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【新型コロナ】加熱式タバコでも感染と重症化のリスクは上昇 燃焼式タバコと併用するとさらに危険
2023年02月13日
大阪公立大学は、加熱式タバコの使用と新型コロナ感染の関係に着目した、はじめての調査を実施した。
タバコを吸わない人に比べ、加熱式タバコを使用している人は感染率が1.65倍に上昇し、とくに加熱式タバコと燃焼式タバコを併用すると、感染リスクは4.66倍と大幅に上昇することを明らかにした。
新型コロナの病態悪化のリスクも、加熱式タバコを使用している人ではリスクが1.9倍に、燃焼式タバコと併用している人では4.15倍にそれぞれが上昇した。
喫煙は新型コロナの重症化のリスク因子 加熱式タバコは?
加熱式タバコは、タバコ葉を燃焼させず、加熱して発生させた蒸気を吸入するタバコ製品で、電子タバコや新型タバコとも呼ばれている。 加熱式タバコは、燃焼式タバコ(通常の紙巻きタバコ)に比べ、ニコチンやタールといった有害物質への曝露が少ないとされているが、発売後時間が経過しておらず、呼吸器系への影響や発がん性などの長期的な影響については明らかになっていない。 一方、新型コロナが世界的に大流行するなか、燃焼式タバコの使用は一般的に、人工呼吸器の使用や死亡を含む、新型コロナの重症化リスク因子と考えられている。 日本の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き」でも、喫煙が「重症化のリスク因子」の項目に記載されている。 新型コロナ流行下で、国からの呼びかけや行動制限の影響により、各国でタバコ使用行動の変化が見られているが、加熱式タバコの使用はむしろ増加しているとの報告もある。 そこで大阪公立大学の研究グループは、加熱式タバコの使用者が新型コロナに罹患した場合にどのような影響があるのかについて着目し、調査を行った。 関連情報加熱式タバコを吸っていると感染リスクが1.65倍
研究グループは、加熱式タバコを含むタバコの使用状況と、新型コロナの感染、および新型コロナ罹患時の悪化との関係について調査。 16~81歳の調査対象者3万130人のうち、24.3%が現在タバコを使用し、そのうち21.2%が加熱式タバコを単独、30.1%が燃焼式タバコとの併用で使用していた。 全参加者を解析した結果、タバコを使用していない人に比べ、加熱式タバコ使用者(燃焼式タバコとの併用者を含む)では、新型コロナの感染リスクが高いことが明らかになった。 新型コロナの感染リスクは、加熱式タバコのみ使用している人では1.65倍、燃焼式タバコと加熱式タバコを併用している人では4.66倍に上昇した。
喫煙は新型コロナの危険因子
加熱式タバコの使用によっても感染リスクは上昇
加熱式タバコの使用によっても感染リスクは上昇
出典:大阪公立大学、2023年
重症化リスクも1.9倍に 燃焼式タバコの併用では4.15倍
さらに、新型コロナ感染者で2年とも感染した20人を除く1,097人を対象とした解析では、タバコを使用していない人に比べ、過去の使用者を含むいずれのタバコ使用者では、新型コロナ罹患時に酸素投与を必要とするリスクが高いことが示された。 感染者のうち酸素投与された人は、加熱式タバコのみ使用している人では1.9倍、燃焼式タバコと加熱式タバコを併用している人では4.15倍に増えた。過去に喫煙していた人でも1.88倍に高まった。 とくに燃焼式タバコと加熱式タバコを併用していると、新型コロナの感染、新型コロナ罹患時の入院、酸素投与のいずれもリスクが大幅に上昇することが示された。
加熱式タバコにより新型コロナの重症化リスクも上昇
燃焼式タバコと加熱式タバコの併用によりリスクは4.15倍に上昇
燃焼式タバコと加熱式タバコの併用によりリスクは4.15倍に上昇
出典:大阪公立大学、2023年
加熱式タバコは若者を中心に流行 懸念も
今回の研究で、喫煙の新型コロナ悪化に対するリスクが再確認され、また、新たに加熱式タバコの使用(とくに燃焼式タバコとの併用)も、新型コロナ悪化に強く関連する可能性が示唆された。 研究は、大阪公立大学大学院医学研究科呼吸器内科学の浅井一久准教授、大阪国際がんセンターがん対策センター疫学統計部の田淵貴大部長補佐らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載された。 日本たばこ協会の2021年データによると、日本における加熱式タバコの市場占有率は3分の1と推計されている。 「加熱式タバコは、燃焼式タバコより害が少ないと言われており、見た目が洗練されているなどの理由で、若者を中心に流行していますが、その安全性はいまだ明らかになっていません」と、浅井准教授はコメントしている。 「今回、加熱式タバコの使用が新型コロナの感染および病態悪化に影響する可能性があると示されました。この報告が、コロナ禍でのタバコ使用行動を考えるきっかけとなれば幸いです」としている。タバコ使用行動を考えるきっかけのひとつに
研究グループは今回、インターネット調査会社に登録された日本の一般住民から、日本の人口分布にそってランダムに選定された参加者を対象に、2022年2月にオンラインで生活状況調査を実施(JASTIS 2022研究)。 このデータのうち、加熱式タバコを含むタバコ使用状況と、2020年・2021年の新型コロナ感染、および感染時の悪化(入院、酸素投与)の有無、さらに先行研究をふまえ、感染および悪化と関連しうる項目を抽出し、その関係性について統計解析を行った。 なお、今回の研究はあくまで一時点をみたもので、現在加熱式タバコを単独で使用している人も、過去に燃焼式タバコを使用していることがほとんどだった(今回は加熱式タバコ単独使用者の86%が該当)。 「加熱式タバコの使用が、実際にどのようなメカニズムで新型コロナの罹患・悪化に関与するのかについては、今後さらなる研究が必要ですが、本研究の結果が、新型コロナ流行下でのタバコ使用行動を考えるきっかけのひとつ、また、新型タバコの影響に関する研究の一助となると考えています」と、研究グループでは述べている。 大阪公立大学 医学研究科 呼吸器内科学Association of combustible cigarettes and heated tobacco products use with SARS-CoV-2 infection and severe COVID-19 in Japan: a JASTIS 2022 cross-sectional study (Scientific Reports 2023年2月2日)
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