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中高年者こそ運動が必要 「健幸華齢のためのスマートライフ」で活力年齢が若返る 全国生活習慣病予防月間2020 講演会(1)

運動と生活改善でがんと生活習慣病を予防

 一般社団法人 日本生活習慣病予防協会(理事長:宮崎 滋 先生)は2月5日に、東京の日比谷コンベンションホールで公開講演会を開催した。
 「全国生活習慣病予防月間」で掲げるスローガン「一無、二少、三多」から、2020年は「多動の勧め」に着目。
 「多動」とは、運動や身体活動をできるだけ増やし、毎日の生活の中で維持すること。運動を習慣化することで、生活習慣病を予防・改善できる。メリハリのある生活は、健康長寿に欠かせない要素だ。
 運動のもたらす健康効果について、第一線で活躍する専門家が解説した。

特別講習「インフルエンザ・新型コロナウイルスの予防」
和田高士 先生(東京慈恵会医科大学健康科学教授・日本生活習慣病予防協会副理事長)
 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念されている。このウイルスは、くしゃみ、咳、つばなどの「飛沫」と、感染予防をせずに手で触れる「接触」により感染する。推奨されている予防法や感染を広げないための対策は、一般的な感染症対策と同様に、「手洗い」と「せきエチケット」だ。

 このうち「手洗い」は、石けんと流水で、少なくとも20秒間、指の間や爪の隙間などもしっかりと洗うと効果的だ。20秒間の目安としては、「ハッピーバースデー」の唄を2回歌うとおよそ20秒になる。

 ドアノブや電車のつり革などさまざまなものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性がある。風邪やインフルエンザへの対策と同じように、外出先からの帰宅時や食事前、調理の前後などこまめに手を洗うことが大切だ。
開会の挨拶
宮崎 滋 先生(日本生活習慣病予防協会 理事長)
「一無、二少、三多」とは、
   一無:禁煙  二少:少食、少酒  三多:多動、多休、多接
   1月23日は「一無、二少、三多の日」。

 「一無、二少、三多」は池田義雄・日本生活習慣病予防協会名誉会長が30年以上前から提唱してきた健康標語。

 「一無」は禁煙、「二少」は食事量や飲酒を少なめの腹8分にすること、「三多」は激しい運動でなくてもウォーキングや軽い筋トレなどで身体をできるだけ動かすこと(多動)、休養をとり、個人差があるにしても睡眠を十分にとること(多休)、多くの人や物と接し生活を創造的にすること(多接)をそれぞれ意味している。

 同協会は「一無、二少、三多」を中心に、生活習慣病予防の啓発を行っている。同協会が発足したのは20年前、2月の「全国生活習慣病予防月間」を開始したのが10年前。それ以来、予防月間には講演会を開催し、盛況を博している。

 さらに、1月23日を「一無、二少、三多の日」と定め、普及活動に努めている。将来寝たきりにならず自分の力で活動し、生きがいのある人生を全うするために、ふだんから自分の健康状態をチェックすることが重要だ。

講演1「生活習慣病の効果的な予防策~運動を中心に考える~」
演者:田中喜代次 先生(筑波大学名誉教授)
 田中喜代次先生は、中高年者への健康支援についての研究を長年続けており、とくに運動指導の研究と実践においては第一人者だ。「中高年者こそ筋肉量を維持するために運動が必要です」と強調する。健康期間の長い高齢者の多くは、アクティブシニアとして、運動やスポーツ活動を含む日常生活を積極的に過ごしているという。

 身体が健康であるとともに、1人ひとりが食べる喜びや運動の楽しさを仲間や家族と共有し、人生を楽しみながら心豊かに齢を重ねられるようにするため、「健幸華齢(けんこうかれい)」というという新しい生活スタイルを提唱している。

運動と食事に同時に取り組むと活力年齢が若くなる
 田中研究室の研究成果から開発された、総合的な運動プログラムが「スマートエクササイズ」だ。スマートエクササイズとは、老いを受け入れながら、健幸華齢の達成に向けて、それぞれが日々を楽しみながら主体的に運動を行うこと。運動の種類を4つのカテゴリーに分けて、どのような運動をどのくらい行うかを考えながら実践する。

 「スマートエクササイズ」4つのカテゴリーとは下記の通り――。
  1群 コーディネーション・スポーツ系
     コーディネーション能力(バランス、素早さ、機敏さ)の保持・向上
  2群 レジスタンス系
     筋肉・筋持久力の保持・強化
  3群 ストレッチ・リラクセーション系
     柔軟性・関節可動域の保持・向上、リラクセーション
  4群 有酸素系
     全身持久力の保持・向上

 さらに、「スマートダイエット」は、筑波大学の研究成果から開発された、食習慣の改善を中心とした効果保証のある減量プログラムだ。生活習慣の改善が勧められる人が、3ヵ月のスマートダイエットとスマートエクササイズを行うことで、体重は平均で9kg以上減り、活力年齢も8歳若くなるという。体重や腹囲、血圧や血糖、血中脂質などのメタボリックシンドローム因子の改善でも、確かな効果が確認されている。

がんの予防・改善のためにも運動は必要 フレイルにも対策
 がんの予防・改善のためにも運動は必要だ。筑波大学の研究で、運動を実践している乳がん女性の活力年齢は、健常者と同等か、むしろ若いことが示された。乳がんを発症した女性を対象とした研究で、運動習慣のある女性は、運動習慣のない女性に比べ、活力年齢が7歳若いという結果になった。

 また、要介護や寝たきりの原因となる「フレイル(虚弱)」や「サルコぺニア(筋肉量の減少)」は、加齢による身体機能の低下に加え、筋肉量の減少が大きな要因となっている。筋肉量は何もしなければ加齢とともに減少し続ける。そうなると転倒や骨折リスクが高まり、ADL(日常生活動作)も低下する。

 自分に合った筋力トレーニングを続けることで筋肉量を維持することができる。フレイルやサルコぺニアの対策となり、老化を抑制でき、健幸華齢の実現につながる。

 気を付けなければならないのは、運動やスポーツのみで減量を行おうとすると、筋肉を傷めたり、膝痛や腰痛、疲労骨折、貧血など体を壊してしまう危険性が高まることだ。運動だけでなく、食習慣の改善も合わせて取り組むことが重要だ。食事と運動のバランスは5:5から8:2くらいが目安になる。

 「運動で大切なのは、自分なりに楽しむ工夫を見つけることです。技術を高めるのは理想ですが、それだけにこだわらず、ご自分の体との対話を続けることが必要。健幸華齢の達成に向けて、運動と食事によるスマートな健康増進を続けてほしい」としている。

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
市民公開講演会「多動で生活習慣病・がん予防」
全国生活習慣病予防月間2020

[日時]2020年2月5日(水)
[会場]日比谷コンベンションホール

司会進行
海原純子 先生(日本医科大学 特任教授・日本生活習慣病予防協会 専務理事)

特別講習「インフルエンザ・新型コロナウイルスの予防
和田高士 先生(東京慈恵会医科大学 健康科学 教授・日本生活習慣病予防協会 副理事長)

開会の挨拶
宮崎 滋 先生(日本生活習慣病予防協会 理事長)

講演1「生活習慣病の効果的な予防策~運動を中心に考える~」
演者:田中喜代次 先生(筑波大学名誉教授)

講演2「運動でがん予防」
演者:津金昌一郎 先生(国立がん研究センター社会と健康研究センター センター長)

総合討論
演者:和田高士 先生、田中喜代次 先生、津金昌一郎 先生、村田正弘 先生 座長:宮崎 滋 先生

閉会の挨拶
村田正弘 先生(NPO法人セルフメディケーション推進協議会会長)

共 催
一般社団法人 日本生活習慣病予防協会、公益財団法人 がん集学的治療研究財団、NPO法人 セルフメディケーション推進協議会

後 援
厚生労働省、公益財団法人 健康・体力づくり事業財団、健康日本21推進全国連絡協議会、公益財団法人 日本糖尿病財団、公益財団法人 循環器病研究振興財団、公益社団法人 アルコール健康医学協会、公益財団法人 8020推進財団、一般社団法人 動脈硬化予防啓発センター、一般社団法人 日本肥満学会、一般社団法人 日本肥満症予防協会、一般社団法人 日本サルコペニア・フレイル学会、一般社団法人 日本臨床内科医会、一般社団法人 日本産業保健師会、一般社団法人 日本くすり教育研究所、NPO法人 日本人間ドック健診協会、糖尿病治療研究会、九州ヘルスケア産業推進協議会、日本健康運動研究所 ほか

後 援
サラヤ株式会社、株式会社タニタ、大正製薬株式会社、リボン食品株式会社、森永乳業株式会社

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