ニュース

【新型コロナ】母乳育児が大幅に減少 母乳には大切なベネフィットが 授乳中のワクチン接種は安全

 新型コロナのパンデミックにより、母乳で育てられた乳児の割合が大幅に減少したことが分かった。

 母乳育児には母親と子供の双方にとって重要なベネフィットがある。

 妊娠中の新型コロナワクチンの接種は安全であることが分かっているが、それを誤解している親は少なくないとみられている。

コロナ禍でも母乳育児は安全 誤った理解が母乳育児の妨げに

 新型コロナのパンデミックにより、産後1ヵ月・3ヵ月・6ヵ月で完全に母乳で育てられた乳児の割合が大幅に減少したことが、南カリフォルニアの「女性・乳児・子供のための特別栄養補助プログラム(WIC)」の参加者を対象とした調査で明らかになった。

 新型コロナの拡大により、WICのサービスは対面ではなくリモートで提供された。母乳育児教育は、WICプログラムの柱のひとつで、適切な授乳トレーニングを提供することを目標としている。

 「母乳育児のサポートは、WICプログラムでもっとも優先している事項です」と、カリフォルニア州立大学公衆衛生学部のマリア コレイラ氏は言う。

 「しかし、新型コロナの流行により、提供しているサービスはリモートに移行し、対応するライブサポートの減少は避けられません。このことが、2020年の母乳育児率の低下と早期離乳の増加につながった可能性があります。さらには、コロナ禍での母乳育児の安全性について、誤ったメッセージを受け取ってしまった親がいるとみられます」としている。

 母乳中に新型コロナウイルスが含まれるという報告はなく、正確なことは調査中であるものの、WHO(世界保健機関)やCDC(米国疾病予防管理センター)は、母乳をあげて良いとしている。

母乳育児には母親と子供の双方にとって重要なベネフィットが

 研究グループは、WICプログラムの参加者を対象に、新型コロナのパンデミックの前と最中で、完全母乳育児を行っている割合を比較した。ロサンゼルスの病院で、2020年3月以前に生まれた1,740人と、以後に生まれた686人を比較した。

 その結果、生後1ヵ月で41.79%から28.09%に大幅に低下したことが明らかになった。3ヵ月では28.51%から18.06%に、6ヵ月では15.66%から10.38%に低下した。

 「新型コロナのパンデミックは、乳児の健康に破壊的な悪影響をもたらしている可能性があります。健康と社会システムについて、公衆衛生で行うべき基本的なことを再確立する必要であり、そのための問題点を明らかにする必要があります」と、アルバート アインシュタイン医科大学小児科学のアーサー アイデルマン教授は言う。

 「母乳育児医学アカデミー(ABM)」は、母乳育児の促進・保護・支援を専門とする医師を中心とした世界的な組織だ。母乳育児には、母親と子供の双方にとって、栄養・生理・心理での重要なベネフィットがあることが実証されている。母乳育児が世界中で直面している課題について、20年以上にわたり、エビデンスにもとづいた解決策を提案している。

授乳中のワクチン接種は安全 安心して接種を受けて

 日本では、ファイザー製ワクチンとモデルナ製ワクチンは、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合は接種することが推奨されている。

 また、日本で承認されている新型コロナワクチンが、妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はない。

 日本産科婦人科学会は、「妊娠初期に新型コロナウイルスワクチンを接種しても、それによって流産を引き起こすことはないと考えられ、妊婦さんへの接種の安全性が確認されました。妊娠初期であっても、新型コロナウイルスワクチンを接種することで流産しやすくなることはないと考え、安心して接種を受けてください」とコメントを発表している。

 さらに、妊娠中に新型コロナに感染すると、とくに妊娠後期は、重症化しやすいとされている。感染者が多い地域の人や、感染リスクが高い医療従事者、糖尿病、高血圧など基礎疾患を合併している人とともに、接種を検討するよう呼びかけている。

 米国でも、妊娠中の新型コロナワクチンの接種は推奨されている。米国では、授乳中の女性にも、新型コロナワクチンの接種を推奨している。mRNAワクチンの成分そのものは乳腺の組織や母乳に出てこないと考えられている。

 なお、妊婦が感染する場合の8割は、夫やパートナーからの感染と報告されている。妊婦の夫やパートナーが、ワクチンを接種することは、妊婦を守ることにもつながる。

 授乳中のワクチン接種について、国立成育医療研究センターも、「実際にワクチン接種後の母乳移行について調べた研究では、母乳中にmRNAは検出されなかったと報告されています。また、授乳中の多くの赤ちゃんに問題はみられなかったとの報告もあります」と、コメントを公表している。

 「授乳中のワクチン接種は問題ないと考えられます」としている。

Impact of COVID-19 on breastfeeding (Breastfeeding Medicine 2021年12月16日)
The Impact of COVID-19 on Breastfeeding Rates in a Low-Income Population (Breastfeeding Medicine 2022年1月5日)
Breastfeeding and COVID-19 (世界保健機関 2020年6月23日)
妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について (国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
新型コロナウイルスと母乳育児について (国立成育医療研究センター 妊娠と薬情報センター)
私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか?(新型コロナワクチンQ&A(厚生労働省))
>> 新型コロナ ニュース一覧へ
[Terahata]
side_メルマガバナー

「新型コロナ」に関するニュース

2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月03日
運動とメンタルヘルスの深い関係 コロナ禍に活動的だった人はポジティブな感情を維持 運動は楽しく続けられることも大切
2025年02月03日
男性の「健康寿命」低下 新型コロナ感染症拡大が影響か
2022年の「健康寿命」公表
2025年01月27日
コロナ禍のウェルビーイング格差は所得格差に連動 コロナ禍に孤独を感じている人が増加 健康的な高齢化に関する調査
2025年01月14日
コロナ禍で低所得の高血圧患者が医療機関の受診控え とくに女性は受診を控えるリスクが3倍超に上昇
2024年12月02日
新型コロナの後遺症を6割が経験 肥満のある人や女性で高い割合 愛知県が新型コロナの後遺症の社会生活への影響を調査
2024年11月18日
インフルエンザ流行に備えて 「予防のための最善の方法はワクチン接種を受けること」と専門家は指摘
2024年11月18日
コロナ禍をきっかけに家族のつながりが深まった 家族と過ごす夕食の時間の質が向上 悪いことばかりではなかった
2024年11月18日
【新型コロナ】ワクチン接種を受けた人は罹患後症状の頻度が約半分に減少 ワクチンの効果は高い
2024年09月24日
肥満は新型コロナの感染リスクを高める 運動を続けている人の体脂肪は健康 適正体重を維持することが大切
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶