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作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質を定める告示

作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質の範囲

 今回の告示対象物質は、以下の通り示された。

 労働安全衛生規則第34条の2の7第1項第1号に規定するリスクアセスメント対象物のうち、国が行う化学物質の有害性の分類の結果、発がん性の区分が区分1に該当する物であって、2021年3月31日までの間において当該区分に該当すると分類されたもの
 ただし、以下のものおよび事業者が上記物質を臨時に取り扱う場合を除く
・エタノール
・特別管理物質

 「発がん性の区分が区分1に該当する物」とは、国によるGHS分類(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals<学品の分類および表示に関する世界調和システム>の略称で、国際的に推奨されている化学品の危険有害性の分類方法に従って実施した分類)の結果、発がん性が区分1(区分1A又は区分1Bを含む)に分類されたもの。
 区分1は、ヒトに対する発がん性が知られている、またはおそらく発がん性がある物質が分類される。

除外されるもの

 「エタノール」は、IARC(国際がん研究機関)で「アルコール飲料としてヒトに発がん性がある」としてグループ1に分類されており、これを踏まえ国によるGHS分類では発がん性区分1Aとされているが、これはアルコール飲料として経口摂取した場合の健康有害性に基づくものだ。
 業務として大量のエタノールを経口摂取することは通常想定されないこと、疫学調査の文献からは業務起因性が不明であることなどを受け、対象から除外した。

 「特別管理物質」は、特定化学物質障害予防規則第38条の3に規定する特別管理物質をいう。特別管理物質は、特化則において作業記録簿等の記録の30年間保存の義務がすでに規定されており、二重規制を避けるため対象から除外された。

 また、事業者が対象物質を臨時的に取り扱い、継続的なばく露が見込まれない場合は、ばく露量が少ないため、当該物質による発がんのリスクは極めて低いと考えられる。
 リスクが極めて低い場合でも記録すべての30年保存を義務付けることは、負担に比べ効果が少ないと考慮され「臨時に取り扱う場合」も除外された。

約120物質が今年4月1日から適用

 施行日は2023年4月1日からとなる。同日から適用される物質は約120物質。対象物質は、厚労省の告示ホームページに「対象物質の一覧」があるので確認をしてほしい。
 来年4月1日には、昨年5月の政省令改正により同日にリスクアセスメント対象物に追加される物質のうち、約80物質が適用されることになっているので留意が必要だ。

告示の概要
(画像をクリックすると、大きな画像が表示されます)

出典:労働安全衛生規則に基づき作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質を定める告示を行いました(2022.12.26)より

参考資料

労働安全衛生規則に基づき作業記録等の30年間保存が必要ながん原性物質を定める告示を行いました (厚生労働省)
職場における化学物質対策について(厚生労働省)
化学物質による健康障害防止指針(がん原性指針)について(厚生労働省)
職場における化学物質管理の大転換―「法令準拠型」から「自律管理型」へ(保健指導リソースガイド)

[保健指導リソースガイド編集部]
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