ニュース

【新型コロナ】コロナ禍で飲酒量を増やした人が多い アルコールの飲み過ぎで74万人ががんを発症

 アルコールの飲み過ぎは、乳がん、大腸がん、肝臓がん、口腔がんなど、さまざまながんのリスクを大幅に高める。このほど、アルコールの飲み過ぎにより、2020年に世界で74万人以上が新たにがんを発症したという研究結果が発表された。
 「アルコールががんのリスクを高めるという情報を多くの人に知ってほしい。アルコールの飲み過ぎを防ぐための効果的な政策と介入も必要です」と、研究者は述べている。
アルコールとがんの関連について多くの人に知ってほしい
 アルコールの飲み過ぎにより、2020年に世界で74万人以上ががんを発症したことが、新たな研究で明らかになった。これは、世界で新たに発症したがんの4%に相当する。

 中程度の飲酒量は、純アルコールに換算して20gぐらい。これは、ビールはロング缶1本(500mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワインはグラス2杯(200mL)に相当する。この程度の中程度の飲酒であっても、毎日飲んでいるとがんのリスクを高めるという。

 研究は、世界保健機関(WHO)のがん対策組織である「国際がん研究機関(IARC)」によるもの。詳細は、医学誌「Lancet Oncology」に掲載された。

 「アルコールの飲み過ぎががんのリスクを高めるという情報は、まだ十分に広く知られていません。アルコールとがんのリスクの関連について、もっと多くの人に認識してもらうことが大切です。がんを予防するために、アルコールの飲み過ぎを防ぐための効果的な政策と介入も必要とされています」と、IARCのがん調査部のイザベル ソエルジャーマテレム氏は述べている。
少し飲み過ぎただけでがんリスクは上昇する
 「アルコールの摂取量にかかわりなく、すべての飲酒は発がんリスクと関連していることを知っておくべきです」と、調査に協力したカナダ中毒・精神衛生センター(CAMH)のメンタルヘルス政策研究所のユルゲン レーム氏は言う。

 「たとえば、ワインを1日に1杯しか飲んでいなかった女性でも、乳がんを発症するリスクは、まったく飲まない女性に比べ6%高くなることが分かりました」としている。

 カナダでは、アルコール摂取は2020年に7,000件の新たながん発症と関連していることが分かった。飲酒は、乳がんの24%、結腸がんの20%、直腸がんの15%、口腔がんと肝臓がんの13%に関連しているという。
コロナ禍で飲酒量を増やした人が多い がんの増加につながると懸念
 新型コロナのパンデミックにより、多くの人が飲酒量を増やしているという調査結果も示された。

 コロナ禍により、都市閉鎖や外出自粛、さまざまな行動制限を強いられた人が多く、心理面にも大きな影響がもたらされた。仕事や生活に不安やストレスを感じている人も多い。

 アルコールにはストレスや不安を抑えつける作用がある。アルコールには興奮を鎮める働きをになう「GABA(ギャバ)」と呼ばれる物質を活発にする効果などがある。

 ただし、強いストレスを感じているときに、アルコールで解消しようとすると逆効果になる。飲酒量が増えることは、うつ病に向かって突き進んでいるのと同じだ。

 「アルコール摂取によるがん発症リスクの上昇は、個人レベルではまだそれほど目立ったものではありませんが、社会全体でみればがん患者の増加につながるだろうと考えられます」と、CAMHの主任研究者であるレスリー バックリー氏は言う。

 研究グループは、世界のほとんどの国でのアルコール消費に関するデータを集め、がんの相対リスクを推定する調査も行っている。「アルコールの飲み過ぎは、がん、脂肪肝などの肝疾患、メンタルヘルスの不調など、長期的にさまざまな問題を引き起こす可能性があります」としている。
アルコールの飲み過ぎを防ぐ政策が必要
 アルコールががんを引き起こすメカニズムは、主にDNA修復の障害により説明できる。さらには、慢性的なアルコール摂取により、脂肪肝になり肝硬変のリスクが上昇したり、性ホルモンの調節がうまくいかなくなり、乳がんなどのリスクも高めると考えられている。

 アルコール代謝産物であるアセトアルデヒドには毒性があり、食道がんや口腔・咽頭がんのリスクを高める。さらには、大量に飲酒している人は喫煙率も高く、喫煙と飲酒が合わさるとがんのリスクは相乗的に上昇する。

 軽度から中等度の飲酒とがん発症との関連に関する研究は最近はじめられたもので、公共政策に反映されるまでにまだ時間がかかるとみられている。

 「アルコール飲料のテレビ・コマーシャルなどを制限したり、アルコール飲料にラベルを貼り、がんのリスクを含むアルコール摂取に関連する健康と安全のリスクについての情報を表示することを製造業者に求めるなど、アルコールの飲み過ぎを防ぐ政策が求められています」と、メンタルヘルス政策研究所のケビン シールド氏は述べている。

アルコール(米国糖尿病学会 2017年10月16日)
The relationship between alcohol consumption and glycemic control among patients with diabetes: the Kaiser Permanente Northern California Diabetes Registry(Journal of General Internal Medicine 2008年3月)
Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes: a systematic review and meta-analysis(Diabetes Care 2009年11月)
New study links moderate alcohol use with higher cancer risk(カナダ中毒・精神衛生センター 2021年7月14日)
Global burden of cancer in 2020 attributable to alcohol consumption: a population-based study(Lancet Oncology 2021年7月13日)
>> 新型コロナ ニュース一覧へ
[Terahata]
side_メルマガバナー

「特定保健指導」に関するニュース

2025年02月25日
【国際女性デー】女性と男性はストレスに対する反応が違う メンタルヘルス対策では性差も考慮したアプローチを
2025年02月25日
【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
2025年02月25日
ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月17日
中年期にウォーキングなどの運動を習慣にして認知症を予防 運動を50歳前にはじめると脳の健康を高められる
2025年02月17日
高齢になっても働き続けるのは心身の健康に良いと多くの人が実感 高齢者のウェルビーイングを高める施策
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」
2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶