ニュース
世界糖尿病デー 健康的な朝食が糖尿病リスクを減らす
2014年11月17日
11月14日は「世界糖尿病デー」。国際糖尿病連合(IDF)は、2014年の世界糖尿病デーのガイドブック「健康な1日を始めよう(Off to the right start)」を公開した。
世界糖尿病デーの2014年のテーマは「糖尿病とともに健康に生きる」(Healthy Living and Diabetes)。1日を始めるにあたって朝食をとることが重要であることに焦点をあて、「明日を変えるために、今日から行動しよう」と呼びかけられている。
健康的な朝食が糖尿病リスクを減らす
健康的な朝食を毎日とることは、糖尿病がもたらす負担を減らし、生産性の損失や医療費の削減に役立つ。
世界の糖尿病有病者の数は3億8,200万人に上り、糖尿病がもたらす経済的負担は約63兆円(5,480億ドル)に拡大している。糖尿病に関連する経済的損失の多くは、糖尿病の合併症である「心臓病」「腎臓病」「網膜症」「足病変」などの医療費で占められる。
糖尿病は初期の段階から治療を開始することが重要だ。初期のうちから治療を受け合併症を予防できれば、糖尿病であっても健康な人と変わらない生活をおくることができる。
そのために、朝食をしっかりとることが重要だ。健康的な朝食によって、2型糖尿病の発症を減らすことができることが確かめられている。健康に良い朝食をとるこで、糖尿病がもたらす世界的な負担を減らし、数十億ドルの経済的な損失と医療費を節約できる。
なぜ朝食を毎日食べることが重要なのか
健康的な朝食を食べることが、2型糖尿病を発症するリスクを低下させることが、さまざま研究で確かめられている。
2型糖尿病の発症が増えているのは、40~59歳の働き盛りの世代だ。朝食をとらない生活は、体重増加を引き起こしやすい。2型糖尿病の8割に、過体重と肥満が原因として関わっている。
健康的な生活により、2035年までに最大で1億5,000万人の糖尿病の発症を防ぐことができると推測されている。
米ハーバード大学公衆衛生大学院は、2万9,206人を対象に、朝食と糖尿病の発症について調査した。調査に参加したのは、米国で行われている大規模研究「医療従事者追跡研究」(Health Professionals Follow-up Study)に参加した40~75歳の男性だ。
研究チームは、1992年に参加者の食事内容について調べ、その後16年間、糖尿病の発症を追跡して調査した。追跡期間中に1,944人が糖尿病を発症したが、朝食を抜く習慣のある男性は、朝食を食べる男性に比べ、発症リスクが21%上昇することが明らかになった。
また、1日に食事を1~2回しかとらない男性は、3回の食事をしっかりとる男性と比べて、糖尿病の発症リスクが25%上昇していた。
「朝食、昼食、夕食をバランス良く食べることで、糖尿病のリスクを減らせることが示された」と研究者は述べている。
健康的な朝食が糖尿病の脅威を減らす
朝食を抜く人の多くは、減らした分を昼食と夕食で増やすので、結果として食べる量は減らないという調査結果がある。むしろ朝食を抜いた影響で、空腹を満たすために昼食や夕食で食べ過ぎてしまう傾向がある。
食事をとると血糖値が上昇しやすいが、1日の摂取カロリーが変わらない場合でも、朝食を抜くとより多くのインスリンが分泌され、肥満になりやすくなるという報告もある。朝食を抜くのが習慣化されると、血糖値が上昇しやすくなる。
また、朝食をとることで動脈硬化の原因になる悪玉のLDLコレステロールを減らせることが確かめられている。
IDFのガイドブックでは、次のことをアドバイスしている――
・炭水化物と脂肪の多い高カロリーの食事は、2型糖尿病の増加の要因になっている。 |
・野菜や果物、全粒粉、低脂肪の肉類、魚、ナッツ類を食べることが、2型糖尿病のリスクを減らし、糖尿病合併症の予防につながる。 |
・糖分を加えた清涼飲料や炭酸飲料の多くは高カロリーだ。そうした飲料の代わりに、砂糖を入れていない水やお茶、コーヒーを飲もう。 |
・野菜や果物はビタミンや食物繊維、ポリフェノールの供給源となる。ホウレンソウ、レタス、キャベツなど葉菜類を含め、1日に少なくとも3サービング(210g)以上を食べるようにし、できれば5サービング(350g)に増やす。 |
・ハムやソーセージなどの加工肉や、脂肪の多い赤身肉を食べ過ぎると、心臓病や動脈硬化になりすい。魚や鶏肉などの白身肉や、脂肪が少ない切り身を選ぶ。 |
・精製された穀類よりも全粒粉の方が、食物繊維やビタミンなとが多く含まれる。パンやパスタはなるべく全粒粉を使ったものを選び、米は玄米や雑穀などを混ぜたものを選ぶ。 |
・不飽和脂肪酸には、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、悪玉のLDLコレステロールを減らす作用がある。不飽和脂肪酸は、イワシ、サバなどの魚や、オリーブオイル、キャノーラオイル、コーン油、ヒマワリ油などに含まれる。 |
・間食としてお勧めなのは、新鮮な果物、ナッツ類、砂糖を加えていないヨーグルトなど。 |
・アルコールを飲むときは、1日に2ドリンクまでに抑える。1ドリンクのアルコール量は10gで、ビールであれば約250mLに相当する。 |
・健康的な食事は、不健康な食事に比べ、1日に170円(1.5ドル)ほど割高になるという調査結果がある。糖尿病や糖尿病合併症を発症した場合に比べると少ない負担だ。 |

Eating patterns and type 2 diabetes risk in men: breakfast omission, eating frequency, and snacking(American Journal of Clinical Nutrition 2012年3月28日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ