ニュース
【新型コロナ】新型コロナは糖尿病のリスクを高める 糖尿病の症状に注意 880万人を調査
2022年04月19日

新型コロナを発症した患者は、2型糖尿病の発症リスクが高いことが、ドイツ糖尿病研究センターなどの大規模な調査で明らかになった。
研究は、ドイツ全土の1,171人の医師が参加して行われた。3万5,865人が新型コロナと診断され、解析した結果、新型コロナを発症した患者は、2型糖尿病を発症する割合が28%高いことが明らかになった。
「倦怠感、頻尿などの警告となる兆候や症状に注意することをお勧めします。喉の渇きや頻尿などの糖尿病の症状がある場合は、すぐに検査を受けるべきです」と、研究者は注意を促している。
新型コロナを発症した人は血糖値が上昇?
新型コロナを発症した人は、2型糖尿病の発症リスクが高いことが、ドイツ糖尿病研究センター(DZD)などの調査で明らかになった。研究成果は、欧州糖尿病学会(EASD)が刊行する医学誌「Diabetologia」に発表された。 研究によると、人間の膵臓も新型コロナウイルスの標的になる可能性がある。膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンであるインスリンは、糖の代謝を調節し、血糖値を一定に保つ働きをする。 β細胞内で合成されるインスリンは、分泌顆粒のなかに蓄えられる過程で、インスリンの前駆体であるプロインスリンから成熟したインスリンになる。そして血糖値の上昇に応じて、インスリン顆粒は細胞膜へ輸送され、インスリンを放出する。 研究グループによると、新型コロナに感染すると、膵臓のβ細胞のインスリン分泌顆粒の数が減少し、グルコース刺激によるインスリン分泌に障害が起こることが観察されている。 さらに、感染から回復した後にも、糖尿病にかかったことのない人が、インスリン抵抗性を発症し、血糖値が上昇することがある。インスリン抵抗性は、筋肉・脂肪細胞・肝臓などでのインスリンに対する感受性が低下し、インスリンの血糖を下げる働きが十分に発揮されない状態だ。 新型コロナの感染は、「サイトカイン」と呼ばれる、炎症を誘発するシグナル伝達物質の放出につながる可能性がある。サイトカインは、細胞から生産・分泌されるタンパク質で、体の健康維持に必要な免疫を機能させるために重要な役割を担っている。 サイトカインに放出による免疫の活性化は、新型コロナ感染後の数ヵ月間持続し、インスリンの働きが損なわれる可能性がある。 しかし現在のところ、こうした代謝の変化が一過性のものであるのか、それとも新型コロナが持続して2型糖尿病のリスクを高めるのかはよく分かっていない。新型コロナは糖尿病リスクを高めるか? 880万人を調査
そこで、ドイツ糖尿病センター(DDZ)、ドイツ糖尿病研究センター(DZD)、医療データの分析などを手がけるIQVIAは、後ろ向きコホート研究を実施した。 コホート研究は、ドイツ全土の1,171人の医師が参加して、約880万人を対象に実施された。2020年3月~2021年1月から2021年7月まで追跡された。期間中に、3万5,865人が新型コロナと診断された。 「研究の目的は、新型コロナの感染後の糖尿病の発生率を調査することでした」と、DDZ疫学研究グループのヴォルフガング ラートマン教授は言う。 研究では対照群として、ウイルス感染によって頻繁に引き起こされる急性上気道感染症(AURI)の患者が選ばれた。上気道感染には、鼻水や咽頭痛など、風邪の典型的な症状がある。 2つのグループは、性別・年齢・健康保険・新型コロナまたはAURIと診断された月・併存疾患(肥満、高血圧、高コレステロール、心臓発作、脳卒中)などについて調整したうえで比較された。なお、炎症を軽減するコルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)で療法を受けている患者は除外された。新型コロナ患者は糖尿病リスクが28%高いという結果に
その結果、新型コロナ患者は、AURI患者に比べて、2型糖尿病を発症する頻度が高いことが明らかになった。1,000人年あたりの糖尿病の発生率は、AURI患者では12.3人だったが、新型コロナ患者では15.8人であり、糖尿病の発症が1.28倍以上高いことが示された。 「私たちの分析では、新型コロナ患者は、AURI患者に比べて、2型糖尿病を発症する頻度が高いことが明らかになりました。簡単に言えば、2型糖尿病を発症する相対リスクは、新型コロナ患者の群では、AURI患者の群よりも、28%高かったことを意味します」と、ラートマン教授は説明する。 「2型糖尿病は、大多数の新型コロナ感染症の症状が軽度の人々にとっては、問題になる可能性は高くはありません。しかし、新型コロナから回復した人は、倦怠感、頻尿などの警告となる兆候や症状に注意することをお勧めします。喉の渇きや頻尿などの糖尿病の症状がある場合は、すぐに医療機関で検査を受けるべきです」としている。 COVID-19 Increases Risk Of Type 2 Diabetes (ドイツ糖尿病研究センター 2022年3月21日)Incidence of newly diagnosed diabetes after Covid-19 (Diabetologia 2022年3月16日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月05日
- 【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月30日
- 都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査