行政事業レビュー「がん診療連携拠点病院機能強化事業等」
「がんの死亡率減少」と「仕事と治療の両立」が議論の焦点に
就労に関する相談支援件数 年間2万6千強は少ない
この公開プロセス中、外部有識者から「就労に関する相談支援が少ないのではないか」という厳しい指摘もあった。年間約100万人が新たにがんに罹患しており、そのうち就業していたのは44.2%。45万人近くの人が、がんに罹患した時点で働いていたことになる。
しかし、厚労省が提出したレビューシートではがん診療連携拠点病院において、就労に関する相談支援を実施している件数は2万6千件強に留まった。
相談件数だけで判断はできないが、がん罹患時に就労していたと考えられる約45万人という母数を考慮すると、まだまだ少ない。相談支援の認知度を高めるということも必要で、最終アウトカムの「仕事と治療の両立支援」につながるのではないかと発言があった。
「仕事と治療の両立支援」は、職域との連携は不可欠
公開プロセスでも議論の俎上にあがったが、この就労支援の場合、企業の側からの支援も重要となってくる。患者・家族が治療と仕事の両立を図る上で、多くの場合、医療と職域間の連携が必要だ。だが、実際の治療現場では、職域との連携や協議に注力できるほどの状況にはなっていないのが現実である。
職場においても医療現場との十分な連携が機能しておらず、なかなか積極的な支援がなされていないというのが実情だろう。
独立行政法人 労働者健康安全機構では、数年前から患者・家族と、医師・医療ソーシャルワーカー(MSW)などの医療側、産業医・衛生管理者・人事労務担当者などの企業側の3者間の情報共有のために「両立支援コーディネーター」を養成しようと、研修事業も始めている。
今回、行政事業レビューに「仕事と治療の両立支援」が取り上げられたように、厚労省施策のなかでも重要な位置付けを占めている。働く人の高齢化も進むなか、これらの議論を契機に企業側も仕事と治療の両立支援の整備や人材育成などに目を向けることも今後の課題となってくるだろう。
参考資料
行政事業レビュー(令和5年度)(厚生労働省)
公開プロセス(厚生労働省)
治療就労両立支援事業(独立行政法人 労働者健康安全機構)
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