ニュース
休日の寝過ぎが体調不良の原因に 休日明けの「社会的時差ぼけ」を解消
2016年01月06日

土曜日や日曜日、年末年始にゆっくり休んだはずなのに、勤務日に体がだるいと感じることはないだろうか? それは「社会的時差ぼけ」のせいかもしれない。
社会的時差ぼけは体調不良だけでなく、肥満や糖尿病などの発症リスクも上昇させる。解消するために日常生活で工夫することが大切だ。
社会的時差ぼけは体調不良だけでなく、肥満や糖尿病などの発症リスクも上昇させる。解消するために日常生活で工夫することが大切だ。
週末のたった2日の朝寝坊が体調不良の原因に
仕事のある平日に定刻に起きていても、休日は遅くまで寝ている習慣のある人は、疲れが思ったようにとれないおそれがある。それどころか、睡眠習慣の乱れによって体内時計が狂い、肥満や2型糖尿病、心臓病の発症リスクが高まる可能性がある。
睡眠や体温、血圧、ホルモン分泌など体の基本的な機能はおよそ24時間のリズムを示す。この1日周期のリズムは「概日リズム」と呼ばれる。概日リズムを調整している「体内時計」は、生活習慣から大きな影響を受けている。
不規則な生活などが原因で、体内時計と生活時間との間にずれが生じるのが「社会的時差ぼけ」(ソーシャル ジェットラグ)だ。
「平日は規則正しい生活をおくっていても、週末に夜更かしや朝寝坊をして就床時刻や起床時刻がずれると、それをきっかけに体内時計が乱れ、時差ボケのような症状を招くことがあります。これが"社会的時差ぼけ"で、睡眠医療の研究者に注目されています」と、米国のピッツバーグ大学心理学部のパトリシア ウォン氏は言う。
社会的時差ぼけは肥満や糖尿病、心臓の発症リスクを高める
ウォン氏ら研究チームは、自宅外で週25時間以上働く30~54歳(平均年齢42.7歳)の男女447人を対象に実験を行った。参加者に腕時計型の活動量計を1日中身に付けてもらい、睡眠時間と活動時間を記録し、運動や食生活に関するアンケートにも回答してもらった。
その結果、参加者のほとんど(85%)は、平日より休日の睡眠時間が長かった。平日と休日で睡眠時間の差が大きい人では、体格指数(BMI)が高く、ウエスト周囲径が大きく、コレステロール値も高い傾向がみられた。
さらに糖尿病予備群と判定された人も多かった。血糖を下げるインスリンの空腹時の値が高く、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性が起きている人の割合が高かった。
「社会的時差ぼけは肥満や糖尿病、心臓の発症リスクを高めることが明らかになりました。週末だけの生活リズムの乱れと軽く考えがちですが、体への影響は決して少なくありません」と、ウォン氏は言う。
過去の研究では、社会的時差ぼけによって昼間の眠気が起こり、頭の働きの低下や抑うつを増やし、仕事のパフォーマンスも低下することが報告されている。「現代人の働き方が睡眠や健康にどういった影響を及ぼすのかを、社会全体で考える必要があります」と、ウォン氏は指摘する。
週末に朝寝坊をする子供は健康が損なわれやすい

社会的時差ぼけを防ぐために生活スタイルを工夫
社会的時差ぼけを防ぐために、概日リズム(体内時計)に狂いが生じないように生活スタイルを工夫することが必要だ。
ピッツバーグ大学医学部によると、次のことを実行すると体内時計のずれを解消しやすいという――
・ 快眠はまずは規則正しい生活から
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ることが必要だ。
・ 夜遅い時間に食事しない
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。
・ 適度な運動が良い睡眠をもたらす
日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、肥満や糖尿病の予防にもつながる。
・ 入浴して深部体温を上げる
寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。
・ 光で体内時計を整える
朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。
反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。
スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので特に影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。
Weekday Sleep Changes May Raise Risk of Diabetes, Heart Disease(米国内分泌学会 2015年11月18日)反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。
スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので特に影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。
Social Jetlag, Chronotype, and Cardiometabolic Risk(Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2015年11月18日)
睡眠を中心とした生活習慣と子供の自立等との関係性に関する調査(文部科学省 2015年4月)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年07月28日
- 日本の「インターバル速歩」が世界で話題に 早歩きとゆっくり歩きを交互に メンタルヘルスも改善
- 2025年07月28日
- 肥満と糖尿病への積極的な対策を呼びかけ 中国の成人男性の半数が肥満・過体重 体重を減らしてリスク軽減
- 2025年07月28日
- 1日7000歩のウォーキングが肥満・がん・認知症・うつ病のリスクを大幅減少 完璧じゃなくて良い理由
- 2025年07月28日
- 【妊産婦を支援】妊娠時に頼れる人の数が産後うつを軽減 妊婦を支える社会環境とメンタルヘルスを調査
- 2025年07月22日
- 【大人の食育】企業や食品事業者などの取り組み事例を紹介 官民の連携・協働も必要 大人の食育プラットフォームを立ち上げ
- 2025年07月22日
- 高齢者の社会参加を促すには「得より損」 ナッジを活用し関心を2倍に引き上げ 低コストで広く展開でき効果も高い 健康長寿医療センター
- 2025年07月18日
- 日本人労働者の3人に1人が仕事に影響する健康問題を経験 腰痛やメンタルヘルスなどが要因 働きながら生産性低下を防ぐ対策が必要
- 2025年07月18日
- 「サルコペニア」のリスクは40代から上昇 4つの方法で予防・改善 筋肉の減少を簡単に知る方法も
- 2025年07月14日
- 適度なアルコール摂取は健康的? 大量飲酒の習慣は悪影響をもたらす お酒との良い関係
- 2025年07月14日
- 暑い夏の運動は涼しい夕方や夜に ウォーキングなどの運動を夜に行うと睡眠の質は低下?