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中年期に果物を食べるとうつ病リスクが減少 果物はメンタルヘルス改善に有用 果物の上手な食べ方

 中年期に果物を多く食べていた人は、老年期にうつ病になる可能性が低いことが、大規模な調査で明らかになった。

 果物に含まれるビタミンC、カロテノイド、フラボノイドなどの栄養が、体内の酸化ストレスを軽減し、炎症を抑制することが影響しているとみられている。

 果物のなかには糖質が多く含まれるものがあるので、肥満や糖尿病のリスクの高い人には、血糖値を上げにくい、グリセミック指数(GI)の低い果物を選ぶことを勧めている。

果物を食べている人はうつ病が少ない

 中年期に果物を多く食べていた人は、老年期にうつ病になる可能性が低いことが、1万3,000人以上を20年近くにわたり調査した大規模コホート研究で明らかになった。

 果物を1日に毎食食べていた人は、1日1回未満しか食べない人に比べて、加齢にともなううつ病の発症が21%以上少ないことが示された。

 研究は、シンガポール国立大学などによるもの。「加齢にともなううつ病の予防策として、果物の摂取が重要であることが分かりました。果物を1日に1~2回食べることで達成できます」と、同大学の健康長寿トランスレーショナル研究プログラムのコー ウン プアイ教授は言う。

 なお、果物のなかには糖質が多く含まれるものがあるので、肥満や糖尿病のリスクの高い人には、血糖値を上げにくい、グリセミック指数(GI)の低い果物を選ぶことを勧めている。

果物のポリフェノールなどの栄養に抗酸化や抗炎症の作用が

 研究グループは今回、「シンガポール中国人健康研究」に参加した1万3,738人を対象に、中年期から老年期まで約20年にわたる追跡調査を実施した。

 シンガポールでもっとも一般的に利用されている14種類の果物[オレンジ、ミカン、バナナ、パパイヤ、スイカ、リンゴ、ハニーメロン]の摂取について調べたところ、ほとんどの果物はうつ病の可能性の低下と関連していることが明らかになった。

 この関連性は、果物にビタミンC、カロテノイド、フラボノイドなどの抗酸化や抗炎症の作用のある栄養素が多く含まれることで説明できるとしている。

 これらの栄養素は、酸化ストレスを軽減し、うつ病の発症に影響をもたらす体内の炎症プロセスを抑制すると考えられている。

高齢者の健康を守るためにうつ病の予防対策は重要

 「今回の研究の目的は、中年期の果物と野菜の摂取と老年期のうつ症状のリスクとの関係を調べることでした。その結果、果物を十分に食べることで、老後のうつ病のリスクを減少する潜在的なベネフィットを得られることが示されました」と、コー教授は言う。

 過去の研究でも、果物や野菜の摂取とうつリスクの関連性が調査されているが、結果には一貫性がなく、その多くは欧米人を対象としたものだ。今回の研究は、アジア人を対象としたポピュレーションベースの研究としては最大規模のものだという。

 世界中で高齢化が急速に進んでおり、高齢者では気分の落ち込み、喜びの欠如、認知処理の遅れ、意欲の低下など、うつ病症状の有病率が増加している。食欲不振、不眠、集中力の低下、疲労の増加などをともなうことも多い。

 これには、加齢にともなう脳の神経変性変化が関連している。高齢者の健康を維持するために、老年期のうつ病を予防するためのアプローチが必要とされている。

果物を食べやすくする環境整備が必要

 「40~65歳の中年期に果物の食べることを奨励すると、65歳を超えた後期成人期のメンタルヘルスに長期的な利益をもたらされる可能性があります」と、コー教授は指摘する。

 「果物を多くの人がもっと食べやすくする公衆衛生教育や取り組みを行い、その他の食事要因や、睡眠や喫煙なども含めて、変更可能な行動要因と高齢者のメンタルヘルスとの関連をさらに調べる必要があります」としている。

 なお研究グループは、参加者の平均年齢が51歳だったときに、14種類の果物と25種類の野菜の摂取状況について、食事アンケート調査を実施し、参加者の平均年齢が73歳になったときに、老年うつ病スケールを使用した標準的なテストを行い、うつ病の症状を調べ、5つ以上の症状のある23.1%の参加者がうつ病と判定された。

肥満や糖尿病のリスクの高い人には低GIの食品を
果物は血糖値を上げにくい低GI食品

 果物のなかには糖質が多く含まれるものがあるので、肥満や糖尿病のリスクの高い人には、血糖値を上げにくい、グリセミック指数(GI)の低い果物を選ぶことが勧められている。

 果物は、糖質が含まれるが、ビタミン・ミネラル・食物繊維も含まれる、血糖値を上げにくい低GI食品だ。GI(グリセミック インデックス)は、糖質を含む食品を食べた場合の食後の血糖上昇を示す指標。

 ただし、果物のなかには果糖が多く含まれるものがあり、そうした果物を食べすぎると、体重や中性脂肪が増加するおそれがあるという。

 健康に良いからといって、「野菜を食べる代わりに果物を食べる」というのは避けた方が良さそうだ。

 肥満や糖尿病のリスクのある人は、果物はなるべく糖質の少ないものを選び、1日に80kcal程度を食べることが勧められている。リンゴは1/2個、バナナは1本、ミカンは2~3個がおよそ80kcalだ。

 欧米の糖尿病の人を対象とした研究では、果物を1日に90 g未満を食べていると、血糖管理が改善し、100 g未満を食べていると、体重増加や中性脂肪の上昇はみられないことが示されている。

 野菜や果物を食べるときは、皮を剥かずに全部食べる、根や葉がついている野菜を活用するなど、「ホールフード」が勧められている。

 缶詰の果物を選ぶときは、「果汁がそのままパックされている」「無糖」「砂糖不使用」といった表示があるものを選ぶと良い。

Boosting fruit intake during midlife can ward off late-life blues: NUS study (シンガポール国立大学 2024年7月22日)
Association between consumption of fruits and vegetables in midlife and depressive symptoms in late life: the Singapore Chinese Health Study (Journal of nutrition, health and aging June 2024年6月)
What are the best fruit choices for diabetes? (米国糖尿病学会)
Fruit and diabetes (英国糖尿病学会)
Fructose consumption and consequences for glycation, plasma triacylglycerol, and body weight: meta-analyses and meta-regression models of intervention studies (American Journal of Clinical Nutrition 2008年11月)
[Terahata]
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