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コーヒーを飲むと認知症のリスクが減少 心臓病や脳卒中のリスクも低下 飲みすぎにはご注意

 コーヒーを飲む習慣は、認知症の発症リスクの減少と関連しているという調査結果が発表された。

 コーヒーを1日に2~4杯飲んでいる人は、アルツハイマー病の発症リスクが21%低いことが分かった。

 コーヒーを飲んでいる人は、心臓病や脳卒中のリスクが低く、寿命が長い傾向があることも示されている。

コーヒーを飲んでいる人はアルツハイマー病のリスクが低い

 コーヒーをよく飲んでいる人は、アルツハイマー病の発症リスクが低いという調査結果を、韓国の仁済大学などが発表した。

 研究グループは、コーヒーを飲む習慣とアルツハイマー病などの発症との関連を調べた11件の研究を解析。それらは米国・ハワイ・カナダ・イタリア・ポルトガル・日本・スウェーデン・フィンランドの6,121人を対象に調査したもの。

 その結果、コーヒーを1日に1~2杯飲むのを習慣としている人が多かった。さらにコーヒーを1日に2~4杯飲んでいる人は、アルツハイマー病の発症リスクが21%低いことが明らかになった。

 ただし、コーヒーを1日に4杯以上飲んでいる人では、アルツハイマー病の発症リスクは1.04倍とむしろ上昇した。コーヒーを飲みすぎるのも良くないようだ。

 研究は、韓国の仁済大学のデジタルアンチエイジングヘルスケア研究所などのイリン スルタナ ニラ氏らによるもの。研究成果は、「Journal of Lifestyle Medicine」に掲載された。

 研究グループは、コーヒーの摂取によるアルツハイマー病に対する保護効果について、コーヒーに含まれるカフェインやポリフェノールなどの生理活性化合物の影響を指摘している。

カフェインが認知症などに対して予防的に働いている可能性

 英国のアルツハイマー協会(AS)も、コーヒーなどに含まれるカフェインが、軽度認知障害や認知症に対して予防的に働いている可能性を指摘している。カフェインは、コーヒーや茶葉、カカオなどに含まれる天然の成分だ。

 米国のサウスフロリダ大学などが、65歳~88歳の高齢者124人を2~4年間調査した研究では、認知症を発症しなかった人では認知症を発症した人に比べ、血中に2倍の量のカフェインがあることが示された。

 ただし、カフェインが認知症の発症にどのような影響をもたらすのか、詳しいメカニズムは分かっていないという。

 カフェインの過剰摂取が、睡眠障害などを引き起こす危険性についても指摘している。カフェインが大量に含まれるエナジードリンクの飲みすぎにより、中毒死した例も挙げている。

 「コーヒーが認知症にもたらす影響を確かめるために、ランダム化比較試験を実施する必要があります。コーヒーを飲む人と飲まない人に分けて、どのような違いがあるかを長期間にわたり調査する必要がありますが、そうした試験は行われていません」と、同大学アルツハイマー病研究所のチュアンハイ ツァオ氏は言う。

 ツァオ氏は「コーヒーを飲む習慣があり、カフェインを適度にとっている人は、2型糖尿病、脳卒中、乳がんなど、老化にともない発症が増える疾患のリスクが低い傾向もみられます」と指摘。

 マウスを使った実験では、カフェインは、神経を鎮静させる作用をもつアデノシンという物質が結合する受容体に結合し、その働きを阻害することが示されている。そのため、カフェインを摂取すると神経が刺激され、脳が活性化したり、炎症が軽減されやすくなるという。

コーヒーを飲んでいる人は心臓病や脳卒中のリスクが低下

 欧州心臓病学会(ESC)が発表した別の研究では、コーヒーを1日に2~3杯飲んでいる人は、心血管疾患のリスクが低く、寿命が長い傾向があることが示されている。

 「今回の大規模な観察研究で、コーヒーを飲む習慣は、心臓病や脳卒中の心血管疾患の発生リスクや、疾患などの原因による死亡のリスクを減少させることに関連していることが示されました」と、オーストラリアのベーカー心臓病・糖尿病研究所のピーター キスラー教授は言う。

 「UKバイオバンク」は、遺伝的素質や環境因子が健康にもたらす影響を調査している、英国の大規模な前向きコホート研究。

 研究グループは、「UKバイオバンク」に参加した44万9,563人の40歳~69歳の成人を対象に、コーヒーの摂取状況と、不整脈や、冠状動脈性心疾患・うっ血性心不全・虚血性脳卒中などを含む心血管疾患などの発症との関連を調査した。追跡期間の中央値は12.5年だった。

 その結果、コーヒーの摂取は、あらゆる原因による死亡リスクの減少と関連していることが示された。

 期間中に6.2%(2万7,809人)の人が死亡したが、1日にコーヒーを2~3杯飲んでいる人は、コーヒーを飲まない人に比べ、挽いた豆で淹れたコーヒーを飲んでいる人で27%、インスタントコーヒーを飲んでいる人で11%、カフェイン抜きのコーヒーを飲んでいる人で14%、それぞれ死亡リスクが低かった。

 さらに、コーヒーの摂取は、心血管疾患の発症リスクの減少とも関連していることが分かった。

 1日コーヒーを2~3杯飲んでいる人は、心血管疾患のリスクがもっとも低く、挽いた豆のコーヒーで20%、インスタントコーヒーで9%、カフェイン抜きのコーヒーで6%、それぞれ死亡リスクが低かった。

 ただし、カフェインを過剰に摂取すると、中枢神経系が刺激され、めまい・心拍数の増加・興奮・震え・不眠症・吐き気などの健康障害が起こることもあるとしている。コーヒーの飲みすぎにも注意が必要だ。

 欧州食品安全機関(EFSA)は、コーヒーを1日に3~4杯飲む習慣は、ほとんどの成人にとって安全としている。3~4杯のコーヒーに、カフェインはおよそ400mg含まれる。

Effect of Daily Coffee Consumption on the Risk of Alzheimer's Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis (コーヒー科学情報研究所 2023年12月6日)
Effect of Daily Coffee Consumption on the Risk of Alzheimer's Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis (Journal of Lifestyle Medicine 2023年8月31日)
Caffeine and dementia (アルツハイマー協会 2023年3月8日)
High blood caffeine levels in older adults linked to avoidance of Alzheimer's disease, USF-UM study reports (サウスフロリダ大学 2012年6月4日)
High Blood Caffeine Levels in MCI Linked to Lack of Progression to Dementia (Journal of Alzheimer's Disease 2012年6月4日)
Does coffee help or harm your heart? (ハーバード大学医学部 2023年8月1日)
Coffee drinking is associated with increased longevity (欧州心臓病学会 2022年9月27日)
The impact of coffee subtypes on incident cardiovascular disease, arrhythmias, and mortality: long-term outcomes from the UK Biobank (European Journal of Preventive Cardiology 2022年9月27日)
[Terahata]
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