半数以上が「がんを抱えながら、仕事を続けることは難しい」
内閣府「がん対策に関する世論調査」より
「がん治療と仕事の両立は困難」と感じている人は半数以上
「怖い印象」が強い一方で、「がん」と診断されたら9割以上が「周囲の親しい人に話すことができる」と回答している。
しかし、「がん」の治療や検査により、仕事に影響が及ぶことになったら、半数以上が「働き続けることは難しい」と考えていると回答した。
『世論調査』で「がん患者と社会とのつながりについて」の項目が調査され始めたのは、2013年1月調査から。第2期のがん対策推進基本計画(2012年6月閣議決定)で「がん患者の就労を含めた社会的な問題」が明記されてからだ。
そのなかの一つに「がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、働き続けられる環境だと思いますか」という「がん治療と仕事の両立」についての質問がある。この結果の推移を整理すると表になる。
仕事と治療の両立に関する調査が開始された2013年と2023年を比べると、「働き続けられる環境だと思う」と回答した人の割合が26.1%から45.4%と2割近く増加しており、意識の大きな変化が窺える。
一方、「働き続けられる環境だとは思わない」と回答する人の割合は、68.9%から53.5%と低くなった。徐々にではあるが、厚生労働省や医療・両支援機関、企業などが進めてきた「がん治療と仕事の両立支援」の成果が現れてきているといえよう。
とはいえ、まだ半数以上の人が「働き続けることは難しい」と考えているのが現状のようだ。
両立が難しい要因をみてみると、体力や精神面で困難といった個人的なものが4割強を占める一方で、人手不足など会社の状況や制度に起因するものも4割近くある。今後も社会全体で両立支援の整備が必要であり、その環境をがん患者に届けることも求められるだろう。
10月には「治療と仕事の両立支援ハンドブック」も公開
治療と仕事の両立支援ハンドブック
がんにかかり治療が必要になると、以前の通りには働けなくなるケースが多い。その場合、治療に専念するか、治療しながら働くかはこれまで個人の問題として扱われてきた。
しかし、今やがんと診断される人の3人に1人は20代~60代の現役世代だ。近年はがん治療をしながら治療と仕事を両立させることが、社会的・経済的にも大きな課題となっている。
「誰一人取り残さないがん対策推進」を掲げ、「がんとの共生」でがん患者の就労支援を明記した『第4期がん対策推進基本計画』も今年3月28日に閣議決定されたばかりだ。
働く人の職場、とりわけ人事労務担当者や産業保健スタッフ、そしてともに働く上司や同僚にとっても、治療と仕事の両立支援は重要な案件だ。がん治療をしながら働きたいという思いがあり、主治医にそれが可能だと判断された人が働けるような環境の整備は、今後もますます求められる。
厚労省は、がんに限らず疾病を抱えながら仕事を続けることができるような環境を整備することを重点課題の一つとしてあげる。その支援に当たっての留意事項や準備事項、支援の進め方を示した『事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン』も作成し、今年3月には改訂版も出されている。
また、治療しながら働く人を応援するポータルサイト『治療と仕事の両立支援ナビ』も設けられている。本サイト内には、事業者・働く人・医療機関の三者へ向けて、両立支援の取り組み方法や活用できる制度、相談機関、好事例などさまざまなコンテンツが用意されている。10月には『治療と仕事の両立支援ハンドブック』も公開されたばかり。厚労省は、ぜひ治療と仕事の両立支援の活動に活用してほしいとしている。
参考資料
「がん対策に関する世論調査」(令和5年7月調査)概略版(内閣府)
治療と仕事の両立支援ナビ ポータルサイト(厚生労働省)


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