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【新型コロナ】肥満やメタボが増加しがん検診の受診率も低下 「健康意識は高まった」との指摘も

 新型コロナの流行により、肥満やメタボのある人が増えたり、がん検診の受診率が低下するなど、好ましくない変化を引き起こされた一方で、喫煙率・アルコールの飲み過ぎ・運動不足が減少するなど、好ましい変化もみられることが、米国がん協会(ACS)による米国全土の調査で明らかになった。

コロナ禍によりアルコールの飲み過ぎが減るなど良い変化も

 新型コロナの流行により、肥満の人が増えたり、がん検診の受診率が低下するなど、好ましくない変化を引き起こされた一方で、喫煙率・アルコールの飲み過ぎ・運動不足が減少するなど、好ましい変化もみられることが、米国がん協会(ACS)による米国全土の調査で明らかになった。

 米国のがんによる死亡数は、2023年は60万9,820人に上ると予想されている。うち45%は、▼喫煙、▼肥満・過体重、▼アルコールの過剰な摂取、▼運動不足、▼不健康な食事スタイルなどが原因で、これらは修正が可能なものだ。

 がんの危険因子は、食事や運動などの生活スタイルを健康的に変えていくことで減らすことができ、それにより数千人ものがんの発症と死亡を防げると考えられている。

 「がんの危険因子を減らし、がん検診の受診率の向上をはかるために、努力を継続する必要があります。新型コロナの感染拡大は、がんの危険因子や予防行動、がん検診にも大きな影響をもたらしました」と、同学会のがん監視・健康エクイティ科学担当のアーメディン ジェマル氏は言う。

 「所得が低い層やマイノリティなど、社会的立場が不利な人々で、とくに深刻な影響がみられます」としている。

 「新型コロナのパンデミックにより、健康を維持するための行動変容、がん検診の受診、HPVワクチンの接種、禁煙などの重要性に対し、より強くスポットライトが当たるようになり、健康意識の高まるもみられます」と、同学会がんアクション・ネットワークのリサ ラカス氏は言う。

 「とくに禁煙はこれまで以上に重要になっています。私たちは政府に対し、がん予防のための政策を優先するよう強く求めています」としている。

新型コロナ拡大の影響は良い面と悪い面がある

 研究グループは今回、「米国国民健康面接調査(NHIS)」、「行動危険因子監視システム」、「全国予防接種調査」のデータを分析した。

 NHISは、米国国民を対象とした人口ベースの大規模な調査。全国の代表的な世帯サンプルで、対面式の調査を行っている。

 その結果、新型コロナ拡大の影響は、良い面と悪い面の両方があることが示された。研究成果は、同学会の学会誌「Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention」に発表された

 新型コロナのパンデミックが起こった2019年から2021年にかけて、▼喫煙率、▼運動不足、▼過度のアルコール摂取が減少し、▼子宮頸がん予防のためのHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種や、▼大腸がん検診のための便検査の受診率は増加していた。

 一方で、▼肥満有病率は増加し、▼子宮頸がん検診の受診率も減少した。さらに、社会経済的地位や人種による格差も拡大した。

関連情報

肥満があると新型コロナワクチンの効果が低下しやすい

 米国疾病予防管理センター(CDC)の調査でも、新型コロナのパンデミックの影響で、肥満が増えていることが示されている。米国人の肥満の有病率は2017年~2020年に42%に上昇したとしている。

 肥満は新型コロナの発症と重症化のリスクを高めることが知られている。さらに、肥満があると、新型コロナの予防ワクチンの接種を受けても、その効果が急速に低下しやすいという調査結果を英ケンブリッジ大学が発表しており、肥満の解消・改善はポストコロナの時代でもいっそう重要になっている。

 成人だけでなく、小児や若者の肥満も増えている。「子供や若者の肥満やメタボにも対策する必要があります」と、研究者は述べている。

 地域によっては、2歳から19歳の子供や若者の肥満や過体重の割合が、コロナ禍で2倍に増えているという。肥満の子供は、肥満のない子供に比べ、新型コロナによる入院のリスクが3.1倍に、重症化のリスクは1.4倍に上昇するという報告もある。

新型コロナの拡大は社会に複雑な状況をもたらした

 米国がん協会の調査では、コロナ禍の影響として、具体的には下記の結果が示された――。

  •  成人の喫煙率は2019年の14%から2021年には12%に減少した。米国で現在喫煙している成人は570万人減少した。
  •  成人の運動不足の割合は、26%から23%に減少した。運動不足の人は320万人減少した。
  •  大量飲酒をしている成人の割合は、7%から6%に減少した。大量飲酒をしている人は140万人減少した。
  •  大腸がんの在宅便検査の普及率は7%から10%に増加した。この検査の受診者は360万人増えた。
  •  米国全土の肥満の有病率は、32%から34%に増加した。成人の肥満の有病率は50州中18州で増加している。
  •  推奨される果物の摂取量は、30%から29%に減少した。推奨される果物の摂取量を達成している成人は450万人減少した。
  •  女性の子宮頸がん検診の受診率は、75%から73%に減少した。

 「がんによる負担を軽減するための闘いを続けるうえで、新型コロナな複雑な状況をもたらしていることが明らかになりました」と、がんの危険因子・スクリーニング監視の研究をしているプリティ バンディ氏は言う。

 「今後もデータを収集して、こうした対照的な変化が一時的なものであるかを確かめる必要があります」としている。

New ACS Report Finds Smoking Rates, Alcohol Use, Physical Inactivity Decreased During COVID-19; Worsening Trends in Obesity, Cervical Cancer Screening (米国がん協会 2023年5月2日)
Cancer Prevention & Early Detection Facts & Figures (米国がん協会)
Updated Review of Major Cancer Risk Factors and Screening Test Use in the United States, with a Focus on Changes During the COVID-19 Pandemic (Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 2023年5月2日)
Obesity accelerates loss of COVID-19 vaccination immunity, study finds (ケンブリッジ大学 2023年5月11日)
Accelerated waning of the humoral response to COVID-19 vaccines in obesity (Nature Medicine 2023年5月11日)
Adult Obesity Fact (米国疾病予防管理センター 2022年5月17日)
[Terahata]
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