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【新型コロナ】コロナ禍で出産した女性は心理不安が増大 ストレスで緊張 地域の保健やサポートが必要

 新型コロナの流行により、出産を経験した女性の多くで、心理不安が大きく増大し、ストレスに対する過剰な防御反応が起きていたことが、済生会横浜市東部病院と東邦大学などの研究グループの調査で明らかになった。

 出産を経験する女性にとって、コロナ感染への心配や、社会的サポートの不足が、不安の要因となっている可能性がある。インターネットやICT(情報通信技術)を活用した、メンタルヘルスの地域包括ケアシステムの構築が望まれるとしている。

コロナ禍で出産を経験した女性の心理不安を調査

 済生会横浜市東部病院と東邦大学などの研究グループは、新型コロナの流行中での産後女性のメンタルヘルスの変化を明らかにしたと発表した。日本で新型コロナのパンデミックが周産期女性のメンタルヘルスに与えた影響を詳細に調査した報告はほとんどない。

 研究グループは、済生会横浜市東部病院で出産した女性を対象に、産後1ヵ月健診時の、「産後エジンバラうつ病質問票(EPDS)」と「赤ちゃんへの気持ち質問票(MIBS)」についての継続的データベースを用いて、その影響を調査した。

 EPDSは、産後女性による10項目の自己記入式質問票で、うつ病によくみられる症状を分かりやすい質問にしてある。またMIBSは、やはり10項目の分かりやすい質問で構成され、産後女性の抱えるうつや不安などのさまざまな問題を明らかにすることができる。

 対象となった産後女性は約4,000人。研究グループは、日本ではじめてコロナ感染事例が発生した2020年1月16日を境に出産時期を分けて、「新型コロナ流行前群」の2017年、2018年、2019年の3群と「新型コロナ流行中群」の計4群に分け、EPDSとMIBSの得点をこれらの4群で比較した。

コロナ禍にいる妊産婦は強い不安を抱えている

 その結果、EPDSとMIBSの全項目の平均総得点については、4群間で統計学的な有意差はみられなかった。また、EPDSとMIBSのカットオフを上回った割合(産後うつ病と、母親から子供への情緒的絆を築けないボンディング不全が示唆される割合)も、4群間で有意差はみられなかった。

 しかし、より具体的な内容を示す下位項目の平均得点を4群間で比べたところ、新型コロナ流行中群では、EPDSの不安に関連する項目得点に有意な上昇がみられた。

 一方、ポジティブ感情の低下、意欲の減退、喜びの喪失などが起こる「アンヘドニア」と、抑うつに関連する項目得点は有意に低下していた。

 これらから、コロナ禍にいる妊産婦は強い不安を抱えていることが明らかになった。抑うつとアンヘドニアの得点は低下していたものの、これは必ずしも抑うつとアンヘドニアが軽微であることを意味しているのではなく、ストレス反応にともなう「心理的過覚醒状態」を反映している可能性があるという。

 心理的過覚醒状態は、ストレスシステムが介在して起こる、潜在的な脅威に対しての防御反応だ。なんらかの原因で、ストレスが解除されたとしても、体が緊張した状態を保ち続け、不眠症やイライラ、極端な反応、警戒心が強くなるなどの症状が続くことがあり、これを過覚醒と言う。

産後女性のために地域での包括的なケアとサポートを

 妊娠中と産後は心理社会的にも大きな変化が生じる時期であることから、不安や抑うつなどがあらわれやすい。

 研究により、新型コロナのパンデミックが産後女性のメンタルヘルスに与える影響は少なくないことが明らかになった。新型コロナ流行中はそれ以前と比較して、不安がさらに増大していることが示された。

 研究グループは、「産後女性の種々の精神疾患の発症を考慮し、その予防に努めたり、発症後ではその予後を改善することなどが望まれる」としている。

 一方で、誰かに助けを求める「援助希求」が種々の要因で困難になり、それが介入の遅れにつながることも懸念される。

 不安の増大が、必ずしも精神疾患の罹患を意味するものではなく、コロナ禍に関連するさまざまな要因によるサポート不足などによって、「育児の方法が分からない」など、現実的な問題に直面したことによる可能性も考えられという。

 「これらの不安を解消するためには、医療レベルの対応だけでなく、地域での保健や福祉、行政レベルでの対応も検討していく必要があり、まさに地域包括的なケアとサポートが求められるところですが、当事者とその家族にとって、適切な相談機関をみつけることは容易ではありません」と、研究グループでは述べている。

「MEICISメンタル相談室」で地域包括ケアを促す

 研究グループは、全国4ヵ所での調査や実践活動を通じて、地域特性に対応したメンタルヘルスとそのケアシステムの在り方の検討を行う、「メイシス」(MEICIS:精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの研究)と呼ばれるプロジェクト活動を展開している。

 そのメイシスでは、地域相談機関検索サイト「MEICISメンタル相談室」を作成し、産後の女性のセルフチェックと人工知能の自動回答により、ニーズを絞り込めるシステムの開発も試みている。

 「今回の研究の結果から、コロナ禍に対応した妊産婦ケアの重要性が示され、リモート環境を考慮し、WebやICT(情報通信技術)を活用した地域包括ケアシステムの構築と普及啓発が必要と考えられます」と、研究グループでは述べている。

 今回の研究は、済生会横浜市東部病院精神科の田久保陽司医員、辻野尚久部長、相川祐里公認心理師、吹谷和代公認心理師、東邦大学医学部精神神経医学講座の根本隆洋教授、岩井桃子公認心理師、内野敬医員、同病院産婦人科の伊藤めぐむ産科部長、秋葉靖雄レディースセンター長、東京都立松沢病院の水野雅文院長らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Pregnancy and Childbirth」に掲載された。

メイシス(精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの研究)
東邦大学医学部精神神経医学講座
Psychological impacts of the COVID-19 pandemic on one-month postpartum mothers in a metropolitan area of Japan(BMC Pregnancy and Childbirth 2021年12月28日)
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[Terahata]

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