【オピニオン公開中】労働者の疲労リスク管理・効果的な休み方―過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の成果と職域での取り入れ方
過労死等や過重労働による健康障害防止に関する研究を行っている過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の久保智英氏によるオピニオン「労働者の疲労リスク管理・効果的な休み方―過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の成果と職域での取り入れ方」が完結しました。
働く人々の睡眠で大切なポイントや労働者の疲労回復3原則など、忙しく生きる現役世代の疲労リスク管理や効果的な休み方をご紹介いただきました。ぜひ、ご一読ください。
本連載について
本連載では、過労死等や過重労働による健康障害防止に関する研究を行っている過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の研究活動を中心に、労働者の疲労リスク管理・効果的な休み方をご紹介いたします。
「RECORDs」では、当センターでは、労災申請時の書類を全国の労基署から収集してデータベース化する「事案研究」、そこから出てきた課題を労働現場で検証する「疫学研究」、実験室実験で検証する「実験研究」。これまでの成果を実際の業界団体等とコラボして実装する「対策実装研究」の4つの柱で研究活動を行っております。
ポータルサイト「健康な働き方に向けて」では「RECORDs」の研究成果やツール、国内外の研究等を職場の環境改善のヒントになるように分かりやすく解説しています。
No.1 過労死等防止調査研究センター(RECORDs)の紹介
RECORDs、ご存知ですか?
皆さんは過労死等防止調査研究センターをご存知でしょうか? 厚労省管轄の労働安全衛生総合研究所の中に2014年11月に設置された過労死等に関する研究を行う国内唯一の公的な研究センターです。
英語で「Research Center for Overwork-Related Disorders」なので、頭文字をとってRECORDs(レコーズ)という略称で呼ばれています。
No.2 働く人々の睡眠で大切なポイントー量・質・タイミング、そして就寝前のディタッチ
「寝る間」を惜しんではいけない
「寝る間を惜しんで働く」。
この表現は、一生懸命、頑張って働いているというポジティブな姿勢として評価されるものでした。しかし、最近の睡眠科学の発展によって睡眠の重要性が次々と明らかになっています。
それに基づいて言えることは、健康で安全に働き続けるには、寝る間を惜しんで働いてはいけないということです。
今回は働く人々の睡眠にとって大切なポイントを以下に解説していきたいと思います。
No.3 労働者の疲労回復3原則:疲れたら休む、休める、休ませる
疲労は「悪者」ではなく「味方」
読者の皆さんは、疲れたらどうしていますか? 仕事が忙しい時は、疲れていても無理して働き続けてしまうことが結構あるのではないでしょうか。実は、私もその一人です。ただし、労働者の疲労回復の一番の対策はシンプルに休むことです(病気による疲労は除きます)。サプリメントやエナジードリンクでもなく、休むことが最も効果的な疲労対策です。
ちなみに、疲れた時にコンビニなどに売っているエナジードリンクを買って飲みたくなる気持ちはよく分かりますし、たまに私もそうすることがあります。しかし、エナジードリンクは疲労に気づきにくくしているだけで、疲労回復をしている訳ではありません。
労働者の疲労は、身体から発せられている「これ以上は働かないで、休んで!!」という重要なメッセージです。それを無視して働き続けると、休んでもなかなか疲労が回復しない「過労」にシフトします。過労状態に陥れば、健康も害しますし、安全にも働けません。生活の質も低下します。人間関係も悪化することでしょう。
したがって、疲労は悪者ではなく、私たちが人生をよりよく過ごすための味方だということを、ご理解いただければ幸いです。
オピニオン執筆者ご紹介
久保 智英
労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
過労死等防止調査研究センター 上席研究員
略 歴
2003年3月 中央大学文学研究科心理学専攻にて修士(心理学)、2007年10月 名古屋市立大学医学研究科にて博士(医学)を取得。2008年4月 (独) 労働安全衛生総合研究所に任期付研究員として着任。2017年4月より上席研究員。2011年2月 フィンランド労働衛生研究所にて客員研究員。2020年4月より Journal of Occupational Health / 産業衛生学雑誌のField Editor(人間工学領域)。2022年10月から日本産業衛生学会の代議員、2024年4月からWorking Time SocietyのBoard Member(理事)。労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(2023年版)の見直し関する検討委員会に参画。
専門は産業保健心理学、睡眠衛生学、労働科学。現在は勤務間インターバル、つながらない権利、夜勤・交代勤務対策や自主対応型の疲労対策としての職場の疲労カウンセリングの研究に従事。
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