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国内初の「飲酒ガイドライン(案)」をめぐって議論
厚労省「アルコール健康障害対策関係者会議」より

 アルコールによる健康障害の対策を議論する「アルコール健康障害対策関係者会議」がこのほど開催され、国内初となる「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)」が公表された。

 飲酒ガイドラインは、国のアルコール対策である「第2期アルコール健康障害対策推進基本計画」(2021~2025年度)に作成の方針が記載されており、それを受け、会議とは別に有識者らによる厚生労働省の検討会で議論してきた。

2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が成立

 お酒は私たちの生活に豊かさと潤いを与えるものである一方、過度の飲酒や不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となる。アルコール健康障害は、飲酒している本人の健康問題ばかりでなく、飲酒運転、暴力、虐待、自殺といった幅広い問題に関連している。

 世界保健機関(WHO)でも1970年代からアルコール関連問題について取り組んできており、2010年には「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が採択された。
 これを受け、日本では2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が成立し、2014年に「アルコール健康障害対策推進基本計画(第1期)」が閣議決定された。2021年3月には「第2期基本計画」(2021年度~25年度)が策定され、現在はその計画に基づいてアルコール対策が進められている。

第2期基本計画において「飲酒ガイドライン」作成が明記

 第2期基本計画では、第一にアルコール健康障害の発生予防が重点課題とされ、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及の推進を図るため、下記の通り「飲酒ガイドライン」の作成が明記された。

  • 国民のそれぞれの状況に応じた適切な飲酒量・飲酒行動の判断に資するよう、飲酒量をはじめ、飲酒形態、年齢、性別、体質等によってどのようなリスクがあるのか等、具体的で分かりやすい「飲酒ガイドライン」を作成する。また、飲酒習慣のない者に対し、飲酒を勧奨するものとならないよう留意しつつ、様々な場面での活用、周知を図る。

(「第2期アルコール健康障害対策推進基本計画」より)

 そこで厚生労働省は昨年10月、「アルコール健康障害対策関係者会議」とは別に有識者による「飲酒ガイドライン作成検討会」を設け、ガイドライン作成へ向けて検討を行ってきた。

「飲酒量と健康リスク」に関して議論が交わされる

 9月29日に開催された第29回アルコール健康障害対策関係者会議で、第2期基本計画の取り組み状況とともに国内初の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(案)」が提示された。

 同会議において提示されたガイドライン案、特に「飲酒量と健康リスク」の項をめぐり議論が交わされた。ガイドライン案では飲酒量をできる限り少なくすることを提言しているが、飲酒量の参考数値として下記のように記載されている。

飲酒量(純アルコール量)の参考となる数値としては、第2期計画や令和6年度から開始予定の健康日本21(第三次)において、「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」として、「1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上」が示されています。これよりも少ない量での飲酒を心がけることは、生活習慣病のリスクを減らすことにつながると考えられます。

 「生活習慣病のリスクを高める飲酒量」は、あくまで飲酒行動の変容を促すためのリスク指標。「そこまで飲んでいい」という"適切な飲酒量の指標"ではない。しかし受け取り方によっては、1日当たりの純アルコール摂取量としてリスク指標ぎりぎりの「男性は40gまで、女性は20gまで飲んでも大丈夫だ(適量である)」と誤解を与えてしまうのではないかという意見などもあり、適切な飲酒量の表現などをめぐって議論が交わされた。

 ちなみにお酒に含まれる純アルコール量の計算式は下記の通り。

▼「摂取量(ml)×アルコール濃度(度数/100×0.8(アルコール比重)」
 ※ 例:ビール 500ml(5%)の場合の純アルコール量 500(ml)×0.05×0.8= 20(g)

[保健指導リソースガイド編集部]
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