地方公務員のメンタルヘルス対策、計画的・継続的に実施する3つのポイントとは

一般財団法人 地方公務員安全衛生推進協会はこのほど、地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会(座長・大杉覚 東京都立大学法学部教授)がまとめた調査結果等の報告書を公開した。
地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員の健康状況等の現況調査」によると、令和4年度の「精神及び行動の障害による長期病休者率(10万人率)」は2,142.5人で、10年前の平成 24年度と比較して約1.8倍増加している。
そのため同協会は総務省と連携し、令和3年度から地方公共団体のメンタルヘルス対策について研究会で調査研究を行っている。
令和4年度には「メンタルヘルス対策に関する計画(例)」を作成。令和5年度は「地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会」と名称変更し、地方公共団体のメンタルヘルス対策についてさらなる実態把握と計画策定支援を目的に調査研究を実施した。
今回は秋田県、兵庫県、高知県で地方公共団体参加型の研究会も開催し、さまざまな意見交換もしている。
現地開催前に実施した事前アンケートによると、メンタルヘルス対策に関する計画を策定している団体は3県内の100団体中17団体。これらの団体の多くは策定時、職場内産業保健スタッフに計画に盛り込む内容や推進体制について相談していた。
また計画策定によって、関係者の連携強化や定期的な見直しの実施、管理監督者の意識変化などの効果や変化があったと回答している。一方で、計画策定で直ちに休務者の減少につながるわけではない、といった計画策定の留意点も改めて浮かび上がった。
3県内100団体のメンタルヘルス対策について調査した結果を見ると、約9割で一次から三次まで各予防段階別の取り組みは実施されていた。
「一次予防」とはメンタルヘルス不調を未然に防止すること、「二次予防」とはメンタルヘルス不調を早期に発見して適切に措置を行うこと、「三次予防」とはメンタルヘルス不調者の円滑な職場復帰・再発防止等の支援を行うことを言う。
詳細を見ると、所属職員数が多い団体ほど多くの取り組みを実施。また計画策定状況別では、策定済み団体の方が多くの取り組みを実施していた。
3県の現地開催で出た意見や課題をふまえ、研究会では計画的・継続的なメンタルヘルス対策に向けた対応策を3つのポイントでまとめている。
第1に「地方公共団体自ら、計画策定が必要だと思う『動機づけ』が必要」だという点。
まずは組織におけるメンタルヘルスの現状を把握し、計画の必要性について地方公共団体自身が認識する。計画策定は任意だが、策定の過程において課題認識や当事者意識が深まる。実際に職員がメンタルヘルス不調に陥った際には迅速な対応で、安心して働ける職場づくりにつなげられる、としている。
第2のポイントは「『産業医』等の専門家に相談できる体制・関係性の構築」。
計画策定済みの団体からは、産業医の協力が重要だったという意見がある。そのため職場巡視や新規採用面談といった機会を通し、産業医に「日常的に職員に関心を向けてもらうような工夫をすることが有効」としている。また産業医以外の相談先を検討することも勧めている。
第3のポイントは「取組の連動性・見える化による計画的・継続的な対策の推進」で、職員にとってわかりやすく、身近な取り組みとなるよう情報提供や周知に努めるよう促している。
報告書では、さまざまな課題は「職場の人間関係が非常に密接に関係している」とし、部長や課長といった管理監督者がいつもと違う部下の様子に気づき、必要な対策を行う「ラインケア」の重要性を指摘。一方で管理監督者自身のメンタルヘルス対策も必要だと言及した。
これらの課題の解決には従業員支援プログラム(EAP:Employee Assistance Program)業者の活用や、近隣の医療機関や大学などの専門機関との連携、近隣の地方公共団体との情報共有なども有効だとしている。
またメンタルヘルス対策を計画的に継続して進めるためには、実情に応じた計画のアレンジや、PDCAサイクルを実行的に進める評価指標についての詳しい検討なども必要だとした。
令和5年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会報告書(地方公務員安全衛生推進協会)令和5年度 地方公務員のメンタルヘルス対策の推進に関する研究会 報告書


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