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【新型コロナ】対応に追われる保健所職員の7割に不眠症状 相談者からぶつけられる不安や怒り 職員のメンタルヘルスケアが必要

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についての、電話相談の対応にあたっている保健所職員の、69.6%に不眠症状が、56.5%に心理的苦痛が、45.5%に心的外傷後ストレス反応がそれぞれみられることが、東北大学の調査で明らかになった。
 困難に感じていることとして、「相談者への対応の難しさ」「PCR検査の要否や紹介先の判断の難しさ」「有事対応にともなう過重な業務体制」の3点が浮かび上がった。
 「保健所職員のストレスケアの重要性とともに、広く一般の相談者が保健所職員に対するマナーを再考する必要があります」と研究者は述べている。
新型コロナの拡大で保健所職員にも過重な負担が
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下で、医療従事者がさまざまなメンタルヘルスの問題を抱えていることが知られている。とくに保健所職員には過重な負担がかかっている。

 地域保健を支える保健所職員は、地域住民や地域の医療機関からの電話相談への対応、陽性者の入院・療養の調整、陽性者の行動調査と接触者の把握、接触者の検査の調整や健康観察など、膨大かつ多様な業務を抱えている。

 そこで、東北大学災害科学国際研究所の臼倉瞳助教らの研究グループは、保健所職員・関係者に、メンタルヘルスや業務の中で困難を感じていることなどについて調査を実施した。

 研究グループは2020年9~11月に、COVID-19に関する電話相談対応を行っている、あるいは行った経験のある宮城県の9ヵ所の保健所の職員・関係者にアンケート調査を実施した。

 メンタルヘルスの問題については、抑うつ症状、不安症状、心理的苦痛、心的外傷後ストレス反応(極度のストレスを体験した後に生じる心身の不調)、不眠症状、飲酒問題を取りあげ、各評価指標に定められている基準点にもとづき、一定以上に問題を有している人(ハイリスク者)かどうかを判定した。
70%に不眠症状、57%に心理的苦痛、46%に心的外傷後ストレス反応
 その結果、対象者23人のうち、不眠症状が69.6%、心理的苦痛が56.5%、心的外傷後ストレス反応が45.5%にみられた。

 抑うつ症状は31.8%、不安症状は17.4%、飲酒問題は18.2%にみられ、ハイリスク者が多いことが明らかになった。一部は、COVID-19診療に従事する医療従事者に匹敵する割合の高さだった。

 また、電話相談対応に従事するなかで辛かった点・困難に感じた点について自由記述で尋ねたところ、苦情などの相談者への対応に苦慮していることなどが含まれる「相談者への対応の難しさ」「PCR検査の要否や紹介先の判断の難しさ」、職場の労働安全衛生やサポート体制などが含まれる「有事対応に伴う過重な業務体制」の大きく3つに分類できることが分かった。

保健所職員が電話相談対応で困難に感じた点

出典:東北大学、2021年
広く一般の相談者が保健所職員に対するマナーを再考する必要が
 「限られた地域・人数にもとづく調査結果ではありますが、今回の知見から、電話相談対応を行っている保健所職員が、医療従事者に匹敵するメンタルヘルスの問題を抱えている可能性が示される一方で、その困難の内容は、相談者からぶつけられる不安や怒りなどのネガティブな感情への対応といった、医療従事者とは異なる保健所職員特有のものであることが明らかとなりました」、研究グループは述べている。

 今回の調査が、国内の感染拡大の第2波から第3波の過渡期に行われたことをふまえると、より感染者数の多い地域や時期に調査すれば、さらにメンタルヘルスの状態は深刻であることが予想されるとしている。

 「研究結果を受けて、職員に対するストレスケアマネジメントの実施、職員の増員、電話相談対応の指針の提示・対策整備などの重要性が認識されるとともに、広く一般の人々に対して、保健所職員の抱えるストレスの大きさと保健所職員に対する相談者のマナー再考の必要性が周知されることが期待されます」と指摘している。

 研究は、東北大学災害科学国際研究所の臼倉瞳助教、國井泰人准教授、同大学院医学系研究科の富田博秋教授、小坂健教授、東北大学病院の瀬戸萌氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Asian Journal of Psychiatry」にLetters and Correspondenceとして掲載された。

東北大学災害科学国際研究所
The mental health problems of public health center staff during the COVID-19 pandemic in Japan(Asian Journal of Psychiatry 2021年7月)
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