【新型コロナ】ストレスに弱くなり「頑張り」がきかなくなったのもコロナの後遺症?
ホルモン分泌障害は新型コロナの後遺症のひとつ
研究は、神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門の小川渉教授、山本雅昭助教、兵庫県立加古川医療センター糖尿病・内分泌内科の飯田啓二部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Endocrine Journal」に掲載された。 新型コロナでは肺炎を中心とした呼吸器の病気が起こるが、呼吸器以外にも血管や心臓、胃腸や肝臓、神経、筋肉や骨など、さまざまな臓器に関連する症状をともなうことが報告されている。下垂体、甲状腺、膵臓、副腎、精巣といった内分泌臓器の障害にともなう、ホルモン分泌の低下も報告されている。 新型コロナからの回復後に、呼吸器症状のみならず倦怠感や微熱、身体の痛みなどさまざまな症状が長期にわたり持続する「新型コロナの後遺症」が大きな問題となっているが、原因は十分に明らかになっておらず、またどれくらいの期間続くものかも分かっていない。 副腎から分泌される副腎皮質ホルモンには、血圧・血糖上昇作用、食欲亢進作用、抗炎症作用などがあり、ストレスに打ち勝つために必要なホルモン。 この症例では、発熱や息切れが1週間ほど持続し、PCR検査を受けて新型コロナであることが判明。入院して治療を受けたが、肺炎による呼吸の障害が強くなったため、人工呼吸器が装着された。 その後、抗ウイルス薬の投与などの治療で、呼吸の障害は改善し、人工呼吸器も外すことができた。人工呼吸器を外して10日ほどたった後、突然に血圧が下がり、検査の結果、副腎皮質ホルモンの分泌が強く障害されていることが分かった。副腎皮質ホルモンを投与することで、血圧低下は劇的に改善した。 詳しくホルモンの検査を行ったところ、脳の一部である「視床下部-下垂体系」が障害されることで、副腎皮質ホルモンに加えて、成長ホルモンの分泌が低下していることが分かった。視床下部-下垂体系は、ホルモン分泌の司令塔としてさまざまな生命活動の調節に中心的な役割を果たしている。 この症例では、副腎皮質ホルモンを補充する治療を継続していたが、次第にホルモン分泌は回復し、発症から1年半後にはホルモン分泌が正常化し、ホルモン補充は不要となった。ホルモン分泌障害の回復過程を追跡
障害が軽度だと日常診療で見逃すことも

副腎皮質ホルモン分泌低下の頻度は16.2%
これまでの研究で、副腎皮質ホルモン分泌低下が新型コロナで起こる頻度は、16.2%と報告されており、今回のような例は決して稀とは言えない。「新型コロナの後遺症」の症状は、副腎皮質ホルモン分泌低下の症状と似たものも多いことをふまえると、「新型コロナの後遺症」のなかに、見逃されている軽症の副腎皮質ホルモン分泌低下が存在する可能性もあるという。 「"新型コロナの後遺症"がどれくらいの期間続くのかは不明であり、終わりの見えないなかで後遺症に苦しんでおられる方にとって、今回"後遺症"のひとつであるホルモン分泌障害の経過が報告されたことは意義深いと言えます」と、研究グループでは指摘している。 山本助教らは、今後、全国の感染症指定病院などと協力して、「後遺症」を訴える新型コロナの患者に対して、ホルモン分泌状態の調査を行う計画をたてている。 神戸大学大学院医学研究科糖尿病・内分泌内科学部門Coexistence of growth hormone, adrenocorticotropic hormone, and testosterone deficiency associated with coronavirus disease 2019: a case followed up for 15 months (Endocrine Journal 2022年7月14日)
Investigation of pituitary functions after acute coronavirus disease 2019 (Endocrine Journal 2022年1月)
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