大人は6時間以上の睡眠を 厚労省「睡眠指針改訂(案)」公表
年代別に推奨睡眠時間を設定
これらを踏まえ、検討会では「睡眠指針2023(仮称)」案を提示し、①成人、②子ども、③高齢者の区分で推奨事項を公表した。推奨される睡眠時間は次のように設定している。
- 成 人:6時間以上
- 1~2歳児:11~14時間
- 3~5歳児:10~13時間
- 小学生:9~12時間
- 中学・高校生:8~10時間
保健指導実施者などへの参考情報の記載も予定
適正な睡眠時間を確保することも大事だが、睡眠には1日の活動で蓄積した疲労やストレスから回復させる重要な役割があるため「睡眠休養感」(睡眠で休養が取れている感覚)を向上させることも重要である。睡眠休養感は死亡リスクやうつ病などとも関係していることがわかっており、指針にも「睡眠休養感のある睡眠を目指す」ことが盛り込まれる予定だ。
また、改訂案では保健指導実施者等が、睡眠に係る取り組みを推進するにあたって情報(下記)を記載予定としている。
- からだと心の健康のための睡眠について
- 良質な睡眠のための環境づくりについて
- 運動、食事等の生活習慣と睡眠について
- 睡眠と嗜好品について
- 睡眠障害について
- 妊娠・子育てと睡眠健康について
- 就業形態と睡眠の課題について
※コホート研究等からの報告も含まれるため、今後のエビデンスの蓄積により内容が変化する可能性もある
働く世代にとって、睡眠は心身の面とともに経済的にも大きな課題となっている。米国のシンクタンク「ランド研究所」による試算によれば、睡眠不足・睡眠負債による日本の経済損失は15兆円にも達するといわれている。
夜勤業務を含む交代勤務がある事業所も増加傾向にあり、労働人口の減少や人件費削減などに伴う業務過多による超過勤務も増えているという。また、コロナ禍で働き方も変化し、テレワークや在宅勤務なども導入されたが、そのメリットの一方で終業時間の感覚が薄れ、自宅で就寝近くまで業務を続けることもあると聞く。
そのほかスマートフォンの長時間使用、カフェインの含有量が多いエナジードリンクの過剰な摂取、飲酒などの問題も睡眠の質の低下につながっている。
睡眠は個々人の日常生活との関係が深く、しかも現代は働き方やライフスタイルも多様化しているため、一律の対策には限界はある。だが、科学的な知見に基づき、わかりやすい表現での指針を策定し、保健指導実施者などに最新のエビデンスに基づく具体的な参考情報が提供されて、少しでも睡眠の課題が改善されていくことを期待したい。
参考資料
健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会(厚生労働省)
e-健康づくりネット「睡眠」(厚生労働省)
令和5年版過労死等防止対策白書(本文)(厚生労働省)


「産業保健」に関するニュース
- 2025年08月21日
- 令和7年(1月~7月)の自殺者は11,143人 前年同期比で約10%減少(厚生労働省)
- 2025年08月21日
- 歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
- 2025年08月20日
- 育休を「取りたい」若者は7割超 仕事と育児との両立で不安も 共に育てる社会の実現を目指す(厚生労働省)
- 2025年08月13日
-
小規模事業場と地域を支える保健師の役割―地域と職域のはざまをつなぐ支援活動の最前線―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈後編〉 - 2025年08月07日
- 世代別・性別ごとの「総患者数」を比較-「令和5年(2023)の患者調査」の結果より(日本生活習慣病予防協会)
- 2025年08月06日
-
産業保健師の実態と課題が明らかに―メンタルヘルス対応の最前線で奮闘も、非正規・単独配置など構造的課題も―
【日本看護協会「産業保健に関わる保健師等の活動実態調査」】〈前編〉 - 2025年08月05日
-
【インタビュー】2週間のデトックスで生産性が変わる?
大塚製薬の『アルコールチャレンジ』に学ぶ健康経営 - 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由