職場における化学物質管理の大転換―「法令準拠型」から「自律管理型」へ
実施体制の確立
(1)化学物質管理者の選任
業種や規模を問わず、リスクアセスメント対象物の製造や取り扱い、譲渡・提供を行う事業場では、「化学物質管理者」の選任が2024年4月以降、義務化される。
化学物質管理者とは、化学物質の管理業務を実施できる能力を有する者を指し、12時間の専門的講習を修了した中から選任することが必須事項となる。
(2)保護具着用管理責任者の選任
前記「化学物質管理体制の見直し」において保護具を使用する事業場では、有効な保護具の選択や使用状況の管理などを適切に行うことのできる「保護具着用管理責任者」の選任が2024年4月以降、義務化される。ただし保護具着用管理責任者については、化学物質管理者のような要件は定められていない。
(3)職長等に対する安全衛生教育が必要となる業種の拡大
事業者は、新たに職務につくこととなった職長等に対して安全衛生教育を行わなければならないとされている。その対象業種に、2023年4月以降は以下の業種が追加される。
- 食料品製造業(うま味調味料製造業と動植物油脂製造業はすでに職長教育の対象)
- 新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業
情報伝達の強化
情報伝達の面では、SDSにおける通知事項の定期的な確認・見直しや、通知事項の拡充などが義務づけられる。
(1)SDS情報の通知方法の柔軟化
これまでSDS情報の通知手段は、①文書の交付、②相手方が承諾した方法の2通りだった。しかし2022年5月31日からは、相手方の承諾を得なくても、通知を容易に確認する方法であれば採用できるようになった。
事前に相手方の承諾を得ずに可能となったのは以下の方法。
- 文書の交付、磁気ディスク・光ディスクその他の記録媒体の交付
- FAX送信、電子メール送信
- 通知事項が記載されたホームページのアドレス、二次元コード等の伝達・閲覧
(2)通知事項の定期確認と更新
SDSの通知事項である「人体に及ぼす作用」について、5年に一度、変更内容の有無を確認し、変更があるときは1年以内に更新し、相手方にも通知することが2023年4月以降、義務化される。
(3)通知事項の拡充
2024年4月以降、SDSの通知事項に新たに「(譲渡提供時に)想定される用途及び当該用途における使用上の注意」が追加。成分含有量の記載方法も従来の10%刻みから「重量パーセント」になる。含有量に幅があるものは、濃度範囲の表記も可能で、「重量パーセントへの換算方法」の記載でも可となった。
そのほか、作業環境管理やばく露防止対策が適切に実施されている場合、2023年4月から健康診断は、6か月以内ごとに1回(通常)から1年以内ごとに1回に緩和される。
一方、作業環境測定結果が第3区分(作業環境濃度が適切でないと判断)の事業場に対しては、2024年4月からはさらに厳しい改善措置が図られることになった。
なお、2024年4月以降、選任が義務化される「化学物質管理者」の専門的講習会は、すでに関係各団体などで開講している。新しい化学物質の管理体制も含めて早めに準備を進めておきたい。
<参考資料>
化学物質による労働災害防止のための新たな規制について(厚生労働省)
職場における化学物質対策について(厚生労働省)
「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」の報告書を公表します(厚生労働省)


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