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「膝の痛み」に運動が効く 減量して膝への負担を軽減 ウォーキングが膝痛を40%減少

 変形性関節症による膝の痛みを経験する人が増えている。肥満や運動不足なども影響している。

 肥満や過体重の人が、効果的に体重を減らせば、変形性関節症による負担を20%減らせるという研究が発表された。

 ウォーキングをしている人は、していない人に比べて、膝痛が40%少ないことも明らかになった。

日本でも1000万人が変形性関節症による膝痛を経験

 「変形性関節症」は、肥満や加齢などにより生じやすい病気。日本では50歳以上の1,000万人が、変形性関節症による膝痛を経験しているとみられている。

 長年、関節が使用され続けることで、骨の先端にある軟骨が弾力性を失い、すり減り、関節が変形することで痛みが発生すると考えられている。痛みは膝や股関節に発生することが多く、背骨や手指などにも発生する。

 膝関節や股関節に起こる関節症が重症化すると、日常生活をおくるために最低限必要な日常的な動作である日常生活動作(ADL)が低下し、要介護になるリスクの高いロコモ(運動器症候群)の原因にもなる。

 変形性関節症は女性に多く、とくに80歳以上の女性では80%が罹患しているという報告もある。治療法は進歩しているので、早期に整形外科を受診し、予防・治療を行うことが大切になる。

肥満や筋力低下の影響は深刻

 変形性関節症は、世界の30歳以上の成人の15%に影響をもたらしているという調査結果を、米ワシントン大学の保健指標評価研究所(IHME)が発表した。

 高齢化・肥満・人口増加が主な要因だという。変形性関節症は世界で急速に増えており、2020年には5億9,500万人が患っていたとしている。2050年までに10億人近くが発症するだろうと予測している。

 「世界的に寿命が延び、高齢化していることが影響していますが、肥満の人が増えていることも重要な原因となっています」と、同研究所の主任研究員であるジェイミー スタインメッツ氏は言う。

 「肥満や筋力低下は、生活スタイルと深い関係があり、変形性関節症の発症を促す要因になります」としている。

 調査では、1990年には変形性関節症の16%が肥満によるものだったが、2020年には20%に上昇したことが示された。

 肥満や過体重の人は、そうでない人に比べ、歩行しているときの膝関節にかかる負荷が多い。体重が多いほど、日常的にかかる膝関節への負荷も増え、変形性関節症のリスクも上昇する。

 同研究所は今回、世界保健機関(WHO)などの共同研究として実施されている「世界の疾病負担研究2021」の一環として、200ヵ国以上を対象に、1990年~2020年の30年間の変形性関節症に関するデータを分析した。

体重を減らして膝への負担を軽減 運動が効果的

 研究グループは、体格指数(BMI)の高い肥満や過体重の人が、効果的に体重を減らせば、変形性関節症による負担は20%減少するだろうと推定している。

 「肥満にともなう変形性関節症は、運動不足や筋力低下が大きく影響しています」と、ブリティッシュコロンビア大学人口・公衆衛生学部のヤチェク コペック教授は言う。

 「関節痛をもつ人は、痛みをおそれて、座ったまま過ごす時間がますます増え運動不足になり、これが負のサイクルを引き起こしている可能性があります」としている。

 運動を習慣として行うことで、体のエネルギーの摂取量と消費量のバランスが良くなり、減量効果をえられる。心肺機能も向上する。

 運動をすることは、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの予防・改善につながる。それだけでなく、関節痛をもつ人にとっても有益だ。運動をすることで、筋萎縮を改善でき、階段などで転倒しケガをすることも予防できる。

 「1日に座ったまま過ごす時間の長い人は、関節痛を予防・改善するためにも、運動を習慣として行うことを心がけるべきです。運動の安全な方法について、かかりつけの医師などに相談することをお勧めします」と、コペック教授は指摘している。

運動は膝の痛みを軽減する効果的な方法に
ウォーキングが膝痛を40%減少

 米ベイラー医科大学による別の研究では、変形性関節症と診断された50歳以上の人が、ウォーキングなどの運動を行うと、膝の痛みを軽減できることが明らかになっている。

 「ウォーキングなどの運動は、関節内で起こる損傷を遅らせ、頻繁に起こる痛みを軽減する効果的な治療法となる可能性があります」、同大学病院リウマチ科のグレース シャオウェイ ロー氏は言う。

 変形性関節症の損傷と痛みを同時に軽減できる治療法は少ない。ウォーキングなどの運動療法を効果的に行うことが、日常的な膝痛の発症を防ぐのに役立つ可能性が示されたのは大きいとしている。

 研究グループは、米国で実施されたコホート研究である「変形性関節症イニシアチブ」に参加した、50歳以上の男女1,212人のデータを解析した。参加者の73%が、「健康のためにウォーキングをしている」と回答した。

 その結果、ウォーキングをしている人は、していない人に比べて、頻繁に起こる膝痛が40%少ないことが明らかになった。

 「変形性関節症と診断された人は、とくに膝に痛みを毎日感じていない場合は、ウォーキングなどの全身運動に取り組むべきです」と、ロー氏は指摘している。

 「薬や手術による治療は、負担が多く、多額の医療費も必要となるだけでなく、副作用の可能性もあります。しかし、運動は無料で取り組め、副作用も最小限に抑えられます」。

 「痛みの頻度が高い人は、膝への負担を軽減する歩き方などを、かかりつけの医師などにアドバイスしてもらうことをお勧めします」としている。

New study reveals the most common form of arthritis, osteoarthritis, affects 15% of the global population over the age of 30 (ワシントン大学 保健指標評価研究所 2023年8月21日)
Global, regional, and national burden of osteoarthritis, 1990-2020 and projections to 2050: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2021 (Lancet Rheumatology 2023年9月)
Walking towards healthier knees (ベイラー医科大学 2022年6月8日)
Association Between Walking for Exercise and Symptomatic and Structural Progression in Individuals With Knee Osteoarthritis: Data From the Osteoarthritis Initiative Cohort (Arthritis & Rheumatology 2022年6月8日)
[Terahata]
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