国内初の「飲酒ガイドライン」を公表
アルコール関連問題への、国民一人ひとりの関心と理解を深めるねらい
飲酒量と健康リスク
国の健康づくり計画『健康日本21(第3次)』では、生活習慣病リスクが高まるとされる純アルコール量「1日当たり男性40グラム以上、女性20グラム以上」飲む人を減らすことを目標にし、男女合わせた全体の目標値を10%と設定した。
近年、「飲酒量(純アルコール量)が少ないほど、飲酒によるリスクが少なくなる」という報告もあり、ガイドラインでは飲酒量をできるだけ少なくするよう訴えている。
また、ガイドラインには、純アルコール量と疾患などの発症リスクの関連について参考資料として下記が付載されている。
「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」P.6 より
ほかにも、飲酒に伴うさまざまな危険を避け、健康に配慮して飲酒するには、下記を留意することが重要と呼びかけている。
- 自らの飲酒状況等を把握する
- あらかじめ量を決めて飲酒をする
- 飲酒前または飲酒中に食事をとる
- 飲酒の合間に水(または炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする
- 一週間のうち、飲酒をしない日を設ける
また、避けるべき飲酒等については、下記の5つを示している。
- 一時多量飲酒(特に短時間の多量飲酒)
- 他人への飲酒の強要等
- 不安や不眠を解消するための飲酒
- 病気等療養中の飲酒や服薬後の飲酒
- 飲酒中または飲酒後における運動・入浴などの体に負担のかかる行動
厚労省は、今後リーフレットなどを作成し、国民に周知していく予定だ。
保健指導でもガイドラインの活用を
職場でのアルコール関連問題を抱える産業保健スタッフも多いと聞く。新型コロナウイルス感染症が「5類感染症」になり、久しぶりの花見や歓送迎会も近づく季節である。
不適切な飲酒は、健康障害や問題行動、長期飲酒によるアルコール依存症などさまざまな問題を引き起こす。とはいえ、ガイドラインの趣旨でも「お酒は、その伝統と文化が国民の生活に深く浸透している」と記載されており、アルコールに対してリスク面ばかり強調するのではなく、自分自身で「適切なお酒の量」を知って、うまく付き合うことが肝要だろう。
本ガイドラインをきっかけに、保健指導などを行う際に、従業員に対して自分の適切な飲酒量の指標として「純アルコール量」を活用してはいかがだろうか。たとえば、疾病発症等のリスクを避けるために、具体的な目標設定を行うなど自身の健康管理にも活用できることを紹介し、「自分の健康は自分で守る」という意識を浸透させる契機作りに役立つはずである。
参考資料
飲酒ガイドライン作成検討会(厚生労働省)
アルコール健康障害対策(厚生労働省)
アルコール健康障害対策関係者会議(アルコール健康障害対策関係者会議)(厚生労働省)
保健指導リソースガイドでは、特集ページ「アルコールと保健指導」を公開中です。
「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」の検討委員を務めた吉本 尚先生(筑波大学)へのインタビューや、アルコール性肝障害の受診勧奨目安を「ALT>30」と示した「奈良宣言2023」の紹介など、保健指導現場で役立つアルコールに関する情報を掲載しています。
「超」簡易減酒支援(ウルトラブリーフインターベンション)を実施するための資料など、指導で役立つツールも公開していますので、ぜひご活用ください。


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