ニュース
【新型コロナ】肥満や糖尿病の人はなぜ重症化しやすい? 感染と重症化を防ぐためにこれが必要
2021年10月19日

新型コロナに感染し発症すると、肥満や糖尿病のある人は重症化しやすく、さらには糖尿病ではない人も高血糖になることが多いことが知られている。
米国の研究で、新型コロナが血糖値を上昇させるメカニズムが分かってきた。
新型コロナウイルスは、主要な代謝シグナルを破壊し、それにより高血糖を引き起こし、多くの患者に重症化と高い死亡リスクをもたらしている可能性がある。
米国の研究で、新型コロナが血糖値を上昇させるメカニズムが分かってきた。
新型コロナウイルスは、主要な代謝シグナルを破壊し、それにより高血糖を引き起こし、多くの患者に重症化と高い死亡リスクをもたらしている可能性がある。
新型コロナが高血糖を引き起こす
糖尿病の主要な病態である高血糖は、炎症と感染症に対する免疫力の低下を促すことが知られている。新型コロナウイルス感染症の拡大がはじまった初期の段階で、感染して重症化した患者の多くで血糖値が高い状態(高血糖)がみられることが分かっていた。
さらに、糖尿病の病歴のない患者でも、新型コロナの発症により高血糖になることがあると報告されるようになった。入院した新型コロナ患者の高血糖は、より悪い予後と関連しているという。
新型コロナウイルスは、血糖値の調節を助けるホルモンである「アディポネクチン」の脂肪細胞での産生を妨害し、高血糖を誘発している可能性があることが、米国のウェイルコーネル医科大学などの研究で示された。
新型コロナウイルスは、主要な代謝シグナルを破壊し、それにより高血糖を引き起こし、多くの患者に重症化と高い死亡リスクをもたらしている可能性がある。研究の詳細は、医学誌「Cell Metabolism」に発表された。
高血糖になった新型コロナ患者は重症化しやすい
「ホルモンは内臓などから分泌されるものと考える人も多いと思いますが、脂肪細胞からも分泌されています。脂肪細胞からはホルモンだけでなく多くの生理活性のある保護タンパク質が分泌されており、なかでもアディポネクチンは注目されています」と、ウェイルコーネル医科大学の代謝内科・心臓血管研究所のジェームズ ロー氏は言う。
アディポネクチンは、脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種。糖や脂肪をエネルギーとして活用するのを促すAMPキナーゼを活性化したり、脂肪燃焼を促し、インスリン抵抗性を抑えるなどの働きがあり、食欲やエネルギー代謝の調節にも関わっていると考えられている。
アディポネクチンの減少は、2型糖尿病や肥満の悪化や動脈硬化を促し、循環器疾患の発症リスクを高めるとみられている。
研究グループは、新型コロナに感染しニューヨーク市内の病院に入院した3,854人の患者の記録を分析した。これらの患者のほぼ半数(49.7%)は、入院時に高血糖であったか、入院中に高血糖を発症したことが分かった。
高血糖になった新型コロナ患者は、より悪い転帰に強く関連していた。血糖値が正常な患者よりも高い高血糖の患者は、重度の肺機能障害(急性呼吸窮迫症候群、ARDS)を発症した割合が9倍、人工呼吸器が投入される割合が15倍それぞれ高く、死亡リスクも3倍に上昇した。
新型コロナウイルスがアディポネクチンの産生を妨害?
新型コロナ患者でアディポネクチンが減少

Cell Metab. 2021 Sep 16;S1550-4131(21)00428-9.
肥満の患者はインスリン抵抗性と脂肪細胞の機能障害がある可能性
「たとえば肥満のある患者さんは、すでにインスリン抵抗性と脂肪細胞の機能障害をある程度もっている可能性があり、脂肪細胞が感染しやすいため、新型コロナウイルスに対してより脆弱であるおそれがあります」と、ロー氏は指摘する。
新型コロナ対策として、まず勧められるのは、予防ワクチン接種を受けること、さらには屋内環境でのマスク着用や、手洗いや消毒を徹底するなど、これまで言われ続けてきた一般的な注意事項を守ることだ。
それらに加えて、ふだんから体重をコントロールして、健康的な体重を維持することが大切になる。
さらに、インスリン抵抗性の改善により血糖を下げる薬であるチアゾリジン薬には、アディポネクチンの分泌を増加させる働きもある。研究グループは、このクラスの血糖降下薬が、高血糖を含む、新型コロナの治療に役立つ可能性についても指摘している。ただし、これを臨床的に実行可能にするためには、さらなる研究が必要となる。
研究グループは、新型コロナからの回復した患者が、その後も新型コロナにより誘発された高血糖が持続し、糖尿病に進展することがあるかを調査している。
COVID-19 may trigger hyperglycemia and worsen disease by harming fat cells(ウェイルコーネル医科大学 2021年10月1日)Hyperglycemia in acute COVID-19 is characterized by insulin resistance and adipose tissue infectivity by SARS-CoV-2(Cell Metabolism 2021年9月16日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「新型コロナ」に関するニュース
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】子供の心の実態調査 食事を食べられなくなる「神経性やせ症」の子供がコロナ禍で増加
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】ファイザーのワクチンの3回目接種はオミクロン株にも効く? 抗体価は半分に減るものの2回接種より25倍に増加
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】日本人はなぜ感染・死者数が少ない? 風邪でつくられた免疫が新型コロナにも有効に働いている可能性 理研
- 2021年12月06日
- 【新型コロナ】腸内環境を健康にして感染対策 食物繊維で善玉菌をサポート 腸内菌が感染と重症化を防ぐ?
- 2021年11月30日
- 【新型コロナ】感染拡大の影響で食生活も変化 食育への関心は高いが実行がともなわない 食育を紹介したピクトグラムを作成
- 2021年11月30日
- 【新型コロナ】医療機関の受診控えにより、がん発見が大幅に減少 胃がんでは男性11.3%、女性12.5%減少 適切なタイミングの受診が重要
- 2021年11月30日
- 【新型コロナ】感染拡大で価値観を揺るがされ抑うつや不安に 感染対策に協力できているという達成感が救いに
- 2021年11月22日
- 【新型コロナ】ワクチン接種を受けたがらない人の心理的要因は? 誤った情報に振り回されている可能性が
- 2021年11月22日
- 【新型コロナ】コロナ禍で孤食が増加 孤独はさまざまな健康リスクをもたらす 高齢女性でとくに深刻
- 2021年11月16日
- 【新型コロナ】ウォーキングなどの運動でうつや不安を解消 座ったままの時間が長いとうつリスクが上昇
最新ニュース
- 2022年06月27日
- ペットは健康に有用? ペットの飼い主の95%が「ストレス解消に役立つ」 脳の健康にも良い影響
- 2022年06月27日
- 東日本大震災後の高齢者のフレイルを調査 習慣的に運動をすることが低栄養リスクを下げる
- 2022年06月27日
- 日本人高齢者の認知機能は向上している 認知機能障害が減少 国立長寿医療研究センター
- 2022年06月27日
- 片足で10秒間立てれば死亡リスクは低下 「片足立ち」は日常的で簡易なテストとして有用
- 2022年06月27日
- 【新型コロナ】学校での感染の実態を調査 中学生以下はクラス内、高校は部活での感染が多い 文科省
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ