ニュース
【新型コロナ】コロナ禍で自殺者が増加 若い世代や女性で顕著 追い詰められた人に支援が届いていない可能性
2022年06月20日

新型コロナのパンデミックは、日本の自殺率に大きな影響を与え、その影響は女性と若い年齢層でもっとも顕著であることが、旭川医科大学と北海道大学の研究で明らかになった。
パンデミック期間中の自殺による過剰死亡数は、男性で1,208人、女性で1,825人と推定され、とくに女性は20代、30代、60代で過剰死亡が多くみられた。
「日本では、パンデミック発生以降、困窮した人々に対して政府などからさまざまな支援が行われました。しかし、本当に追い詰められた人々にはきちんと届いていない可能性があります」と、研究者は述べている。
コロナ禍はメンタルヘルスにも影響 女性と若い年齢層でもっとも顕著
新型コロナのパンデミックは、日本の自殺率に大きな影響を与え、その影響は女性と若い年齢層でもっとも顕著であることが、旭川医科大学と北海道大学の研究で明らかになった。 これまで、日本でのパンデミック期での自殺者の解析は、2020年のデータを用いたものに限られていたが、今回の研究では、2021年12月までのデータを用いて、自殺率の推移を調べた。 研究グループは、厚生労働省自殺対策推進室が公表している自殺統計の月別自殺者数データ(暫定値)を用いた。そして、「分割時系列解析」という解析手法で、パンデミック前(2016年1月~2020年3月)と、パンデミック発生後(2020年4月~2021年12月)での、自殺率の推移の変化を調べた。 研究では、パンデミック期間の自殺の過剰死亡の推定値を算出した。「過剰死亡」は、もしパンデミックがなければ起こらなかった可能性のある死亡者数を意味している。過剰死亡数は男性1,208人、女性で1,825人
その結果、パンデミック期間の日本人の自殺者の総数は男性2万2,304人、女性1万1,836人だったが、過剰死亡数は男性1,208人、女性で1,825人だった。 性別年齢別の分析で、とくに過剰死亡数が多かったのは、男性の20~29歳(自殺者数2,740人、過剰死亡数466人)、40~49歳(3,901人、423人)、女性の30~39歳(1,277人、421人)、60~69歳(1,538人、396人)、20~29歳(1,469人、352人)だった。 「調査の結果は、新型コロナのパンデミックは日本の自殺率に大きな影響を与え、その影響は女性と若い年齢層でもっとも顕著であることを示しています」と、研究グループでは述べている。 「新型コロナ感染症のパンデミックにより、日本を含めたほぼ世界中の人々の、日常生活や社会活動が大きく制限されました。パンデミックによる変化は、人々のメンタルヘルスに大きな影響を与えており、その結果、自殺者数が増加した可能性があります」としている。追い詰められた人に支援が届いていない可能性
研究は、旭川医科大学社会医学講座の吉岡英治准教授の研究グループが、北海道大学環境健康科学研究教育センターのシャロン ハンリー特任講師と共同で行ったもの。研究成果は、学術誌「Lancet Regional Health-Western Pacific」に掲載された。 「日本では、パンデミック発生以降、困窮した人々に対して政府などからさまざまな支援が行われました。しかし、こうした支援が本当に追い詰められた人々にはきちんと届いていない可能性があることを、この研究の結果は示しています」と、研究グループは指摘している。 「今後、コロナ禍での自殺の調査をさらに進め、適切な支援のあり方などを提言してゆきたいと考えています」としている。
2020年4月~2021年12月の自殺者数、自殺の過剰死

出典:旭川医科大学、2022年
旭川医科大学社会医学講座公衆衛生学・疫学分野北海道大学環境健康科学研究教育センター
Impact of the COVID-19 pandemic on suicide rates in Japan through December 2021: An interrupted time series analysis (Lancet Regional Health - Western Pacific 2022年7月1日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「特定保健指導」に関するニュース
- 2025年06月10日
- 【アプリ活用で運動不足を解消】1日の歩数を増やすのに効果的 大阪府健康アプリの効果を8万人超で検証
- 2025年06月09日
- 【睡眠改善の最新情報】大人も子供も睡眠不足 スマホと専用アプリで睡眠を改善 良い睡眠をとるためのポイントは?
- 2025年06月09日
- 健康状態が良好で職場で働きがいがあると仕事のパフォーマンスが向上 労働者の健康を良好に維持する取り組みが必要
- 2025年06月09日
- ヨガは肥満・メタボのある人の体重管理に役立つ ヨガは暑い夏にも涼しい部屋でできる ひざの痛みも軽減
- 2025年06月05日
- 【専門職向けアンケート】飲酒量低減・減酒に向けた酒類メーカーの取り組みについての意識調査(第2回)
- 2025年06月02日
- 【熱中症予防の最新情報】職場の熱中症対策に取り組む企業が増加 全国の熱中症搬送者数を予測するサイトを公開
- 2025年06月02日
- 【勤労者の長期病休を調査】長期病休の年齢にともなう変化は男女で異なる 産業保健では性差や年齢差を考慮した支援が必要
- 2025年06月02日
- 女性の月経不順リスクに職場の心身ストレスが影響 ストレスチェック活用により女性の健康を支援
- 2025年06月02日
- 自然とのふれあいがメンタルヘルスを改善 森が人間の健康とウェルビーイングを高める
- 2025年05月30日
- 都民の健康意識は高まるも特定健診の受診率は66% 「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査