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「肥満の人は生活がだらしなく自己管理ができない」は誤解 日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
2022年11月29日

日本肥満学会は、「肥満症診療ガイドライン2022」を発刊した。6年ぶりとなる改訂で、肥満と肥満症に関するスティグマの解消を含め、最新の知見が取り入れられた。新たに「高度肥満症」、「小児の肥満と肥満症」、「高齢者の肥満と肥満症」、「肥満症治療薬の適応および評価基準」の章も設けられた。
新たに設けられた「第1章 肥満症治療と日本肥満学会が目指すもの」を一読するだけでも、肥満症の診断と治療、その目標について最新のエッセンスを知ることができる。
成人だけでなく小児や高齢者の肥満にも対応
日本肥満学会は2000年に医療を必要とする肥満である「肥満症」の概念を提唱し、肥満症の診断基準を策定した。それ以後、この概念にそった診療を推奨してきた。このほど6年ぶりにガイドラインを改訂し、「肥満症診療ガイドライン2022」として発刊した。 新たに「高度肥満症」、「小児の肥満と肥満症」、「高齢者の肥満と肥満症」、「肥満症治療薬の適応および評価基準」の章が設けられた。肥満と肥満症に関するスティグマの解消を含め、最新の知見が取り入れられている。 新たに設けられた「第1章 肥満症治療と日本肥満学会が目指すもの」を一読するだけでも、肥満症の診断と治療、その目標について最新のエッセンスを知ることができる(序文と第1章は日本肥満学会サイトで、無料で公開されている)。 2016年以降、小児や高齢者の肥満と肥満症を含め、国内外の知見は増えている。日本でも、高度肥満症を対象とした外科療法(減量・代謝改善手術)が保険収載され、肥満症治療薬の臨床開発も進んでおり、日本の肥満症診療は大きな変化を遂げつつある。 日本糖尿病学会・日本肥満症治療学会・日本肥満学会は2021年に、「日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント」を3学会合同で発表した。 長らく変化に乏しかった薬物療法でも、新たな肥満症治療薬の登場が待たれている。肥満症の治療は、従来はエネルギー制限療法や対症療法にとどまっていたが、病因遺伝子の解明にともない特異的な薬剤介入の道が開かれる可能性も期待されている。肥満と肥満症に対する偏見や誤解にも取り組む
日本人は欧米人に比べ、極端な肥満は少なく、軽度の肥満が多い。しかし、わずかに太っただけでも、2型糖尿病や脂質異常症、心筋梗塞、脳卒中、腎臓病などの発症率は高くなることが知られている。同学会は、内臓脂肪の蓄積が、健康障害をもたらす病態の中心にあるとして、その重要性を一貫して論じている。 肥満に対する保健指導などでは、肥満の原因は必要以上に食習慣などの個人の生活上の要因に帰せられている傾向がみられるとしている。さらに、「自己管理能力が低いから肥満になる」といった偏見も少なくない。 たしかに肥満やメタボの多くは、食事や運動などの生活スタイルの改善により、内臓脂肪がたまるのを防げ改善できることが知られている。しかし、肥満と肥満症の背景には、遺伝(体質)によるものと、環境によるものの両方があり、生育や発達での要因、社会的な要因も影響しているので、個人の努力だけでは対応できなくなるおそれもある。 「スティグマ」とは、特定の事象や属性をもった個人や集団に対する、間違った認識や根拠のない認識にもとづく差別や偏見のこと。 同学会では、「肥満には、社会的スティグマに加え、肥満を自分自身の責任と考える個人的スティグマもあり、医療者と患者のあいだに治療の認識の差がある」と指摘。 こうした肥満に対するスティグマは、心理的負担や社会的不利益をもたらすだけでなく、「自己管理の問題であって、医療を受ける対象ではない」といった誤った理解を引き起こし、適切な治療の機会が奪われるのにつながるとしている。 「"肥満症診療ガイドライン2022"では、肥満症をもつ人の福祉の向上のために肥満学会が目指す社会的な取り組みなどにもふれています。発刊を機に、肥満症の現況と診療の進歩が社会的に広く認知されることを期待しています」と、同学会では述べている。 一般社団法人 日本肥満学会 日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント (日本糖尿病学会)
日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」 目次
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