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【新型コロナ】コロナ禍でアルコール健康障害が急増 もっとも増えたのは25歳~44歳の若年成人

 コロナ禍で、アルコールによる健康障害が、世界的に増えているという調査結果が発表された。

 アルコール健康障害による死亡リスクは、新型コロナのパンデミックにより大きく増加しており、2020年は予測より25%高く、2021年には22%高かったとしている。

 調査期間を通じて死亡率がもっとも高かったのは、高齢者のグループだったが、コロナ禍の最中にもっとも急増していたのは、25歳~44歳の若年成人のグループだった。

コロナ禍でアルコール健康障害に関連する死亡率が増加

 米国のシダーズ シナイ医療センターは、アルコール健康障害による死亡率について、予測モデリングを使用して予想した値と、実際の値とを比較した。

 その結果、新型コロナのパンデミックにより、アルコール健康障害に関連する死亡率は、すべての年齢と性別で増加していることを明らかにした。

 「アルコール健康障害が短期間で急増していることは、おそらく公衆衛生上の重大な危機といえるでしょう」と、同医療センターの総合内科医であるイェ フイ イェオ氏は言う。

 「とくに医療や保健活動の最前線に立って活動している医師や専門職、公衆衛生関連の政策を立案している人に、コロナ禍でアルコール健康障害に関連する死亡が大幅に増加していることを知ってもらいたい」としている。

死亡率がもっとも急増したのは25歳~44歳の若年成人

 研究グループはまず、新型コロナのパンデミックがはじまった最初の数ヵ月間に、米国の集中治療室と医療センターで急性アルコール中毒などの治療を受けた患者の数が増加していることに気付いた。

 そこで、米国の全死亡例の99%以上が登録されている米国疾病予防管理センター(CDC)のデータベースから、7年間(2012~2019年)の匿名化された死亡率データを取得した。

 そして、予測モデリングを使用して、2020年と2021年の予測死亡率を算出した。これは、実際に観察された死亡率を、前年の傾向と比較するもの。

 2012年~2021年に34万3,384人のアルコール使用障害(AUD)関連の死亡が確認された。これらの死亡を年齢別(25~44歳、45~64歳、65歳以上)に分類した。

 その結果、次のことが明らかになった。社会の注目を集めるような、驚くべき結果になったとしている。

  • アルコール健康障害に関連する死亡率は、2020年には予測よりも約25%高かった。
  • さらに、2021年には予測よりも約22%高かった。
  • アルコール健康障害に関連する死亡率の増加は、男女の両方にみられた。2020年には男性と女性で約25%増加したが、2021年には男性で約22%増加し、女性で約20%増加した。
  • 調査期間を通じて死亡率がもっとも高かったのは、高齢者のグループだったが、コロナ禍の最中にもっとも急増していたのは、25歳~44歳の若年成人のグループだった。

 「アルコール健康障害は、しばしば過少報告されていることも分かっています。アルコール使用に関連する実際の死亡率は、報告されているよりもさらに高い可能性もあります」と、イェオ氏は付け加えている。

アルコール使用障害の患者をフォローアップして支援すべき

日本のアルコール関連問題啓発ポスター
 米国精神医学会(APA)が策定した「精神障害診断・統計マニュアル 第5版」は、メンタルヘルスの専門家がメンタルヘルス障害を分類するためのリファレンスとして利用されている。

 同マニュアルには、アルコールの「乱用」と「依存」の2つの疾患について、「アルコール使用障害(AUD)」として統合し、具体的な基準が記されている。

 12ヵ月の期間中に、アルコールを使用したいという渇望や強い衝動など、11の基準のうち2つに該当する場合、AUDと診断される。AUDの重症度は、該当する基準の数にもとづき、軽度・中等度・重度と決定される。

 11の基準には、「飲酒(または、飲酒による体調不良)によって、家庭や家族の世話が妨げられることが頻繁にあったか? あるいは、仕事上の問題を起こしたか? または、学校で何か問題があったか?」といった項目が含まれる。

 「アルコール健康障害に関連する原因で死亡した患者さんは、社会・経済的な地位の低下など、社会的要因が健康に影響をもたらした傾向がみられます。医療機関へのアクセスが困難になり、支援を受けられなくなった可能性もあります」と、イェオ氏は言う。

 「アルコール使用障害になり、治療を求めている患者さんが、過度の飲酒による二次的な合併症を防ぐために、フォローアップして支援できるようにすることが重要です」としている。

日本でも「アルコール関連問題啓発週間」を実施

 世界保健機関(WHO)が2010年に、「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択したのを受け、日本でも2013年に「アルコール健康障害対策基本法」が制定された。

 毎年11月10日~11月16日は「アルコール関連問題啓発週間」と定められ、アルコール健康障害は、当人の健康の問題であるのみならず、その家族への深刻な影響や、重大な社会問題を生じさせるおそれがあると呼びかけられている。

 コロナ禍で、日本でもアルコール健康障害が増加しているおそれがあり、詳しい調査の実施が待たれる。

Study: Deaths from alcohol use disorder surged during pandemic (シダーズ シナイ医療センター 2022年5月16日)
Evaluation of Trends in Alcohol Use Disorder-Related Mortality in the US Before and During the COVID-19 Pandemic (JAMA Network 2022年5月4日)
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition (米国精神医学会)
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