「誰一人取り残さない」第4期がん対策推進基本計画が閣議決定
がん検診受診率目標60%、デジタル化の推進
非正規雇用者や女性などが受診しやすい環境整備を
具体的に第4期計画の内容をみると、「がん予防」分野では、がん検診受診率の目標をこれまでの50%から60%に引き上げた。
受診率は向上しつつあるが、19年の時点では男性の肺を除くと第3期目標の50%を達成できていない。コロナの影響で、受診者数が1~2割減少したとの報告もある。第4期では、感染症のまん延で一時的に検診の提供体制を縮小しても、状況に応じてすぐに体制や受診行動を回復させられるよう平時から対応を検討することにした。
また、職域におけるがん検診の実施状況を調査するとともに、企業や自治体と連携し、特に非正規雇用者や女性、障害者らが受診しやすい環境整備を進める。
ゲノム医療の推進
「がん医療」分野では、「がんゲノム医療」の推進を大きく打ち出している。がんゲノム医療は、がん組織を調べ、がん遺伝子変異を明らかにして一人ひとりに合わせて治療を進める医療。今後は患者が適切なタイミングで「遺伝子パネル検査」を受け、その結果を踏まえた治療を受けられる体制を整えることを盛り込んだ。
治療薬についても外国では承認されているものの、国内では承認されていない治療薬が増加しており、日本での早期開発を促すなど治験の実施を促進するほか、これまでの制度の見直しを含めた対応策を検討する。
相談支援の強化やアピアランスケアの導入
全国の「がん診療連携拠点病院」などには一定の研修を受けた専門相談員が対応する「がん相談支援センター」がある。がん患者・家族の3人に2人ががん相談支援センターについて知っているものの、実際に利用した人は成人で約14%と少なく、「何を相談する場なのかわからなかった」など課題を抱えていた。
一方で、利用した人の8割以上が「役立った」と答えており、「がんとの共生」分野で重要な役割を担っている。こうした相談支援の存在を周知させ、利用者のアクセス向上を図るためにオンラインを活用した体制整備を進めるとした。
また、患者の心身や社会的な苦痛を和らげる緩和ケアを「がんとの共生」から「がん医療」分野へ移し、診断時からすべての医療従事者が行うこととした。
そのほか「基盤」に新たに「患者・市民参画の推進」と「デジタル化の推進」も明記している。「がんとの共生」分野では、「サバイバーシップ支援」として「就労支援」とともに新たに「アピアランスケア」や「がん診断後の自殺対策」なども取り上げ、その対策の充実を進める。
就労支援の充実 ~「4人に1人は働く世代」~
現在、がんは日本人の2人に1人が罹患する。そのうち4人に1人は、20歳から64歳までの働く世代。今後ますます治療と仕事の両立支援や離職防止、再就職のための就労支援を充実させていくことが強く求められる。
第4期計画では、全てのがん患者が、いつでもどこでも適切な医療や支援を受けられる社会を目指している。働く世代に関わる産業保健スタッフは、がん予防とともに従業員ががんに罹患した時、その従業員や周囲の人とともにがんとしっかり向き合い、その対応や支援に努めたい。
参考資料
がん対策推進基本計画(厚生労働省)
がん対策推進協議会(厚生労働省)
「がん」に関するニュース
- 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月09日
- 子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
- 2024年03月25日
- 【乳がん検診】40歳になったら毎年受けるとリスクは最小限に 乳がん検診は進歩している
- 2024年03月18日
- がん予防で1兆円超の経済負担を軽減 生活スタイルや環境の改善が必要 子宮頸がんはHPVワクチンで予防できる
- 2024年03月05日
- 業態別の健康課題を見える化 「働き世代の健康データブック」を公開 企業の健康経営を支援 協会けんぽ京都支部
- 2024年03月05日
- 【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
- 2024年03月04日
- 中年成人の肥満・メタボの解消にオンラインの保健指導が役立つ 社会的サポートは多ければ多いほど嬉しい
- 2024年02月16日
-
「HPV検査単独法」子宮頸がん検診に4月から導入
厚生労働省「がん検診検討会」より - 2024年02月13日
- 早期の腎臓病の段階から医療費は増加 健診受診者の5.3%が早期慢性腎臓病 就労世代8万人の健診データを分析
- 2024年02月05日
- 大腸がんは早期発見でほぼ100%治療できる 検査や治療は進歩 検診を受けることが大切