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「尿ナトカリ比」で塩分と野菜のバランスがわかる 食事を改善し高血圧に対策 健診などで安価・簡便に測定できる 保健指導に活用

 「尿ナトカリ比」は、塩分(ナトリウム)と野菜(カリウム)摂取のバランスをあらわす指標。日本高血圧学会は、高血圧の予防・対策のために、減塩と、野菜などの摂取増加を勧奨している。

 同学会のワーキンググループは、「尿ナトカリ比」が血圧値と関連していることを明らかにし、その目標値と評価方法を示した。

 地域の健康診断で測定し、その場で測定結果を返して、減塩とカリウム摂取の増加についての保健指導を行い、尿ナトカリ比と血圧値の改善が得られた例は増えている。

 「尿ナトカリ比は、日本全国の健診などで安価かつ簡便に測定可能です。減塩とカリウム摂取増加の指標として、高血圧の予防と管理、脳卒中、心臓病、腎臓病の予防に活用されることを期待しています」と、同学会では述べている。

高血圧対策では塩分と野菜のバランスが大切

 食塩のとりすぎは高血圧の原因になるが、野菜や果物などに含まれるカリウムを摂取することで、血圧の上昇を抑えられることが知られている。

 カリウムは、腎臓でナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄をうながし、血圧を下げる働きもする。

 日本高血圧学会のガイドラインでは、高血圧予防のために、減塩(ナトリウム)と、野菜や果物(カリウム)の摂取増加を勧奨している。

 そこで考案されたのが、塩分(ナトリウム)と野菜(カリウム)摂取のバランスをあらわす指標である「尿ナトリウム/カリウム比[尿ナトカリ比]」。

 この値が高いと、食事中の塩分が多い、あるいは野菜などが少なくカリウムが不足していることが分かる。逆に値が低いと塩分摂取量が少なく、野菜などのカリウムを多くとっていることが分かる。

自治体の検診やイベントにおける尿ナトカリ比測定の実施
一般社団法人 ナトカリ普及協会が公開しているビデオ

特定健診で尿ナトカリ比を測定しその場で情報提供

 東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)は、この尿ナトカリ比を用いた試験を行った。これは、東北大学産学連携機構イノベーション戦略推進センター革新的イノベーション研究プロジェクト(COI東北拠点)と、宮城県登米市との共同研究によるもの。

 研究グループは、宮城県登米市の2017・2018年度の特定健診の参加者約1万3,000人について、尿中のナトカリ比を収縮期血圧のデータとともに解析した。特定健診会場で尿ナトカリ比を測定し、その場で健診受診者に、測定結果と尿ナトカリ比に関する情報を提供した。

 その結果、尿ナトカリ比の低下は、体格や飲酒量の変化と独立して、収縮期血圧の変化と有意な関連を示したことが分かった。

 また、高血圧に影響を与える要因とされる体格や飲酒量が2年間で変化しなかったにもかかわらず、初年度と比べて2年目で尿ナトカリ比や収縮期血圧値が有意に低下したことも明らかになった。

関連情報

尿ナトカリ比の目標値と評価方法を提唱 高血圧学会

 日本高血圧学会のワーキンググループはこのほど、「尿ナトリウム/カリウム比(尿ナトカリ比)」が、血圧値とのあいだに連続した正の関連があり、ナトリウムやカリウムを単独でみるよりも、より強く血圧高値と関連していることを明らかにした。

 そこで、健常日本人における目標値として、「日本人の食事摂取基準」の食塩とカリウムの摂取目標量に相当する「2未満」を至適目標に、日本人の平均値未満に相当する「4未満」を実現可能目標に設定することを提唱するコンセンサスステートメントを発表した。

 さらに、随時尿を用いて尿ナトカリ比を測定する場合、「週に4日以上、異なる時間帯に採取した尿の測定値から平均を算出する」ことを強く推奨している。

出典:日本高血圧学会、2024年

地域の健診で尿ナトカリ比を活用 血圧値が改善

 健康診断などで単回の随時尿で評価する場合には、起床後第2尿(午前9時頃の尿)を用いることが望ましい可能性がある。

 地域の健康診断などで尿ナトカリ比測定器を用いて、随時尿ナトカリ比を測定し、その場で測定結果を返して、減塩とカリウム摂取の増加についての保健指導を行い、尿ナトカリ比と血圧値の低下が得られた例は増えている。

 健康診断時での随時尿ナトカリ比測定と保健指導の併用が減塩や血圧コントロールに有効と考えられている。

尿ナトカリ比を活用すれば手軽に減塩に取り組める

 保健指導で食事について「しょっぱいものを食べ過ぎると、塩分の摂り過ぎにつながるので気をつけて」「ラーメンの汁を全部飲むと、塩分のとりすぎになる」などと指導することは多い。しかし実際には、塩分を気にして毎度の食事をとるのはなかなか難しい。

 尿ナトカリ比の目標値と適切な評価方法が明らかになったことで、多くの人が食事の振り返りができるようになり、手軽に減塩に取り組むことができるようになると期待される。

 「尿ナトカリ比は、日本全国の健診・医療機関で安価かつ簡便に測定可能です。減塩とカリウム摂取増加の指標として、高血圧の予防と管理、脳卒中、心臓病、腎臓病の予防に活用されることを期待しています」と、同学会では述べている。

東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)
Sodium/potassium ratio change was associated with blood pressure change: possibility of population approach for sodium/potassium ratio reduction in health checkup(Hypertension Research 2020年8月17日)

Practical use and target value of urine sodium-to-potassium ratio in assessment of hypertension risk for Japanese: Consensus Statement by the Japanese Society of Hypertension Working Group on Urine Sodium-to-Potassium Ratio (Hypertension Research 2024年10月8日)

特定非営利活動法人 日本高血圧学会
スポット尿による食塩・カリウム摂取量推定ツール
監修:日本高血圧学会 減塩・栄養委員会
[Terahata]
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