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エッセンシャルワーカーに焦点を 「社会保障を支える人材の確保」がテーマ~令和4年版厚生労働白書

 厚生労働省はこのほど、令和4年版厚生労働白書を公表した。今回の白書は「社会保障を支える人材の確保」がテーマ。

 新型コロナウイルス感染症から人々の生命と健康を守るため、長期間にわたって尽力しているエッセンシャルワーカーの人たちに焦点をあて、医療・福祉サービスの担い手となる人材確保にどう取り組むべきかを論じている。
医師や看護師など、担い手の養成・確保に関する取り組みの成果

 白書の第一部は「社会保障を支える人材の確保」がテーマ。現役世代が急減していく現状を踏まえ、医療・福祉サービスの提供のあり方や、人材確保に関する対応の方向性について検討している。

 第二部は「現下の政策課題への対応」と題し、「子どもを産み育てやすい環境づくり」や「国民が安心できる持続可能な医療・介護の実現」など、課題ごとに取り巻く背景と取り組みの現状をまとめている。

 このうち第一部では、社会保障を支える人材を取り巻く状況について解説。医療・福祉分野の就業者数は約20年間で410万人増加し、約8人に1人が医療・福祉分野で働いている。一方、20〜64歳の人口は今後20年間で約1,400万人減少する見込みであることから、経済成長と労働参加が進むと仮定しても2040年には医療・福祉分野で96万人が不足する見込みだという。

 白書では、医師や看護師など、個別具体的に担い手の養成・確保に関する取り組み成果を紹介している。
 

 地方公共団体の常勤保健師数は37,130人(2021年5月1日時点)で、前年度より969人増加。国は2020年に発表した「2021年度 地方財政対対策の概要」の中で、新型コロナウイルス感染症への対応をふまえ、保健所の恒常的な人員体制を強化するため、保健所で感染症対応業務に従事する保健師が現行の1.5倍となるよう、2年間で約900人の増員を明らかにしていた。

 また介護保険法や虐待防止関連法の制定などが相次ぎ、保健師の活動分野の多様化・役割の拡大も進んでいる。
 一方、虐待をはじめとする養護相談のほか、保健・障害・非行・育成などの相談も担当する児童相談所の役割も年々、増している。

 2022年度、児童相談所は全国76自治体に228カ所あり、いずれも1999年と比較して約1.3倍の増加。これに伴い児童福祉司数も2021年度のデータで5,168人となり、1999年に比べて約4.2倍も増えた。  

喫緊の課題は医療従事者の勤務環境改善

 第二部「現下の政策課題への対応」では、課題ごとに現状や取り組み状況を説明。このうち「働き方改革の推進などを通じた労働環境の整備など」では、国民が質の高い医療サービスを受けられるよう、医療従事者の勤務環境改善が喫緊の課題としている。

 2014年の改正医療法により、各医療機関がPDCAサイクルを活用し、計画的に医療従事者の勤務環境改善に取り組む仕組み「勤務環境改善マネジメントシステム」が始動。また、医療従事者の勤務環境改善を促進する拠点として、医療勤務環境改善支援センターが全国に設置された。

 これに伴い、「医療勤務環境改善マネジメントシステムに関する指針」と、「医療分野の『雇用の質』向上のための勤務環境改善マネジメントシステム導入の手引き (改訂版)」が出されており、これらを活用して同システムの普及促進が図られている。

労働者の3人に1人が病気を行いながら仕事をしている

 「治療と仕事の両立支援の推進」については、病気を行いながら仕事をしている労働者が、労働人口の約3人に1人を占めると説明。高齢化が進む中で「事業場において、病気を抱えた労働者の治療と仕事の両立への対応が必要となる場面はさらに増えることが予想される」と指摘した。

 対応策として、厚労省は2016年に「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を策定し普及に努めているほか、主治医、会社・産業医、両立支援コーディネーターによるトライアングル型のサポート体制構築を推進。さらに各都道府県労働局に「地域両立支援推進チーム」を設置し、地域の実情に応じた両立支援の促進に取り組んんでいる。

 厚生労働省は今回の白書の内容を踏まえながら、多様な人材の確保や参入促進、イノベーションの推進などで安定的な医療・福祉サービスの提供に取り組み、国民が安心して暮らせる社会の実現を目指していく。

[yoshioka]
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