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2018年「高齢社会白書」 全世代型社会保障とエイジレス社会の実現へ
2018年06月27日

政府は、2018年版の「高齢社会白書」を決定した。高齢社会対策基本法によって作成が義務付けられた「高齢社会対策大綱」を取り上げている。
「全世代型の社会保障」へ大きく転換
白書には、これまでの高齢社会対策の実施状況や今年度の高齢社会対策に関する取り組みが掲載されている。
白書によると、2017年度の65歳以上人口は3,515万人で、高齢化率は27.7%だった。65歳以上の人がいる世帯は全体の約半分で、単独世帯や夫婦のみの世帯が過半数を占める。
社会保障給付費は、2015年度には114兆8,596億円となり、過去最高の水準となった。そのうち高齢者関係給付費は、2015年度は77兆6,386億円で、社会保障給付費に占める割合は67.6%。
これらをふまえて、日本の社会保障制度を、子供・若者から高齢者まで誰もが安心できる「全世代型の社会保障」へ大きく転換していく必要があると提言している。
関連情報
「エイジレス社会」を目指す方針
白書の基本となる考え方は次の3点だ――
▼年齢による画一化を見直し、全ての年代の人々が希望に応じて意欲・能力をいかして活躍できるエイジレス社会を目指す。
▼地域における生活基盤を整備し、人生のどの段階でも高齢期の暮らしを具体的に描ける地域コミュニティを作る。
▼技術革新の成果が可能にする新しい高齢社会対策を志向する。
2017年に策定された「働き方改革実行計画」では、「高齢者の就業促進」がテーマのひとつにされた。
65歳以降の継続雇用延長や、65歳までの定年延長を行う企業への支援を充実し、将来的に継続雇用年齢等の引上げを進めていくための環境整備が必要とされた。
さらに、多様な技術・経験を有するシニア層が、ひとつの企業に留まらず、幅広く社会に貢献できる仕組みを構築するための施策なども盛り込まれている。
生活を支えるために働くシニア世代
高齢者の体力テストの合計点は向上傾向にあり、平均寿命と健康寿命のいずれも男女ともに延伸していることを指摘している。
総務省の「労働力調査」によると、男性の就業者の割合は、55~59歳で91%、60~64歳で79%、65~69歳で55%となっており、60歳を過ぎても、多くの人が就業している。
内閣府の「高齢者の健康に関する調査」によると、収入のある仕事をしている55歳以上の男女のうち、退職希望年齢を「70歳超」とした人は現在60~64歳の層で31%、65~69歳の層で63%に上った。
働く理由は「収入が欲しい」(58%)、「面白い、自分の活力になる」(17%)、「働くのは体によい、老化を防ぐ」(14%)が多かった。シニア世代が生活を支える目的で働いている現状が浮き彫りになった。
健康自認が「良くない」人ほど不活発に
「先端技術等で拓く高齢社会の健康」と題した特集では、2017年度に実施した「高齢者の健康に関する調査」の結果を紹介。
主観的な健康状態が「良い」人は、▼外出頻度、▼会話頻度、▼社会的な活動への参加のいずれにおいても「活発である傾向が見られた」とした。
自身の健康状態を「良い」「まあ良い」と答えたのは全体の52%、「良くない」「あまり良くない」は18%だった。
「良くない」と答えた人のうち、ほとんど毎日会話する人は67%、外出する人は31%だった。
健康自認が「良くない」人は、日常生活において不活発になり、不活発になることでますます健康自認が下がるという悪循環に陥りやすい。健康自認が「良くない」層の特性や実態をふまえた対策が必要と指摘している。
遠隔医療で医療サービスにアクセス
健康状態が「良くない」人の医療サービスへのアクセス手段として、遠隔医療の事例を示した。旭川医科大学病院などで実施されている、モバイル端末を用いたクラウド医療などを紹介している。
遠隔診療には、医師が患者を診療する際に別の専門医からオンラインでアドバイスを受けるケースや、医師がコンピューターの画面を通して自宅や高齢者福祉施設にいる患者の状態を確認して診察するケースがある。
そのほか、AIを使ったセラピーロボットも紹介している。介護老人保健施設での実証研究では、セラピーロボットにより高齢者同士や介護者との会話が増加したり、うつの改善などの効果がみられたという。
高齢社会白書(内閣府)平成30年版高齢社会白書(内閣府)
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