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【新型コロナ】オミクロン株に対してはワクチン3回目接種が必要 3回目接種後は抗体価が30倍以上に上昇

 神戸大学などは、ワクチンを2回接種した医師82人の血清を採取し、オミクロン株やデルタ株など計7種類の変異株に対する中和抗体価を測定し比較した。

 その結果、ワクチンの2回接種だけではオミクロン株に対して効果が不十分だったものの、3回目のブースター接種後は、全員(100%)がオミクロン株に対する中和抗体を獲得し、抗体価も30倍以上も上昇したことが分かった。

 また、ブースター接種は高齢者でも中和抗体価を大きく上昇させており、年齢を問わず有効であることが示された。

 オミクロン株が大流行している現在、感染拡大を抑えるために、3回目のワクチン接種による免疫のブースターが重要であること、さらにあらゆる年代の人に推奨されることが示された。

3回目のワクチン接種による免疫のブースターが必要

 新型コロナ変異株のうち、2021年11月にはじめて報告されたオミクロン株は、現在驚くべき速度で日本や世界中で拡大している。

 スパイクタンパク質は、ウイルスがヒトの細胞へ侵入するために必要とする突起状のタンパク質で、ウイルスはこれにより標的細胞に結合する。スパイクタンパク質に対する抗体は、ウイルスによる細胞侵入を阻害するものであり、mRNAワクチンはこれを体内で発現するように設計されている。

 オミクロン株はスパイクタンパク質に、30ヵ所以上とこれまでのどの変株よりも多い変異を有しており、ワクチンや抗体治療により抵抗性であることが懸念されている。

 そこで神戸大学などは、ワクチンを2回接種した医師82人の血清を採取し、オミクロン株やデルタ株など計7種類の変異株に対する中和抗体価を測定し比較した。

 その結果、ワクチン2回接種後2ヵ月の時点で全体の28%が、接種後7ヵ月の時点で6%が、オミクロン株に対する中和抗体をもっていたものの、他のどの変異株よりも低値だった。

 年齢別の比較では、若年者で抗体価が高く、高齢者で低い傾向がみられたが、オミクロン株については若年者でも低値だった。

 しかし、3回目のブースター接種後は、全員(100%)がオミクロン株に対する中和抗体を獲得しており、抗体価も30倍以上も上昇した。また、ブースター接種は高齢者でも中和抗体価を大きく上昇させており、年齢を問わず有効であることが示唆された。

 このことから、ワクチンの2回接種はオミクロン株に対して効果が不十分である一方、ブースター接種は感染を防ぐのに十分な効果があり、年齢を問わず有効であることが示された。

 「オミクロン株が大流行している現在、3回目のワクチン接種による免疫のブースターが重要であると考えられます」と、研究グループでは述べている。

オミクロン株に対する中和抗体価の推移(年齢別)
3回目のブースター接種により、オミクロン株に対する抗体価は30倍以上も上昇した

出典:神戸大学、2022年

オミクロン株の感染拡大を抑えるうえでブースター接種は重要なカギに

 研究は、兵庫県と神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス学分野の森康子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「medRxiv」にオンライン掲載された。

 研究グループは、2021年6月~2022年1月に、ファイザーの新型コロナワクチン(mRNAワクチン)を2回接種した同大学医学部附属病院の医師82人を対象に、接種後約2ヵ月と7ヵ月の時点の、血清中の新型コロナウイス(SARS-CoV-2)変異株(オミクロン株を含む)に対する中和抗体を測定した。

 さらに、3回目の接種(ブースター接種)を行った72人の血清中の中和抗体を測定し、オミクロン株やデルタ株に対する年齢ごとの抗体価の推移を解析した。

 その結果、ワクチン2回接種後2ヵ月の時点で、88~100%の接種者が従来株、アルファ株およびデルタ株などの変異株に対して中和抗体を保有していたが、オミクロン株に対する保有率はわずか28%だった。

 一方、デルタ株などでは、若年者では高齢者より有意に高い中和抗体が誘導されていたものの、やはりオミクロン株に対しては低い中和抗体価を示し、年齢差は認められなかった。

 ワクチン2回接種の約7ヵ月後では、従来株に対しては93%、デルタ株に対しては67%が中和抗体を持っていたものの、オミクロン株に対してはわずか6%しか中和抗体を保有していなかった。

(A) 各種変異株に対する中和抗体陽性率
(B) 中和抗体価の比較

各変異株に対する中和抗体陽性率(年齢別)

出典:神戸大学、2022年

 しかし、3回目のブースター接種を受けた72人の解析では、全員(100%)がオミクロン株に対する中和抗体を獲得し、さらにその抗体価は2回接種後2ヵ月および7ヵ月の時点よりはるかに高い値だった(32倍および39倍上昇)。

 また、年齢群別の比較では、59歳以上の高齢者もブースター接種で十分に中和抗体価が上昇することが示された(2回接種後7ヵ月の時点の約27倍上昇)。

(A) 2回目ワクチン接種7ヵ月後およびブースター接種後の中和抗体陽性率の推移
(B) ブースター接種後の中和抗体価の推移

3回目の接種(ブースター接種)を行った全員が、
オミクロン株を含めてすべての変異株に対して中和抗体を獲得した

出典:神戸大学、2022年

ブースター接種で副反応が増加する傾向も

 一方、ワクチン接種後に発熱、倦怠感といった副反応が出現する頻度は1~2回目接種よりもブースター接種で増加する傾向がみられたが、副反応と産生された中和抗体価との相関は認められなかった。

 ワクチン接種時の副反応は、発熱が1回目:0%、2回目:20%、3回目:33%、倦怠感が1回目:5%、2回目:17%、3回目:63%と上昇する傾向があり、接種部位の疼痛は1回目:89%、2回目:87%、3回目:90%と、変化はなかった。また、重大な副反応は認められなかった。

 これらの結果は、ワクチンの2回接種のみではオミクロン株の感染を予防するには不十分であるものの、ブースター接種により年齢によらず非常に高いレベルの中和抗体を誘導でき、オミクロン株に対しても有効であることを示している。

 「ブースター接種により、従来株とオミクロン株がもつ共通のエピトープを認識する中和抗体が強く誘導されたことが示唆されます」と、研究グループでは述べている。

 「これは、今後さらに拡大が危惧されるオミクロン株感染拡大を抑えるうえで、ブースター接種が重要なカギとなりうること、そして、副反応の懸念はあるものの、あらゆる年代の人に推奨されることを示しています」と強調している。

 一方で、「ブースター接種により獲得された中和抗体の持続については不明であり、新規の変異株が出現する可能性も懸念されます。引き続き新型コロナの終息に向けて、ワクチン接種者の中和抗体の経時的変化を評価することが必要と考えられます」としている。

神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター 臨床ウイルス学
LAcquired neutralizing breadth against SARS-CoV-2 variants including Omicron after three doses of mRNA COVID-19 vaccination and the vaccine's efficacy (medRxiv 2022年1月25日)
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