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【新型コロナ】「ワクチンパスポート」により接種率は大幅に上昇 ワクチン忌避者の接種率を上げる切り札に
2022年06月20日
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東京大学などは、新型コロナのワクチン接種を受けたことを証明する「ワクチンパスポート」の導入アナウンスにより、ワクチン未接種者のコロナワクチン接種が大幅に上昇することを、カナダ、フランス、イタリア、ドイツのデータから明らかにした。
日本を含む多くの先進国で、新型コロナワクチンの接種率は頭打ちになっており、ワクチン忌避者の接種率をいかに上げるかが、大きな課題となっている。
北米や欧州では相次いでワクチンパスポートを導入 日本でも検討
多くの先進国で、新型コロナワクチンの接種率は60~70%で頭打ちになっており(2021年の夏頃)、ワクチン忌避者の接種率をいかに上げるかが、政府の公衆衛生上での大きな課題となっている。 各政府はワクチン接種を完了した人に物品や金銭を提供する金銭的報酬の導入や、著名人を使ったコマーシャルなどのナッジなど、次々と政策を打ったが、目立った成果は得られていない。 そこで政府は、飲食店や映画館などの室内施設に入る際に、コロナワクチン接種を受けたこと証明する「ワクチンパスポート」を提出させることを検討した。 2021年の夏から秋にかけて、北米およびヨーロッパの政府は、相次いでワクチンパスポートの導入を宣言した。ワクチンパスポート導入の目的は2つあり、1つ目はウイルスが伝染する確率の高い室内での感染を防ぐこと、2つ目はワクチン忌避者の接種率を上げることだった。ワクチンパスポートはワクチン接種率を上げる?
研究グループは今回、「政府がワクチンパスポートの導入をアナウンス(宣言)することで、ワクチン未接種者のコロナワクチン接種率が本当に上がるか」について、カナダ、フランス、イタリア、ドイツのデータを用いて検証した。 多くの国では、ワクチンパスポート導入が国内で一斉に行われたが、カナダでは、ワクチンパスポートの導入を宣言した時期が10州でそれぞれ異なっていた。 そこで、すでに導入をアナウンスした州を実験群、まだ導入をアナウンスしていない州を比較群とする、「差分の差分法」と呼ばれる計量経済学の分析手法を用いた。 一方で、フランス、イタリア、ドイツは、国レベルでワクチンパスポートが導入されてため、「時系列分析」の手法を用いた。研究で使用したデータは、すべて政府が提供する公的データを用いた。ワクチンパスポート導入によりワクチン接種率が60%以上上昇
その結果、ワクチンパスポート導入を宣言した直後に、1回目ワクチン接種率が大幅に増加することがわかった。たとえば、カナダでは、州政府がワクチンパスポートの導入を宣言した週だけに限っても、ワクチンの新規接種者が前週に比べて60%以上も上昇した。 ワクチンパスポート導入を宣言した時点で、カナダの1回目のワクチン接種率はすでに80%に達した。 他の国は約60%前後であることから、もとからワクチンを希望していたほとんどの人はすでにワクチン接種を受けており、さらにワクチン忌避者が接種を受けたことで接種率が上昇したものと考えられる。 また、各政府はワクチンパスポートの導入を宣言してから、実際に施行するまでおおよそ3~8週ほどの猶予期間を設けており、接種率の上昇はほぼすべて「宣言した」直後に集中しており、実際に「施行した」直後に追加的に増えることはなかった。 つまり、政府が導入を宣言するだけですでに効果があらわれることを示している。ワクチンパスポート導入の効果をシミュレーション
研究グループは最後に、「反実仮想」のシミュレーションを行った。反実仮想とは、「もし~をしていたら~だったのに」という、実際には起こっていなかった場合を予想すること。 この場合は、「もしワクチンパスポートが導入されていなかったら」という反実仮想をすることで、ワクチンパスポートの導入の効果を推定した。 その結果、ワクチンパスポートが導入されなかった場合に比べ、ワクチンパスポートの導入により、2021年10月末までに、ワクチン接種率がカナダでは5パーセンテージポイント(約98万人)、フランスでは8パーセンテージポイント(約459万人)、イタリアでは12パーセンテージポイント(約648万人)、ドイツでは4.7パーセンテージポイント(約347万人)、上昇することが示された。
ワクチンパスポート導入の宣言のタイミングと1回目ワクチン接種率
ワクチンパスポートの導入がアナウンスされた直後に、ワクチン接種率が急増している
ワクチンパスポートの導入がアナウンスされた直後に、ワクチン接種率が急増している
赤の破線(縦線)は、各州及び各国におけるワクチンパスポート導入の「宣言」のタイミングを示している
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カナダ主要4州(ケベック州、ブリティッシュコロンビア州、オンタリオ州、アルバータ州)、フランス、イタリア、ドイツ、および導入しなかったスペインの4ヵ国を調査
出典:東京大学、2022年
ワクチン接種率を上げることは政府の公衆衛生上の大きな課題
日本のこれまでの予防接種政策は、麻しん、風しん、結核などの場合の「義務」接種と、季節性インフルエンザなどの場合の「勧奨」接種があるが、ワクチンパスポートの導入は、その間に位置するような政策といえる。 「今後、コロナ以外の新たな感染症が発生した際に、いかにワクチン接種率を上げるかは、政府の公衆衛生上の大きな課題です。金銭的報酬やナッジなどの他のとりうる政策と、ワクチンパスポート導入を比較するうえで、本研究の知見は、政府の重要な資料となることが期待されます」と、研究グループでは述べている。 なお、「本研究では、ワクチンパスポートの導入がなければ、ワクチンを接種していなかったはずのワクチン忌避者が受ける、心理的コストなどの倫理面は分析の対象外となっています」と付け加えている。 研究は、東京大学公共政策学連携研究部の重岡仁教授、サイモンフレーザー大学のAlexander Karaivanov教授、Dongwoo Kim教授、Shih En Lu教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学誌「Nature Human Behavior」にオンライン掲載された。 東京大学公共政策大学院COVID-19 Vaccination Mandates and Vaccine Uptake (Nature Human Behaviour 2022年6月2日)
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