教育歴による健康格差は男女とも約1.5倍
国立がん研究センターが死因別死亡率を解析【国内初】
健康格差には社会経済的因子が関連するとの海外の報告があるが、これまで日本での研究は少なかった。だが、このほど国立がん研究センターは、国勢調査と人口動態統計のデータを突合し、学校教育を受けた期間(教育歴)ごとの死因別死亡率を推計。教育歴と健康格差について解析した研究は国内初となる。
それによると大学卒以上の者と比べ、中学卒・高校卒の者では年齢標準化死亡率が高く、国際的な指標でみた教育歴による健康格差は男女ともに約1.5倍に上ることがわかった。
国内初のデータ解析 健康格差対策への第一歩
教育歴や職業、所得など社会経済状態によって健康格差があることは、以前から欧米の疫学研究で報告され、世界的に公衆衛生上の問題となっている。「健康日本21(第二次)」でも、全体目標として健康寿命の延伸と健康格差の縮小を掲げているが、日本において健康格差に社会経済的因子が及ぼす影響は十分に検討されていなかった。
そこで国立がん研究センターでは、国勢調査と人口動態統計(死亡票)が共通してもつ情報を用いて匿名化個票データの突合(以下「データリンケージ」)し、健康格差の実態を明らかにすることを目的に調査を実施した。
調査では、2010年の国勢調査と2010年10月~2015年9月の人口動態統計を活用し、人口の9.9%に相当する約800万人の人口データと約33万人分の死亡票をもとに、教育歴と死亡記録を突合し分析した。国際的にも「教育歴(学歴)」が広く用いられ、政府統計による体系的なモニタリングや国際比較研究などが行われており、それに準じて解析が行われた。
大卒以上に比べ、高卒:男性1.16倍、女性1.23倍、中卒:男性1.36倍、女性1.46倍
解析の結果をみると、全死因の年齢標準化死亡率(ASMR)では、「大学以上卒業者」に比べて「高校卒業者」は男性で1.16倍、女性で1.23倍、「中学卒業者」は男性で1.36倍、女性で1.46倍といずれも年齢調整死亡率が高い結果だった。
また全死因のRelative Index of Inequality(RII:人口分布を考慮して、社会全体でどのくらい教育歴による死亡率格差があるかを示す指標)は、男性で1.48倍、女性で1.47 倍と、男女ともに約1.5倍の格差があることがわかった。
死因別では、女性の乳がんを除く、ほとんどの死因で教育歴が短いほど死亡率が高かった。最も死亡率の差が大きかったのは脳血管疾患。ほかにも男性は肺がんや胃がん、虚血性心疾患での死亡率差が大きく、女性では肺がんや虚血性心疾患、胃がん、肝臓がんでの死亡率の差が目立った。


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