ニュース
果物はメンタルヘルス改善に有用 中年期に果物を食べるとうつ病リスクが減少 果物の上手な食べ方
2024年07月29日

中年期に果物を多く食べていた人は、老年期にうつ病になる可能性が低いことが、大規模な調査で明らかになった。
果物に含まれるビタミンC、カロテノイド、フラボノイドなどの栄養が、体内の酸化ストレスを軽減し、炎症を抑制することが影響しているとみられている。
果物のなかには糖質が多く含まれるものがあるので、肥満や糖尿病のリスクの高い人には、血糖値を上げにくい、グリセミック指数(GI)の低い果物を選ぶことを勧めている。
果物を食べている人はうつ病が少ない
中年期に果物を多く食べていた人は、老年期にうつ病になる可能性が低いことが、1万3,000人以上を20年近くにわたり調査した大規模コホート研究で明らかになった。 果物を1日に毎食食べていた人は、1日1回未満しか食べない人に比べて、加齢にともなううつ病の発症が21%以上少ないことが示された。 研究は、シンガポール国立大学などによるもの。「加齢にともなううつ病の予防策として、果物の摂取が重要であることが分かりました。果物を1日に1~2回食べることで達成できます」と、同大学の健康長寿トランスレーショナル研究プログラムのコー ウン プアイ教授は言う。 なお、果物のなかには糖質が多く含まれるものがあるので、肥満や糖尿病のリスクの高い人には、血糖値を上げにくい、グリセミック指数(GI)の低い果物を選ぶことを勧めている。果物のポリフェノールなどの栄養に抗酸化や抗炎症の作用が
研究グループは今回、「シンガポール中国人健康研究」に参加した1万3,738人を対象に、中年期から老年期まで約20年にわたる追跡調査を実施した。 シンガポールでもっとも一般的に利用されている14種類の果物[オレンジ、ミカン、バナナ、パパイヤ、スイカ、リンゴ、ハニーメロンなど]の摂取について調べたところ、ほとんどの果物はうつ病の可能性の低下と関連していることが明らかになった。 この関連性は、果物にビタミンC、カロテノイド、フラボノイドなどの抗酸化や抗炎症の作用のある栄養素が多く含まれることで説明できるとしている。 これらの栄養素は、酸化ストレスを軽減し、うつ病の発症に影響をもたらす体内の炎症プロセスを抑制すると考えられている。高齢者の健康を守るためにうつ病の予防対策は重要

果物を食べやすくする環境整備が必要
「40~65歳の中年期に果物を食べることを奨励すると、65歳を超えた後期成人期のメンタルヘルスに長期的な利益をもたらされる可能性があります」と、コー教授は指摘する。 「果物を多くの人がもっと食べやすくする公衆衛生教育や取り組みを行い、その他の食事要因や、睡眠や喫煙なども含めて、変更可能な行動要因と高齢者のメンタルヘルスとの関連をさらに調べる必要があります」としている。 なお研究グループは、参加者の平均年齢が51歳だったときに、14種類の果物と25種類の野菜の摂取状況について、食事アンケート調査を実施し、参加者の平均年齢が73歳になったときに、老年うつ病スケールを使用した標準的なテストを行い、うつ病の症状を調べ、5つ以上の症状のある23.1%の参加者がうつ病と判定された。肥満や糖尿病のリスクの高い人には低GIの食品を
果物は血糖値を上げにくい低GI食品
果物は、糖質が含まれるが、ビタミン・ミネラル・食物繊維も含まれる、血糖値を上げにくい低GI食品だ。GI(グリセミック インデックス)は、糖質を含む食品を食べた場合の食後の血糖上昇を示す指標。
果物のなかには糖質が多く含まれるものがあるので、肥満や糖尿病のリスクの高い人は、GI値の低い果物を選ぶことが勧められている。
キウイ、ベリー、イチゴ、サクランボ、リンゴ、オレンジ、グレープフルーツなどの果物をまるごと食べると、含まれる糖質の量が比較的少なくGI値は低い。ただし、品種によっては糖質の多いものもあるので注意が必要となるとしている。
糖質をとりすぎると、体重や中性脂肪が増えるおそれがある。健康に良いからといって、「野菜を食べる代わりに果物を食べる」というのは避けた方が良さそうだ。
肥満や糖尿病のリスクのある人は、1日に80kcal程度を食べることが勧められている。リンゴは1/2個、バナナは1本、ミカンは2~3個がおよそ80kcalだ。
欧米の糖尿病の人を対象とした研究では、果物を、1日に90g未満食べていると血糖管理が改善し、100g未満食べていると、体重増加や中性脂肪の上昇はみられないことが示されている。
野菜や果物を食べるときは、皮を剥かずに全部食べる、根や葉がついている野菜を活用するなど、「ホールフード」が勧められている。
缶詰の果物を選ぶときは、「果汁がそのままパックされている」「無糖」「砂糖不使用」といった表示があるものを選ぶと良い。
果物は血糖値を上げにくい低GI食品
Association between consumption of fruits and vegetables in midlife and depressive symptoms in late life: the Singapore Chinese Health Study (Journal of nutrition, health and aging June 2024年6月)
What are the best fruit choices for diabetes? (米国糖尿病学会)
Fruit and diabetes (英国糖尿病学会)
Fructose consumption and consequences for glycation, plasma triacylglycerol, and body weight: meta-analyses and meta-regression models of intervention studies (American Journal of Clinical Nutrition 2008年11月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
- 2025年07月28日
- 【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月22日
- 高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?