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【新型コロナ】スポーツ観戦での声出し応援は感染リスクを高める? 「十分に対策していれば安全」と結論

 産業技術総合研究所などは、サッカーのJリーグなどと連携して、試合観戦時での観客の新型コロナの感染リスクとその対策効果について調べた。

 Jリーグは、声出し応援を段階的に導入している。実際のスタジアムで声出し応援をしたときの感染リスクについて、声出し応援の影響やマスクの着用率や種類、座席の間隔、観客数の制限などの対策効果を評価した。

 その結果、「50%以下の収容人員、声出し席の不織布マスク着用徹底、声出し席の市松・格子配置」という試合開催の条件であると、従来の条件である「観客が100%入っている状態で声出し応援なし」に比べて、感染リスクは46~48%に減少することが明らかになった。

 「Jリーグの声出し応援は、対策が遵守されれば、感染リスクは十分に低い。声出し応援での感染リスクを低減するために、高いマスク着用率、不織布マスクの着用の徹底が必要です」としている。

スタジアムでの声出し応援の感染リスクを調査

 新型コロナウイルス感染が続くなか、一度に多くの観客が集まるスタジアムのような大規模施設で開催されるイベントでの感染リスクは、社会的にも注目されている。

 政府はこれまでイベントでの人数を制限してきたが、2021年12月からは、声出し応援をしないと分類されるイベントでは、感染防止安全計画を策定することで、最大収容人数に対して100%の定員でのイベント開催が可能になった。

 Jリーグなどのイベントでも、原則として声出し応援は禁止されていたが、応援は、スポーツの観戦の楽しみのひとつで、高揚感や選手との一体感を得るためものだ。コロナ感染拡大前の日常を取り戻すため、声出し応援の再開が待望されており、その際の感染リスクや各種の対策を評価することは、重要となる。

 産業技術総合研究所は、これまで政府、JリーグやJFAらと連携して、スタジアムなどでの観戦での新型コロナウイルス感染予防のための調査を続けてきた。観戦時の観客のマスク着用の有無や、応援方法、スタジアム内の歓声などを評価する調査や感染リスク評価に関する研究を進めている。

 今回の研究では、実際のスタジアムで、声出し応援をしたとき感染リスクについて、これまでの原則である「100%の観客が入る状況で、かつ声出し応援なし」を実行した場合のリスクと比較した。また、マスク着用やその種類、座席間隔の確保、観客の人数制限などの対策によるリスクの低減効果を評価した。

 大声時のマスクの飛沫抑制の効果ついて、慶應義塾大学(奥田知明教授)、花王、鹿島アントラーズ・エフ・シーと共同で行った調査の成果を活用した。

条件が揃っていれば声出し応援をしても感染リスクは0.46倍に抑えられる

 その結果、Jリーグが声出し応援を段階的に導入する際の試合開催条件である「50%以下の収容人員、声出し席の不織布マスク着用、マスク着用率95%、声出し席の市松・格子配置」を実施すれば、現状認められている条件である「観客が100%入っている状態で声出し応援なし」に比べ、感染リスクは0.46倍に減少することが明らかになった。

 また、声出し応援時の感染リスクは、マスク着用率が50%に低下すると2.96倍に上昇することも分かった。感染リスクは、マスク着用率の低下や、ウレタンマスク率の増加で大きく増えるため、リスクを低減するために、▼高いマスク着用率、▼不織布マスクの着用といった基本的な対策が必要であることが示された。

 不織布マスクを適切に着用することで、大声時でも、大粒子で99%以上、3~10μmの小粒子で約95%削減できることが確認されている。

 声出し応援によるリスク増加の要因としては、大声による飛沫量の増加、および声出し頻度の増加が考えられる。一方で、声出し応援時のリスク減少要因として、声出し応援エリアでの不織布マスクの着用義務化による、飛沫の抑制効果、および声出し応援時には前を向くことによる、隣の人との会話頻度の減少があるという。

 結果として、声出し応援人数が5,000人(スタジアム収容人員の1/8)の場合で、不織布マスクの着用が適切に実施され、かつマスク着用率が95%以上であれば、声出し応援がない基本ケースに比べて、スタジアム全体の相対的な感染リスクの増加はわずかであることが分かった。

声出し応援ありのリスク評価結果
100%収容のスタジアムでの「声出し応援なし・感染対策あり」に比べ、それぞれのケースで、相対的な新規感染者数比を算出。
声出し応援人数が5,000人(収容人数の1/8)で、不織布マスクを着用してもらい、マスク着用率が95%以上であると、感染リスクはほとんど増えない。

出典:産業技術総合研究所、2022年

不織布マスクの95%着用は十分に達成可能 注意喚起も必要

 なお、昨年度実施された産総研の調査によると、Jリーグ・日本代表の試合でのマスク着用は、平均で94.3%に上るので、95%のマスク着用率は十分可能と考えられるという。

 一方、声出し応援により、不織布マスクの着用が不快になるなどの理由で、マスク着用率が低下する可能性もあることから、声出し応援を段階的に導入した試合では、マスク着用率の確認、さらに着用率が低下した際の注意喚起などの対応が必要だとしている。

 Jリーグなどのイベントでは、声出し応援は禁止されていたが、2022年6月時点で、Jリーグ公式試合での声出し応援が段階的に導入されている。コロナ前の日常を取り戻すためには、声を出す応援や各種の対策による感染リスクをどれだけ減らせるかを評価する必要がある。

 研究は、産業技術総合研究所の新型コロナウイルス感染リスク計測評価研究ラボ(ラボ長:保高徹生)が、研究チームMARCOや日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)などと連携して行ったもの。

 研究成果は、Jリーグと情報共有され、6月の公式試合での声出し応援段階的導入計画の「声出し応援に関するガイドライン」の設計に活用され、第56回NPB・Jリーグ新型コロナウイルス対策連絡会議でも報告された。

 「6月のJリーグ公式試合での声出し応援の段階的導入で、研究ラボが実施する現地調査結果などもふまえ、実際の試合での観客の行動などのパラメーターを収集し、さらに詳細な評価を進める予定です」と、研究グループでは述べている。

産業技術総合研究所 新型コロナウイルス感染リスク計測評価研究ラボ)
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