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【新型コロナ】子育て家庭へのコロナ禍の影響を調査 不安やストレスもあるが「子供との関係が深まった」との声も

 東京都市大学は、新型コロナの拡大の影響により、行動制限を強いられた期間の子育て家庭の生活実態を調査した。

 学童期の子供をもつ家庭は、緊急事態宣言時の行動制限などで不安やストレスを抱えた一方で、行動制限により子供と関わる時間が増加した家庭では、子供との関係が深まったことを好意的にとらえている保護者が多いことが浮き彫りになった。

 一方で、悪い影響としては、家事や仕事での能率や成果が低下することや、子供の「運動不足」や「ゲームやテレビ視聴が長くなること」を挙げる保護者も多かった。

環境の変化に応じた保護者への支援の必要性が浮き彫りに

 東京都市大学は、新型コロナの拡大にともない、行動制限などの対策がとられ、ストレスの高い状況にある学童期の子供をもつ家庭の生活実態調査を行い、家庭での保護者と子供の状況と課題を明らかにした。

 調査は、学童期の子供を育てる保護者319人を対象に行ったもの。緊急事態宣言などの期間の異なる3都県(岩手県105人、東京都108人、沖縄県106人)で実施した。

 新型コロナ対策の特別措置法にもとづく1回目の緊急事態宣言が発出されて以来、2022年2月時点で2年が経とうとしている。外出自粛や休校、テレワーク推奨などの急激な変化は、子育て家庭の環境にも大きな影響を及ぼしており、不安やストレスを抱える保護者は少なくない。

 調査では、新型コロナの影響により、「子供と過ごす時間が増える」といった良い影響があった一方、昼食の準備や仕事との切り替え、子供の運動不足といった悪い影響もあったことが明らかになった。また、これにより環境の変化に応じた保護者への支援の必要性も示唆された。

 具体的には、緊急事態宣言時の子供に関する心配ごとは「運動不足」が60%とトップだった。保護者のストレスとしては「子供の昼食準備」が44%ともっとも多かった。

 研究は、東京都市大学 総合研究所 子ども家庭福祉研究センター長の早坂信哉教授、園田巌准教授、横山草介准教授、亀田佐知子研究員によるもの。研究成果は、「日本健康開発雑誌」に掲載された。

保護者の68%が「子供と話す時間が増えた」、60%が「子供の運動不足が不安」

 調査は、基本データ16項目と調査内容32項目から構成された質問紙を用い、2021年1月に行われた。主な結果は以下の通り――。

子供へのコロナ禍の影響で不安に感じること

 行動制限のかかる生活のなかで、「運動不足」(59.9%)、「教育」(54.5%)、「健康」(45.5%)、「心の問題」(37.9%)の順に、学童期の子供へのネガティブな影響を不安視する家庭が多いことが明らかになった。

子供のことでの不安

出典:東京都市大学、2022年

子育て環境の変化と仕事への影響

 新型コロナの拡大の影響として、家庭生活での子供との関わりが増えたことをポジティブな影響として、家事や仕事での能率や成果の低下をネガティブな影響ととらえている保護者が多いことが示された。

 新型コロナの流行前後での子育て環境の変化と仕事の能率や成果への影響については、他地域と比べて東京都で「影響があった」と回答した保護者が多く、このうち良い影響があったと感じていた保護者は、家庭生活で「子供と話す時間が増えた」(67.5%)、「子供と一緒に遊ぶ時間が増えた」(61.3%)、「子供との距離が近づいた」(28.8%)などが理由として挙げられた。

生活や仕事へのポジティブな影響

出典:東京都市大学、2022年

 一方で悪い影響があったと感じていた保護者は、仕事で「ながら仕事になる」(39.5%)、「集中して仕事ができない」(34.2%)、「仕事と育児の切り替えがうまくできない」(34.2%)などの理由が挙げられた。

生活や仕事へのネガティブな影響

出典:東京都市大学、2022年

保護者が感じているストレスの要因は?

 外出自粛時に、保護者がストレスを感じたことについては、「子供の昼ご飯を準備すること」(43.9%)、「子供のゲームやテレビ視聴が長くなること」(42.9%)、「子供を連れて外出しづらいこと」(40.8%)、「子供に勉強を教えること」(35.1%)などが挙げられ、子供と一緒に過ごす時間が増えたことによるストレスも多いことが明らかになった。

保護者のストレス要因

出典:東京都市大学、2022年

登校できないことへの備え

 「学校に登校できない期間を想定した備えをしているか」という質問に対しては、東京都は他地域に比べて「すでに対策を考えている」と回答した保護者が多かった。

 すでに実施した具体的な対策については、「習い事」「学童保育」「保護者が学校の宿題を確認する」の3項目で、東京都の保護者が他地域よりもその有効性を高く評価する結果になった。

 「2022年2月時点でオミクロン株による第6波が収まらない状況ですが、今回の研究の成果は、以前のような緊急事態宣言や休校が増加した際に、学童期の子供を育てる家庭がどのような不安やストレスを抱え、どのような支援を必要とするのかについてのひとつの指針となります」と、研究グループでは述べている。

 「今後は、より大規模な調査の実施を通して研究の精緻化をはかるとともに、保護者の悩みに合わせた有効な支援モデルの提案をはかります」としている。

東京都市大学 総合研究所 子ども家庭福祉研究センター
新型コロナウイルス感染症拡大における学童期の子どもをもつ家庭の現状と課題 (日本健康開発雑誌 2022年2月16日)
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[Terahata]

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