ニュース

乳がん検診では超音波検査も追加すべき マンモグラフィの欠点を補い効果的 日本人女性7.6万人を調査

 乳がん検診での超音波検査は、マンモグラフィの弱点である偽陰性(検診でがんを検出できないこと)を補う有力な検査法であることが、日本人女性を対象としたJ-START試験で明らかになった。
 40歳代女性の乳がん検診では、乳房超音波検査を追加するのが望ましいとしている。東北大学などが実施した、7万6,196人の女性が対象のランダム化比較試験の成果。
超音波検査はマンモグラフィの欠点を補う
 東北大学などは、若年女性を対象とした乳がん検診での乳房超音波検査の有効性を検証するために、もっとも質が高いとされるランダム化比較試験(RCT)を7万6,196人の女性の協力を得て実施した。

 その結果、乳房超音波検査がマンモグラフィの偽陰性問題(検診でがんを検出できないこと)を補う有力な検査法であることが明らかになった。

 乳がんの検診法として、乳房超音波検査の導入が期待されているが、その有効性についてはこれまでよく分かっていなかった。今回の報告は、介入群と対照群での「乳房濃度別の感度、特異度解析による超音波検査の評価」を行ったもの。

 超音波検査を用いた乳がん検診に関する大規模RCTは世界初であり、この成果は日本や世界で増え続ける乳がん対策の重要な礎となるとしている。

 研究は、東北大学大学院医学系研究科の大内憲明客員教授らの研究グループによるもの。研究結果は、「JAMA Network Open」にオンライン掲載された。

マンモグラフィと超音波検査の違い

出典:東北大学大学院医学系研究科、2021年
40歳代の日本人女性7万6,196人が研究に協力
 乳がんは女性でもっとも多いがんで、壮年層での死亡率の第1位を占めている。乳がんを早期発見するための対策が求められている。

 マンモグラフィ検診は、乳がんの死亡率を減少する効果が臨床試験で証明され国際的に普及しているが、この検診はとくに乳房濃度の高い(高濃度乳房の)若い女性で精度が低下することが問題となっている。

 一方、超音波検査は乳房濃度に依存せず安価であり、乳がん検診への導入が期待されているが、有効性評価に関する研究は少ない。

 そこで研究グループは、平成18年度に「がん対策のための戦略研究:超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」を提案し採択された。

 この試験の最大の特徴は、日本で実施されていなかった質の高いランダム化比較試験(RCT)を、7万6,196人の40歳代健常女性の協力を得て実施したこと。マンモグラフィ受診群を対照とし、マンモグラフィ検診に超音波検査を加えた群を介入群として、無作為に割り振られた方法で初回とその2年後に同じ検診を受診してもらった。
日本人女性は40歳代で乳がんの罹患率が高い
 これまでの解析で、高濃度乳房だけでなく非高濃度乳房でも、介入群での感度が有意に高く、超音波検査の上乗せ効果が確認された。このことは、従来から指摘されてきた高濃度乳房問題は、「高濃度」対「非高濃度」ではなく、マンモグラフィ検診における偽陰性問題であることを解明したことになる。

 つまり、乳房超音波がマンモグラフィの弱点(エックス線検査に伴う偽陰性)を補う有力な検査法であることが示された。

 「今回の成果は、従来から指摘されてきたマンモグラフィ高濃度乳房問題での解決策のひとつであり、日本のみならず国際社会へ大きなインパクトを与えうるものです。40歳代で乳がんの罹患率の高い日本を含むアジア地域では、とくに重要な成果といえます」と、研究者は述べている。

乳がんは女性でもっとも多いがん 日本人女性は40歳代で乳がんの罹患率が高い

出典:東北大学大学院医学系研究科、2021年

東北大学大学院医学系研究科 乳腺・内分泌外科学
Evaluation of adjunctive ultrasonography for breast cancer detection among women aged 40-49 years with varying breast density undergoing screening mammography: A secondary analysis of a randomized clinical trial(JAMA Network Open 2021年8月18日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年07月28日
日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
2025年07月28日
肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
2025年07月28日
1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
2025年07月28日
【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
2025年07月22日
【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
2025年07月22日
高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
2025年07月18日
日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
2025年07月18日
「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
2025年07月14日
適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
2025年07月14日
暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶