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【新型コロナ】コロナ後遺症で54%に就労への影響が 経済状況や生活の質に影響 職場の理解が必要
2024年08月05日

新型コロナ感染後の後遺症として、就労へ影響するほどの症状のある人が過半数に上ることが、岡山大学の調査で明らかになった。
新型コロナが感染症法上の5類に移行してから1年以上が経過したが、回復後も長引く症状のために、仕事や生活に支障をきたしている人は多いことが示された。
「コロナ後遺症からの回復には時間がかかることがあり、社会の理解が重要と考えられます」と、研究者は述べている。
コロナ後遺症 54%に就労への影響が
新型コロナは、回復後も倦怠感などの症状が長引くことがあり、「コロナ後遺症」と言われている。 岡山大学は、同大学病院のコロナ後遺症外来(コロナ・アフターケア外来)を受診した患者のなかで、働いている人の労働状況の変化について調査した。 その結果、受診した人のうち、54%に何らかの就労への影響があったことが明らかになった。 なかでも若年者・高齢者では、新型コロナの後遺症の影響として、退職率が高い傾向があるという。 「新型コロナ感染後の後遺症として、倦怠感などの長引く症状が、患者さんの日常生活に大きな影響を与えています。就労状況に影響した患者さんでは、倦怠感・不眠・頭痛・呼吸困難感などの症状が多くみられました」と、研究者は述べている。 「今回の調査で、患者さんの雇用状況や経済状態にも影響が大きいことが分かりました。症状回復のためには適切な療養期間をとることが大切であり、社会の理解が重要と考えられます」としている。 研究は、岡山大学病院総合内科・総合診療科の松田祐依氏と、学術研究院医歯薬学域(医)総合内科学の大塚文男教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Medicine」に掲載された。
コロナ後遺症外来を受診した人の54%に就労への影響が
休職・退職・時短勤務も
休職・退職・時短勤務も

出典:岡山大学、2024年
関連情報
若年者、高齢者では退職率が高い傾向が
同大学病院のコロナ・アフターケア外来では、2021年2月15日の開設からこれまでに1,000人を超える新型コロナ後遺症患者を診療している。 研究グループは今回、コロナ後遺症を疑われて同院のコロナ・アフターケア外来を受診した患者のうち、雇用されている人の就労状況の変化を調査した。 2021年2月~2023年12月に、外来を受診した新型コロナ罹患後症状(コロナ後遺症)のある患者846人のうち、就労に関連する年齢層(18歳以上65歳未満)の692人を対象に、非雇用者などを除外した545人の雇用されている後遺症患者の労働状況の変化を調査した。 その結果、雇用されている後遺症のある患者のうち、54%にあたる295人で、就労への影響がみられた。 その内訳は、▼休職(1ヵ月以上の休職) 220人、退職(休職期間によらず退職) 53人、▼時短勤務 22人だった。 就労への影響は女性で多く、若年者、高齢者では退職率が高い傾向がみられた。雇用状況に影響のあった後遺症患者では、倦怠感、不眠、頭痛、呼吸困難感の症状が多くみられた。倦怠感・不眠の症状が多い 周囲や職場からの理解が必要
岡山大学病院のコロナ・アフターケア外来では、総合内科・総合診療科の医師が複数人で患者を担当しており、患者の症状を聞き、その症状が生活や仕事へ与える影響も考慮して診療にあたっているという。 「雇用されているコロナ後遺症患者さんのうち、過半数の54%で雇用状況に変化があり、その内訳は休職がもっとも多く、次いで退職、時短勤務の順になりました」と、研究者は述べている。 雇用状況の変化は、デルタ株期に感染した後遺症と比べ、オミクロン株期の感染による後遺症で58%と増加し、雇用に影響した患者の64%で収入が減少していたという。 雇用状況に影響のあった後遺症患者では、とくに倦怠感・不眠の症状が有意に多く、生活の質の悪化、うつ状態の悪化に関与していた。 「新型コロナ後遺症の治療には、いまだ特効薬がなく、症状を緩和する対症療法を手探りで行っています。今回の研究から、患者さんの雇用状況や経済状態にも影響が大きいことが分かりました」と、大塚教授は述べている。 「後遺症による雇用の変化は、経済状況や患者さんの生活の質にも影響します。コロナ後遺症からの回復には時間がかかることがあり、周囲の理解、とくに職場からの理解が重要と考えられます」としている。 岡山大学病院 総合内科・総合診療科/感染症内科岡山大学学術研究院医歯薬学域 総合内科学
Changes in Working Situations of Employed Long COVID Patients: Retrospective Study in Japanese Outpatient Clinic (Journal of Clinical Medicine 2024年6月28日)
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