによるもの。詳細は、欧州動脈硬化学会誌「アテロスクレローシス」2月号に発表された(Atherosclerosis 2014; 232(2): 384-389)。
関連情報
「ごはんを主食とした和食」は食事療法に適している(糖尿病ネットワーク)
無理なく続けられるおいしい食事療法 「筑波大学の安心献立」(糖尿病ネットワーク)
野菜や果物のフラボノイドが2型糖尿病の予防・改善に有効
滋賀医科大学NIPPON DATA 80/90(滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「栄養」に関するニュース
- 2025年08月21日
- 歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 【コーヒーと健康の最新情報】コーヒーを飲んでいる人はフレイルや死亡のリスクが低い 女性では健康的な老化につながる
- 2025年07月08日
- 「大人の食育」を強化 人生100年時代の食育には地域や職場との連携も必要-令和6年度「食育白書」より
- 2025年07月07日
- 日本の働く人のメンタルヘルス不調による経済的な損失は年間7.6兆円に 企業や行政による働く人への健康支援が必要
- 2025年07月07日
- 子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市