がん治療と仕事の「両立支援」を考える~産業保健師の乳がん経験~
No.11 治療に向けての準備~サポーターを見つける~
パナソニック健康保険組合 保健師
横山 淳子
安全衛生担当者と楽しくかつら選び
体が動けばできるだけ働きたいと思っていましたので、脱毛の時期をどんなふうに過ごそうかと悩みました。バンダナや帽子を使っておしゃれにされている方もいらっしゃいましたが、自分の職場を考えるとかつらで過ごすのが自然かなと思い、かつらを購入することにしました。
病院の看護師からも「かつらは買いましたか?かつらは1つでいいからね。」と言われていたのですが、なかなか踏ん切りがつかず、いつ買いに行こうかと迷っていると安全衛生担当者のHさんが心配してくれ、かつら選びに付き合ってくれました。
お店では「治療のために購入する方もいますが、最近はおしゃれウィッグでいくつか購入する人もいますよ。」と言われ、かつらへの抵抗感が薄くなり気が楽になりました。かつらをはずす時までを想定し、いくつか選んでもらいました。
順番にかぶってはHさんが自分の上司Iさんに写真を送り、似合う、似合わないの辛口意見をもらい、厳選されたとっておきのかつらを選ぶことができました。
脱毛後、初めてかつらをかぶった時は、自分で言うのもなんですがあまりに似合いすぎて嬉しくなってしまい、職場のメンバーに思わず写真を送りました。
いざかつらをつけて出社すると「髪型変えたんですね。素敵ですね。」とすれ違う人に言われ、誰もかつらだとは気づいていないようでした。人事部長はじめ、皆さんから「その髪型似合う。かわいい。今までよりこっちの方がいい!」と大好評!
治療中と知っているメンバーは笑いをこらえ、私も「かつらなんだけどなぁ。今の方がいいのかぁ。このままではかつらがはずせなくなるなぁ。」と複雑な心境になってしまいました。自分の好みもありますが、第三者の目で見てもらう方が自然な印象のものを選べると思いました。
誰かと一緒に解決していく
一人で乗り越えようとすると悲しく重く感じることも、サポートしてくれる人がいるとこんなにも楽しくなるのだと思いました。
人それぞれ置かれた環境や考え方も違うので一概には言えませんが、一人で乗り越えなくてはと、かたくなにならず、気持ちの許せる人に相談したりサポートを受け入れることで、思ってもみなかった心地の良い環境がうまれるのではないかと思いました。
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私自身もがんの相談を受けた際には「誰か話せる人はいますか。サポートしてくれる人はいますか。」と尋ねるようにしています。最初は誰かに相談するのも敷居が高いものです。治療に向けて、一緒に気になることを書き出し、内容に応じて病院の主治医や相談窓口に相談するように勧めています。
費用に関することや生活のことなど心配なことは盛りだくさんです。頼れる人なんていないと思っていても、主治医や相談窓口で相談していくうちにサポートしてくれる人が見つかってきます。
がん発見から治療に入るまでのおおよそ2か月余りは長いようであっという間です。ある程度治療方針が決まったら、職場の上司や同僚にどのように伝えていくか、治療をどのように乗り越えていくかを考えていく必要があります。
ここでの産業看護職の役割は悩みを聞くというよりは、本人が現状を受け止め、治療や途中で起こりうる様々な課題と向き合い、自分なりの過ごし方を選択していけるように背中を押してあげることが大事なのではないかと思いました。
無理をせず、自分のペースで
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抗がん剤治療中は頭皮も敏感になり、湿疹や乾燥などで荒れたりかゆくなったりますので、帽子やかつらといった「かぶるもの」も人それぞれ合うものが違ってくるかと思います。ちなみに皮膚トラブルは主治医に相談すると軟膏やローションを処方してくれますので少し改善できるかと思います。
かつらは、病院で紹介されたり通販でも購入でき、値段もさまざまです。ただ、かつらの下にかぶる黒の綿キャップ(病院に売っています)は敏感になった頭皮には役立ちました。こちらも手製でできればよかったのですが中々うまくいきませんでしたので、買う方が良いかと思いました。
バンダナをされていた方は、大判のグレーや紺色などのペイズリーやシックな柄の薄手のものを胸くらいまで垂らしておしゃれに結んでいらっしゃいました。近所に出かけるくらいでしたら帽子に付け毛をつけるのもおしゃれで便利だと思いました。こちらも病院や通販で取り扱っていました。
抗がん剤治療を受けるオンコロジーセンターの看護師から教わったことですが、かつら着用のアドバイスとして、皮脂で襟足の部分の髪が浮いてくるとかつらかどうか分かってしまうそうで、かつらの襟足部分だけはまめに洗うようにしました。また脱毛といっても一気に全てが抜けるわけではありませんので、ある程度抜けたら夫にバリカンで刈ってもらいました。
髪の毛が抜けるとかつらがごそごそになり、かつらの調整が必要になりますが、治療中は体力もないのでお店に出かけることができませんでしたので、自分でかつらの内側を黒糸で縫って調整しましたが案外うまくいきました。自分のできる範囲で自分のペースで過ごすのが一番かと思いました。
●かつらの選び方
・かつらは一つでいい
・かつらをはずす時までを想定する
・第三者の意見を聞いて自然なものを選ぶ
●治療を乗り越えるために
・サポーターを見つける
●産業看護職の役割
・本人が治療や様々な課題と向き合い、自分なりの過ごし方を選択していけるように背中を押してあげる
●参考ポイント
・抗がん剤治療中は頭皮も敏感になる
・軟膏やローションを処方してもらう
・かぶるものも人それぞれ(帽子、バンダナ、かつらなど)
・かつらの下に着ける綿キャップ
・かつらは襟足が決め手
・髪の毛は一気に抜けるわけではない、バリカンなどで切りそろえること
・頭のサイズが変わる。かつらの調整
相談窓口
事業場向け両立支援