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【新型コロナ】2回のワクチン接種を終えた⼈は8割超 ワクチン忌避につながる⼼理的要因とは?

 日本では8割超が2回のワクチン接種を完了しており、ワクチン忌避は⼤幅に減少しているが、ワクチン接種⾏動には、そのときの感染の拡大や不安などの⼼理的要因が⼤きく関連していることが、筑波大学の調査で明らかになった。

 現在、3回⽬のブースター接種が進められているが、周囲の状況や人々の⼼理状態によっては、今後、ワクチン接種に対する態度が⼤きく変化する可能性もある。「ワクチンに対する正確な情報を適切な⽅法で発信し続けることが重要です」と、研究グループは述べている。

8割超がワクチン接種済み ワクチン忌避も⼤幅に減少

 新型コロナのワクチン接種については、日本で2回の接種を終えた人は8割を超え、G7諸国の中でもトップクラスとなっている。

 筑波大学は、全国の1,000人を対象としたWeb調査を⾏い、2021年4⽉(⼀般の人々にワクチン接種が広く開始された時期)と9⽉(国⺠のおよそ半数が少なくとも1回のワクチン接種を終えた時期)の2つの時点での、ワクチン接種に対する人々の態度の変化をみるとともに、これに関連する要因を明らかにした。

 調査の結果、4⽉時点では、ワクチン受容の意向のあった人は全体の40.4%、ワクチン忌避傾向の人は40.7%とほぼ伯仲していたが、9⽉時点では、すでに接種した人と受容傾向の人は合わせて85.5%、忌避傾向の人は8.9%になった。

 このように、ワクチン忌避が⼤幅に減少したことは、実際に8割を超える人が接種を終えているという現実の接種⾏動からも裏付けられる。

 また、4⽉時点ではワクチン忌避傾向にあったが、9⽉には受容傾向へと態度が変化した人について、どのような要因が関連しているのかも調べた。その結果、新型コロナに対する不安が最⼤の要因であることが分かった。

 ⼀⽅、ずっと忌避傾向を続けている人は、副反応への懸念が⼤きく、ワクチンに関する誤情報を信じていることが明らかになった。

 「このように、ワクチン接種への態度は状況要因や⼼理要因で⼤きく変化します。引き続き、ワクチンや新型コロナに対する正確な情報提供が求められます」と、研究グループでは述べている。

 研究は、筑波大学人間系の原田隆之教授らによるもの。研究成果は、「Vaccines」に掲載された。

年代別のワクチン接種に対する態度
⻘:受容、グレー:不明、⾚:忌避

2021年4⽉

2021年9⽉
出典:筑波大学、2022年

ワクチン忌避は世界保健にとって脅威に

 新型コロナ対策として世界中で行われているワクチン接種は、パンデミックを収束させるためのもっとも有効な手段であると期待されている。

 一方で、円滑なワクチン接種を妨ぐ最大の障壁として、ワクチン忌避が挙げられている。世界保健機関(WHO)は、ワクチン忌避を世界保健でのトップ10の脅威の1つとしている。

 ワクチン忌避は、知識、情報、社会的規範、感情、ヘルスリテラシー、リスク認知、信頼、過去の経験などの、複数の要因に影響される個人の複雑な行動と捉えられている。また、感染状況、経済状況、体調、気持ちや認識、周囲の行動などの時間や状況にともない変化することもよくみられる。

 そこで研究グループは、国内で一般の人々にワクチン接種が広く開始された2021年4月と、国民のおよそ半数が少なくとも1回のワクチン接種を終えた同年9月の2つの時点で、日本人のワクチン接種に対する態度を調査した。その変化と要因について、とくに心理的・行動的要因に焦点を当てて検討した。

 具体的には、全国の成人1,000人を対象に、2021年9月にウェブ調査を実施。その時点でのワクチン接種への態度を尋ねるとともに、国内で一般の人々へのワクチン接種が開始された同年4月時点でのワクチン接種への態度を回顧的に調査した。

 同時に、年齢、性別、職業、教育程度などの人口統計学的事項、日常的な健康関連行動(運動、インフルエンザワクチン接種、健康診断、喫煙)、新型コロナに関する心理(新型コロナへの不安、罹患リスク認知、政府への信頼感、ワクチン副反応への懸念、ワクチンに関する誤情報への信奉度)のほか、一般的な不安傾向、反科学的態度、疑似科学への信奉度などを調べた。

反科学的・副反応への懸念・ワクチンに対する誤解が接種忌避にかりたてる

 調査の結果、9月時点では、すでに接種した人と受容傾向の人は合わせて85.5%、忌避傾向の人は8.9%という結果になった。年代別にみると、4月時点では70代以上の人だけがワクチン忌避傾向が有意に低くなっていたが、9月時点では年代による差はなくなっていた。

 関連する要因をみると、4月にワクチン受容傾向が高かった人は、定期的なインフルエンザワクチン接種や健康診断を受けている割合が多いことが分かった。

 9月では、これらに加えて、新型コロナへの不安、一般的な不安、政府への信頼感が高い人がワクチン接種を受容し、反科学的態度、副反応への懸念、ワクチンに関する誤情報(ワクチンを接種すると不妊になる、遺伝子が組み換えられるなど)への信奉度が高い人はワクチン接種を忌避する傾向がみられた。

 ワクチン忌避の傾向にある人にその理由を複数回答で尋ねた結果、「副反応への懸念」(65.2%)、「長期的な害への懸念」(49.4%)、「新しいタイプのワクチンであることへの懸念」(24.7%)などが挙げられた。

 次に、4月にはワクチン忌避であったが9月には受容へと変わった人について調査。この態度変化に関連する要因として、学歴、定期的なインフルエンザワクチン接種や健康診断の受診、新型コロナへの不安やワクチンの副反応への懸念が小さいこと、ワクチンに関する誤情報を信じていないことが明らかになった。

 また、態度が変化した理由としては、「変異株の出現など現在の感染状況を考慮したから」(29.9%)、「周りの人々が接種していたから」(25.4%)、「早く元の生活に戻りたいから」(22.4%)などの回答があった。

ワクチン接種⾏動に影響する⼼理的要因を考慮した指導を

 「現時点では日本では多くの人が2回のワクチン接種を完了しているものの、ワクチン接種⾏動には、そのときの感染状況や不安などの⼼理的要因が⼤きく関連していることが分かりました」と、研究グループでは述べている。

 「3回⽬のブースター接種が進められていますが、周囲の状況や人々の⼼理状態によっては、今後、ワクチン接種に対する態度が⼤きく変化することも考えられることから、継続的に同様の調査を⾏うとともに、ワクチンに対する正確な情報を適切な⽅法で発信し続けることが重要です」としている。

 さらには、誤情報を信じている人々の⼼理を分析し、その影響を最⼩限にするための効果的な⽅法についても研究を続ける予定だとしている。

筑波大学人間系
Changes in vaccine hesitancy in Japan across five months during the COVID-19 pandemic and its related factors (Vaccines 2021年12⽉26⽇)

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