ニュース

アミノ酸「L-システイン」が飲酒による胃がんのリスクを減らす

 東北大学の研究グループが、アルコール摂取後の胃液中のアセトアルデヒドの増加が、二日酔い改善の効能があるとして健康食品などに利用されているアミノ酸「L-システイン」により抑えられることを明らかにしたと発表した。
L-システインの効果は二日酔い改善だけではない
 胃がんは全世界で男女ともにがん死亡のうち3番目に多い原因であり、日本を含む東アジアでは死亡率が高い。原因は、喫煙や食生活などの生活習慣やヘリコバクターピロリの感染などだが、飲酒、特にお酒に弱い人では、胃がんのリスクが高い。

 アセトアルデヒドは、アルコールが酸化されてできる発がん性のある物質。アセトアルデヒドはALDH2という酵素によって酢酸へと代謝されるが、この代謝速度には個人差があることが知られている。

 代謝が遅い「ALDH2不活性型」の人は、少量のアルコール摂取でもアセトアルデヒドが体内に蓄積し、顔面紅潮、動悸などのアルコール摂取に伴う種々の有害反応が引き起こされる。
日本人の30~40%が飲酒すると顔が赤くなるALDH2不活性型
 少量の飲酒で顔などが赤くなるお酒に弱い人はALDH2不活性型であり、日本人の30~40%が該当すると考えられている。

 研究グループは、ALDH2不活性型では活性型に比べて、飲酒後にアセトアルデヒド濃度が5.6倍に上昇することを突き止めた。

 さらに、ALDH2不活性型の人ではアルコール摂取後、胃内アセトアルデヒド濃度が非常に高くなり、胃粘膜が高濃度のアセトアルデヒドに暴露され、これが胃がん発生のリスクを高めていると考えられるという。

 研究では、徐放性L-システインを服用することで、胃内のアセトアルデヒドがALDH2活性型では67%、ALDH2不活性型では60%の低下することが確かめられた。その効果は2時間持続するという。
お酒に弱い人と強い人の両方でがん予防の効果
 L-システインの徐放性カプセルを服用すると、胃内でL-システインが徐々に放出され、アセトアルデヒドと反応し、その毒性を中和させることも判明した。

 L-システインによるアセトアルデヒドの低下は、ALDH2活性型、不活性型の両方で観察されたことから、どちらでも胃がんの予防に有用である可能性があるという。

 この研究は、東北大学大学院医学系研究科消化器病態学分野の飯島克則氏、前嶋隆平氏、下瀬川徹教授らの研究グループによるもので、オンライン科学誌「プロス ワン」に発表された。

東北大学大学院医学系研究科
Effects of ALDH2 Genotype, PPI Treatment and L-Cysteine on Carcinogenic Acetaldehyde in Gastric Juice and Saliva after Intragastric Alcohol Administration(PLOS ONE 2015年4月1日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2023年08月28日
極端な「糖質制限」や「脂質制限」は危険? 日本人に適した食事スタイルは? 8万人超を調査
2023年08月28日
カラフルな野菜を食べている人は認知症の発症が少ない ホウレンソウやブロッコリーを食べて認知症を予防
2023年08月28日
わずか5分の運動でも「がんリスク」を32%減少 無理なく続けられる「新しい運動法」を開発
2023年08月28日
週末の「寝だめ」では平日の睡眠不足のダメージを回復できない 寝不足が心臓の健康に悪影響
2023年08月28日
高齢者の「フレイル」の発生リスクを40%低減 「要支援」の高齢者が通所系サービスを利用すると効果
2023年08月21日
肥満やメタボが「腰痛」を引き起こす コロナ禍でさらに増加 「腰痛」を改善する運動は?
2023年08月21日
朝食欠食が肥満やメタボのリスクを上昇 朝食を食べない人に共通する生活スタイルは?
2023年08月21日
アルコールが高血圧の原因に 飲酒量が少ない人も血圧が上昇 2万人弱を調査
2023年08月21日
ストレスを解消する簡単で効果的な方法 「みんなと楽しく食べる」「睡眠を改善する」
2023年08月21日
「運動アプリ」がメンタルヘルスも改善 スマホアプリの導入は運動指導で障壁の低い介入に
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶